2019年8月7日
iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第15回】iPadで国語力を
「想像」から「創造」へ!iPadを使って社会につながる国語力を
教育ICTコンサルタント 小池 幸司
「わが校でも来年度から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。導入までの残された期間で、授業での使い方を考えておくようにとのこと。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。ICTが得意でない先生が、タブレット端末を用いた新しい学びを始める際に知っておいてほしいこと、具体的な活用方法をわかりやすくお伝えしていきます。
「昭和」の国語の授業と「令和」の国語の授業
宿題を廃止にした公立中学校が話題になっています。宿題が必要か否か・・・といった議論はさておき、私は小学校の頃、「漢字の書き取り」の宿題が大嫌いでした。「漢字ドリルのP20〜P50の新出漢字を10回ずつノートに書く」という宿題を、夏休み最後の日に、腕の痛みに耐えながら泣く泣くやったことを覚えています。
たしかに書くことで覚えられるという子は少なくないでしょう。でも、別の方法で覚えた方が頭に入る子がいる可能性もゼロではありません。「10回書く」という手段ではなく「覚えてくる」ことを宿題にする。そうすれば、私も漢字嫌い(いまだに苦手意識あり)にならなかったのかなと思います。
また、パソコンが社会に普及するにしたがって、漢字は「書ける」ことよりも「読める」ことが重要視されるようになりました。文化庁からも、漢字の「とめ・はね」について、『字の細部に違いがあっても、その漢字の骨組みが同じであれば、誤っているとはみなされない』という指針が出されたのは記憶に新しいところです。
ということで、今回は「国語の授業におけるICT活用」を取り上げたいと思います。ICTとの相性は本来いいはずなのに、昔ながらの慣習が根深く変わりにくいと言われる国語。ICTをどのように活用すれば生徒主体の学びにシフトできるのかを一緒に考えていきましょう。
直感的に調べられて筆順まで学べる「常用漢字筆順辞典」
ところで、みなさんは「漢字の読み方がわからない」という時、どうしますか。目の前にパソコンがあれば、辞書ツールで調べるという人も多いでしょう。また、知っていそうな人に聞くという方もいるかもしれません。でも、子供から「この漢字なんて読むの?」と聞かれたときにはちょっと迷いませんか。すぐ答えてしまっては学びの機会を奪うことにもなりかねません。漢和辞典を出して自分で調べさせるというのも、正直ちょっと手間ではありますよね。
そんなときに使ってみてほしいのが「常用漢字筆順辞典」というiPadアプリ。いわゆる辞書アプリの1つなのですが、このアプリを使えば手書きで書いた漢字を検索することができます。読み方を知りたいときに、部首や画数から探すといった手間がなく、直感的に漢字を調べられるおすすめのアプリです。
手書きで検索(簡単検索)すると、音読み・訓読みに加えてその漢字の筆順ガイドが表示されます。赤い部分をなぞっていくことで、筆順を確認・練習できるわけです。さらに「詳細」をタップすると、部首や習得学年、その漢字を使った単語例なども表示されます。
また、「確認」モードに切り替えれば、クイズ形式で筆順練習をすることも可能です。グレーの状態で漢字が表示されますので、正しい筆順でなぞっていきます。正しければマル、まちがっていればバツが表示されるだけのシンプルなものですが、これが意外にハマります。ランダムに出題される「シャッフル」機能もあるので、授業中にプロジェクターに投影してみんなで挑戦するなんて使い方もいいですね。
子供たちを筆者に!物語は「読む」ものではなく「書く」もの
続いては、「作文」「物語づくり」について考えてみましょう。私が小学校の頃に受けた作文の授業といえば、「日記」「読書感想文」あたりが真っ先に頭に浮かびます。正直言って、どちらも好きではありませんでしたが・・・。大人になっていまでも、子供の夏休みの宿題に「読書感想文」が出ると、「なんでこんな難しい課題を小学生の出すのだろう」と不思議に思ったりします。
