1. トップ
  2. ズームイン
  3. 次期学習指導要領改訂に向けて考える “主体的な学び”と“先生の役割”とは/COMPASS「キュビナ」セミナー

2026年4月7日

次期学習指導要領改訂に向けて考える “主体的な学び”と“先生の役割”とは/COMPASS「キュビナ」セミナー

【PR】
1月17日にCOMPASSが主催したオンラインイベント「一歩先の“主体的な学び”」において、「次期学習指導要領改訂に向けて考える “主体的な学び”と“先生の役割”とは」と題したパネルディスカッションが開催された。その様子をダイジェストでレポートする。

登壇者は、横浜創英中学校・高等学校の山本崇雄副校長と、オルタナティブスクールHILLOCK初等中等部創設・運営者の蓑手章吾氏、モデレーターは、COMPASS未来教育室の板橋和政氏が務めた。

登壇ゲストによる主体的な学びの実践共有

本パネルディスカッションの目的は、イベント全体のテーマである「主体的な学び」について、現在議論が進められている「次期学習指導要領改訂」の論点もふまえながら、参加者とともに考えを深めていくというものだ。

はじめに、主体的な学びのトップランナーである登壇ゲストの2名より、それぞれの学校現場における実践が紹介された。

蓑手氏の実践共有: 「主体性」を育む環境をどうつくるか =授業篇=

HILLOCK初等中等部創設・運営者 
蓑手章吾 氏

はじめに蓑手氏より言及されたのは、混同されがちな「主体性」と「自主性」の違いだ。「言われたことを言われた通りにやる」=自主性に対して、「やりたくてやっている」=主体性であるとして、子どもたちの自主性を育てるための制約や期限などの設定により、主体性が失われていく可能性があるとして、両者の違いを語った。

そのうえで「主体性」を育む環境づくりのために欠かせない要素として挙げられたのは、「ワクワク」と「教えすぎない」こと。子どもたちが「やれば楽しいことがある」「やりたいことにつながる」といった「ワクワク」を感じられること、そして子どもたち自身の考える余地を残すため、教師が「教えすぎない」ことが重要だという。

土台となる「学びをデザインする高度専門職としての教師」

また、次期学習指導要領改訂の論点整理における「学びをデザインする高度専門職としての教師」について、その専門性として次の3点を挙げ、評価者不在でも子どもたち自身が自己評価できるような環境、システムや方法を譲り渡していくことが大切だと語った。

1:間違えても大丈夫な関係性づくり
学びの場における仲間として「正解なんてない。そもそも正解って何だ?!」と言えるようなマインドをつくり、共有する。
2:見取りと適切な足場かけ
難易度調整を学習者に譲り渡していく。一定の基準を決めて、適切な足場かけを行う。
3:成長実感を得られるシステムづくり
昨日より今日、今日より明日、と自分自身の成長を実感し、その成長を嬉しい・楽しいと感じることができる。

学びをデザインする教師に求められる3つの専門性

山本氏の実践共有: 横浜創英の学校改革を「3つの条件」で実装する ― Excellence × Equity × Feasibility ―

横浜創英中学校・高等学校
山本崇雄 副校長

山本氏は最初に、今の子どもたちは勉強を「与えられる」ことに慣れてしまい、勉強したいという気持ちをそもそも持てていないとして、自身が副校長を務める横浜創英中学校・高等学校において取り組んでいる教育改革について、論点整理の3つの軸に照らし合わせて紹介した。

1.主体的・対話的で深い学びの実装:
「学び方改革」を最終ゴールとして生徒の「主体性」を育む授業へ
2.多様性の包摂:
「カリキュラム改革」として、新しい時間割の枠組みを構築
3.実現可能性の確保:
「働き方改革」として、業務を見直し教師の時間を創出する

教員それぞれが異なるやり方、考え方を持つ「学び方」の改革が最も難易度が高いと考え、まずそのための時間を「働き方改革」で創出し、「カリキュラム改革」で環境を整えたうえで、最終的にどのような授業をするのか「学び方改革」に取り組むという順番で進めていったという。

横浜創英の教育改革における3つの改革ステップ

そのうち、最終ゴールとなる「学び方改革」において子どもたちの主体性を育む軸となるのは、見通し・行動・振り返り(=Anticipation-Action-Reflection)を繰り返す「AAR学習サイクル」、最上位目標の合意を前提とする対話の文化=「パブリックリレーションズ」、さらに「DE&I」(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包摂性)の観点だとして、具体的な取り組みを紹介。

