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2013年7月31日

ネットトラブルから子どもたちを守ろう/さいたま市

さいたま市は2001年浦和市、大宮市などが合併して出来た人口125万人の大都市。市ではこれまで、LANの整備や電子黒板の設置、指導者用デジタル教科書やコンピューターの導入を進めるなど、ICT教育の普及に努めてきた。しかし、文科省が提唱する1人1台タブレットやそれを使ったICT活用授業の実現にはまだ時間がかかりそうなのが現実である。

一方、携帯電話やインターネットの普及に伴い、子どもたちのICT利用は日常的で身近なものになっている。そのためネットトラブルの加害者や被害者になる社会問題も発生している。さいたま市では、子どもたちや保護者に携帯電話やインターネットの危険性を知らせ、正しい知識を身に付けてもらおうと、携帯電話事業者などの協力を得て、「携帯・インターネット安全教室」を市内のすべての小中学校などで毎年開催している。

さいたま市教育委員会・学校教育部・教育研究所の清水英生指導主事に、安全教室開催のねらいやICT教育の今後などについて話を聞いた。

【子どもたちをネットの危険から守りたい】

さいたま市の主催で「携帯・インターネット安全教室」を始めたのは2010年度。

市内の子どもたちは、全国平均(中3・61.5%)に比べ、携帯電話の所有率が高く(同70.5%)、携帯電話が原因でトラブルも起こっているという。

もともと、安全教室は各学校が独自で行っていたが、市内全校で取り組む必要があると、市の教育委員会が担当することになった。実施にあたっては、携帯電話の危険性について、十分な知識を持ち、最新情報にも詳しいプロの事業者に協力を求めることにした。子どもたちだけでなく、教職員や保護者にも携帯電話・インターネットの危険な部分を知ってもらい、子どもたちを危険から守ろうというのがこの取り組みのねらいだ。

現在、携帯電話事業者など4社の協力を得て、小中学校と特別支援学校の全162校で毎年1回ずつ開催している。昨年度からは全中学校を対象に、埼玉県警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課とも連携を始めたという。

さいたま市教育委員会 清水英生指導主事

「インターネットの『利便性』『危険性』『回避方法』を話していただくようお願いしていますが、あとは各社にお任せしています。事業者ごとにカラーは違いますが、プロの専門家として、さまざまなネットトラブルの実態とその回避方法を紹介し、児童生徒が携帯電話等を適切に利用できるよう、助言していただいています」(清水指導主事談)。

【インターネットの5つの危険性とその対策】

保護者も参加した慈恩寺中学校での安全教室

7月10日、市立慈恩寺中学校で開催された安全教室には、生徒と保護者約350人が参加。フィルタリング会社のデジタルアーツ社が講師となり、「スマートフォンの危険と利用する上でのルール」について話をし、参加者たちは熱心に耳を傾けていた。参加した3年生の男子生徒は「携帯電話の怖さを改めて知った。使い方を間違えると危険なものになるので、気を付けようと思った」と感想を話した。

当日のデジタルアーツ社の講演によると、最近の代表的なインターネットの危険性は5つあるという。

■「ネットいじめ」
■「高額請求」
■「個人情報流出」
■「SNS・出会い系による被害」
■「使い過ぎによる被害」

「ネットいじめ」は、携帯電話やパソコンからウェブサイトの掲示板などに個人を誹謗・中傷する書き込みをしたり、嫌がらせのメールを送りつけたりする、インターネット上で行われるいじめのこと。ネット上の掲示版(学校裏サイト)に、女子中学生の誹謗中傷が多数書き込まれ、それを見た被害生徒が不登校を訴えた事例。学校関係者が掲示板の管理人に削除依頼し、学校でも悪口の書き込みをしないように指導したという。

「高額請求」は、男児がアニメのサイトを閲覧していたところ、間違ったボタンを押しアダルトサイトに登録され、高額の料金を請求するメッセージがきた事例。保護者が業者に解除を申し出たが契約が成立しているので料金を支払うように求められたという。また、子どもが無料ゲームの中にある(有料の)アイテム購入ボタンを押してしまい、保護者のもとに高額請求が届くなど 。有害サイトをブロックするフィルタリングを利用したり、アイテムを購入する場合は、必ず保護者の許可を得るというルールを作っておくことが大切だという。

「個人情報流出」は、TwitterなどのSNSでの悪口など、不用意な書き込みをした結果、

証拠画像を保存され、SNSのプロフィールなどから個人情報を調べられてしまうなど。SNSに個人情報や写真をむやみやたらに投稿してはいけない。

デジタルアーツ社員が講師

「SNS・出会い系による被害」は、インターネットやID交換用などのアプリを通じ、知らない人と実際に会った結果、身体的・金銭的な被害にあう事例。インターネットやアプリ上で知り合った人と直接会わないことが一番の対策だ。

「使い過ぎによる被害」は、「LINE」や「カカオトーク」などメッセンジャーアプリの使い過ぎで生活リズムを崩してしまうことだ。使う時間帯や内容、料金について、保護者と確認してルールを作ることが重要だという。

【家庭と学校の連携が大切】

さいたま市の「携帯・インターネット安全教室」では、保護者の参加も求めているが、

今後の取り組みについて清水指導主事は、家庭と学校の連携が大切だと語る。

「家庭と学校が連携して、子どもたちの使い方を見守っていくことが大切です。子どもたちは好奇心が強いので、大人が知らないうちに危険なことに及ぶ可能性も。だから、インターネットの危険性について、子ども、教師、保護者のみんなに知ってもらい、子どもを危険から守ってほしい」。

【教員のICT活用指導力の向上に注力】

さいたま市の今後のICT利活用について清水指導主事は、「1人1台のタブレットを市で導入するにはまだハードルが高いですが、子どもたちの協働学習にICTをうまく活用していくことがこれから求められると思います。ICTを活用することで隣の学校と交流できたり、たくさんの子どもたちが協力して学習できる、そのためのツールとしてICTは効果的ではないかと考えます」と必要性を認識。

その上で「先生によってICT活用指導力に差があるので、さいたま市では、ICT指導者養成講座を開催したり、小学校に月に2回ICT支援員を派遣して先生のサポートを行っています。まずは先生自身の授業力が一番大事ですが、よりよい授業を作ってもらうために、先生のICT活用指導力の向上を図っていきます」と、今後の展望を語った。

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携帯やインターネットなどICT使用を避けて通れない現在、子どもたちには、それらの安全な利用法を身に付けることが求められている。その中で、さいたま市の全校への安全教室開催は有効な取り組みの一つといえる。また、ICT環境が整いつつある学校現場では、ICTの活用による効果的な授業づくりが一層望まれることになるだろう 。

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