そんな私ですが、「自分で好きな物語を作る」という国語の授業は、楽しい思い出として記憶しています。たしか、RPG小説のようなものを書いたのですが、どんなストーリー展開にしようか、どんなラストにしようか、ワクワクしながら原稿用紙のマスを埋めていったことを覚えています。同じ作文という課題でも、そこに「創造性」という要素を入れることで、子供たちのやる気に火をつけられるのではないでしょうか。
そこで、おすすめしたいのがiPadを使った「絵本づくり」です。使用するのは「ピッケのつくるえほん for iPad」というアプリ。あらかじめ、子供たちが好きそうなキャラクターや背景・イラストがたくさん用意されているので、見ているだけで物語を作ってみたい気分になります。
・ピッケのつくるえほん for iPad:App Store
制作した絵本には、アフレコで音声を入れて動画として保存することも可能です。また、展開図を書き出す機能もあるので、印刷して製本すれば、簡単にポケットサイズのオリジナル絵本が作れてしまいます。
物語を「読む」だけでなく「作る」という経験。書き手の視点を知ることは、読解力を身につけることにもつながるのではないでしょうか。
【本日のワーク】「Keynote」で手書きアニメーション教材をつくろう!
今回のワークでは、国語の教材づくりに挑戦してみたいと思います。使うアプリはApple純正のプレゼンアプリ「Keynote」。
あまり知られていないのですが、「Keynote」は教材づくりにもってこいのアプリなのです。しかも、待ち望んでいた「縦書き」にもようやく対応。
ついに、国語の授業でも「Keynote」が使えるようになりました。
まずは「+」ボタンをタップしてスライドを新規作成します。「標準(4:3)」「ワイド(16:9)」を選んで、好みのスライドテーマを選択すると表紙スライドが表示されます。左下にある[+]をタップするとスライドを追加できるので、テキストボックス入りのスライドを追加してみましょう。
縦書き表示をするためには、文字を入力した後でテキストボックスをタップします。吹き出しメニューが表示されますので「縦書きテキストをオン」を選択してください。右上にある装飾アイコン(ペンキの刷毛のようなアイコン)をタップすると、文字のサイズやフォントの種類、配置などを変更することができます。
ひと通りいじって基本操作がわかったら、いよいよ教材づくりです。今回は「手書きアニメーション」に挑戦してみましょう。装飾アイコンの隣にある「+」をタップして「描画」を選びます。すると画面の下にペンや消しゴムなどのツールが表示されますので、ペンで好きな文字を書いてみましょう。
文字が書けたら、右上の「完了」をタップして描画モードを終了。文字をタップして、吹き出しメニューから「アニメーション」を選択します。続いて「ビルドインを追加」→「線描画」を選びましょう。すると線描画アニメーションのプレビューが再生されます。手書きで書いた順番通りにそのまま再生されるわけです。
この線描画アニメーションは、Mac版の「Keynote」にもないiPadならではの機能です。右上の「…」をタップして「書き出し」→「ムービー」を選ぶと、動画ファイルとして保存することもできます。もっと細かい文字や絵を描きたければApple Pencilがおすすめです。工夫しだいでさまざまな活用ができるそうですね。ぜひ国語以外の教材にも「Keynote」の手書きアニメーションを取り入れてみてください。
ICTを活用してイマジネーションを育む国語の授業へ
「スタンプ」でコミュニケーションをとり、「動画」でさまざまな情報が得られる時代。子供たちが文章を読む機会はますます減ってきています。一方で社会に出れば、これまで以上に文章を読み取る力(=読解力)が求められます。いまの子供たちには、文字情報を映像へと変換するための力(=想像力)が必要ではないでしょうか。そのためのツールとしてiPadは大きな武器になるはずです。すべての学びの土台となる国語だからこそ、いまの時代にあった力を身につけられる授業づくりをしていきたいですね。
【筆者プロフィール】
小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)
2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。NPO法人 iTeachers Academy 事務局長。
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