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2025年12月2日

現役教員が個人開発したGIGA端末で使える無料の計算ドリル『ますとれ』って何?

【寄稿】
著者:軽井沢風越学園 算数・数学科スタッフ 佐々木陽平

はじめまして。軽井沢風越学園で算数・数学科スタッフをしております佐々木陽平と申します。GIGAスクール構想により、全国の小中学校に1人1台の学習者用端末(以下、GIGA端末)が配備されてから数年が経ちました。先生方は、この新しい「文房具」をどう活用すべきか、日々試行錯誤されていることと思います。

しかし、多くの先生方は「算数・数学でこのGIGA端末をどのように用いていいかわからない」という現実に直面しているのではないでしょうか。私自身も、算数・数学においてどのようにGIGA端末を利用したらよいか悩みながら模索しておりました。

GIGA端末時代に「計算ドリル」が抱える課題

そこで今回着目したのが計算練習です。計算は、言うまでもなく算数・数学の「土台」の一つです。この土台が不安定なままでは、学習指導要領で目指されている「数学的に考える」ことにリソースを割くことができません。計算練習は「数学的に考える」ために必要ですが、そこまで手間暇をかけたくないというのが正直なところです。日々の計算練習には3つの壁がありました。

1.「学び直し」の壁:計算は「積み重ねの技能」です。中学校の授業でつまずく原因が、小学校で定着したい九九の計算や分数や小数の数量感覚にあることは珍しくありません。しかし、子どもが自分の状況に応じて「学年をまたいで」シームレスに学び直す機会を確保するのは手間もかかり、困難です。

2.「教員の負担」の壁: 紙のドリルを印刷し、配布し、回収し、そして何十人分も採点する。この作業は、先生方の時間を圧迫する大きな負担です。

3.「GIGA端末の手軽さ」の壁: インストールが必要なアプリは、端末の管理上すぐに使えません。ログイン(ID/パスワード)が必要なサービスは、授業の冒頭5分で手軽に使うにはハードルが高すぎます。

これらの課題を解決できるアプリを「自分でつくってみよう」と、個人開発を始めることにしました。そうして生まれたのが、無料のWeb計算ドリル『ますとれ』です。

『ますとれ』の主な特徴


『ますとれ』は、GIGA端末(ChromebookやiPad)のブラウザですぐに使えるWebアプリです。開発にあたり、現場の先生方や子どもたちが必要とする、以下の4つの特徴にこだわりました。

1. 【GIGA端末に最適】(インストール・ログイン一切不要)
管理者の許可や、子どものID/パスワード管理は一切必要ありません。 先生はURLを児童に共有するだけ(例:Google ClassroomにURLを貼るだけ)で、すぐに計算トレーニングを開始できます。

2. 【教員の負担をゼロに】(自動採点)
すべての問題は自動で採点されます。先生が丸付けをする必要は一切なく、子どもたちも即座にフィードバックを得られます。教員の採点業務をなくし、その時間を見取りや声かけに使えるようにします。

3. 【小1から中3までの「学び直し」に最適】
このアプリの最大の強みは学び直しのためにつくられているところです。 小学校1年生の「5といくつ」から、九九、あまりのあるわり算、分数・小数、そして中学校3年生の平方根まで、計算の主要単元を幅広くカバーしています。


学年に関係なく「自分は九九がニガテだから、九九の内容に戻ろう」といった、シームレスな学び直しが可能です。

4. 【苦手な問題の反復練習に対応】(ニガテアタック機能)
ただ問題を出すだけではありません。 間違えた問題や時間がかかりすぎた問題だけを自動で収集し、それだけを練習する「ニガテアタック」機能を搭載しています。子ども一人ひとりが、自分専用の「ニガテ問題」を効率的に復習できるため、一人ひとりの学びをサポートしやすくします。

GIGA端末での具体的な活用シーン

『ますとれ』は、GIGA端末さえあれば、特別な準備なしに多様なシーンで活用できます。

1. 授業冒頭のウォームアップや朝学習として
Google Classroomやロイロノートなどで『ますとれ』のURLを共有し、「今日の5分間は『わり算九九』に挑戦しよう」や「まずは最初からやって、自分のニガテなところを見つけよう」などと指示します。自動採点なので、教員は丸付けに追われることなく、見取りや声かけに集中できます。

2. 家庭学習の習慣化として
紙のドリルを宿題にするのは、採点・返却の手間が大変です。「ますとれ」なら、家庭の端末(スマホやタブレット)でも利用できるため、「1日1回、10問アタック」を宿題にすることも容易です。記録が残るので、それを見させてもらえば子どもの状況もわかります。

AIとのバイブコーディングによる個人開発

私はプロのエンジニアではありません。現場の算数・数学教員です。 では、どうやってこれだけの機能を持つアプリを個人で開発できたのか。

それは、生成AIと対話しながら開発する「バイブコーディング(Vibe Coding)」という手法を用いたからです。

「こういう機能が欲しい」「ここの目標タイムは流石に難しい」といった現場の具体的な課題をAIに相談し、コードを修正し、テストする。このサイクルを繰り返すことで、現場のニーズに合わせた高速な開発・改善を続けています。

おかげさまで、特別な広告を出していないにも関わらず、平日のアクティブユーザーが150名を超える日も出てきており、確かな手応えを感じております。

おわりに

『ますとれ』は、生成AIという新しい技術を使い、現役の教員が「現場の本当に欲しいもの」を形にした無料のツールです。

計算練習は、それ自体が目的ではありません。 基本的な計算を自動化・効率化することで、子どもたちがより多くの時間を、「数学的に考える」ために使えるようになること。 それが、開発者としての私の最大のねがいです。そのために必要な学び直しをすべての子どもたちができることを願っています。

GIGA端末で使える無料の計算ドリルとして、ぜひ一度『ますとれ』を試していただけると幸いです。

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『ますとれ』

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