「学び方改革」における主体性を育む軸となる考え方

仕組みを整えれば必ず子どもたちは自分で学ぶようになる、そういう学校を目指して、改革を進めているところだとして発表を締めくくった。

トークセッション

続くトークセッションのパートでは、山本氏・蓑手氏と、モデレーターとしてCOMPASS板橋氏が参加。次期学習指導要領改訂に向けた論点整理で示された三つの方向性を軸に、前半の実践報告を掘り下げる議論がなされた。

テーマ1 主体的・対話的で深い学びの実装 (Excellence)

まず最初のテーマである「主体的・対話的で深い学び」について、本ディスカッションにおける定義がモデレーターであるCOMPASS板橋氏より示された。

本ディスカッションにおける「主体的・対話的で深い学び」の定義

「主体的・対話的で深い学び」の実践において、子どもたちにどのように自由を委ねるか?

蓑手氏:
自由進度学習のように授業方法を自由にすることが目的ではなくて、目的は子どもたちの「主体性」を育てること。その過程として、自由な部分、子どもたちが選べる部分を1つとか2つとか5分とか10分とか用意する。少しずつでもいいから広げていかない限り「主体性」はいつまでたっても身につきません。

ここでは、「足場かけ」がとても大切です。小テストで85点ぐらいを取れるレベルが、ゴルディロックスの原理でいえば、子どもたちに一番効率的に学習できる割合と言われます。ただ、一斉授業で全員が85点を取れるはずがない。だから、自分が85点を取れるような課題を一人ひとりが設定できるということ、それができることが自由の強みなんですよね。

足場かけの目安となるのは85点の難易度

そもそも子どもたちには、できるようになりたいという思いがあるので、その過程を一緒にやりながら、簡単すぎず難しすぎない課題設定をできるようにする、伸びる楽しさを通じて主体性を育てていくということが、教師の足場のかけ方かなと思います。

学校全体で「主体的・対話的で深い学び」を実装するための組織としての支援や文化づくりとは?

山本氏:
まず取り組んだのは「働き方改革」です。最上位目標となる「考えて行動のできる人」の育成についての対話のための時間をまずは生み出す。研修も職員会議もできるだけ短く、勤務時間が4時半までに終わるような、30分ぐらいの長さにして、先生方が自然に職員室で対話ができるような風土をつくりました。

働き方改革により対話の時間を創出

授業方法に関する議論は、そこだけやってしまうと単なる手法の対立になってしまうので、意図的に封印しました。時間が生まれたところで、「弱みは置いておいて自分の良さ・強みを生かせる授業をみんなでやりましょう」と「安心安全の場」をつくる。そして、その上で足場かけ、我が校でいうと研修をして「主体性」を育てるためにはどうしたらいいのかをみんなで考えます。そこからカリキュラムができ、時間割ができ、最終的には授業実践ができるという流れで進めていきました。

蓑手先生が話された子どもたちの主体性を育てるプロセスと、大人が主体的になって学校をつくっていくプロセスは、同じではないかなと思います。

子どもの「主体性」をどう見取るか? (論点整理「学びに向かう力、人間性」の評価のあり方の見直しを受けて)

蓑手氏:
自由進度学習でも、先生が説明したり、テストのようなチェックポイントを設定したり、自由の幅をある程度制限しながら進めていくと思うんですが、究極、子どもたちにポンと時間だけを渡して委ねたときに、自分たちで学習するかどうか。そこで、すごく「主体性」が見えると思います。

子どもたちが学習そのものを楽しいと思えているのか、その時間やらないといけないからやっているのか、といったところを見取って、学習方法の選択肢なのか、学習への意味づけなのか、難易度設定なのか、のような解決すべき要素を見つけていくことが大切です。

自分が主体性を育む授業をできているのか、それを見取るためには、一度授業を全部開いて、子どもたちに委ねてみる、そのうえで、授業設計とか環境デザインという、まさに教師の専門性を磨いていくことが一つの指標になるのではないでしょうか。

テーマ2 多様性の包摂 (Equity)

続いてのテーマは「多様性の包摂」。蓑手氏には学校現場における学びのデザイン、山本氏には学校経営の観点で質問が展開された。

多様な理解度・興味・特性の子どもたちがともに自分らしく学べる学びのデザインとは?

蓑手氏:
基本的に、子どもたちは理解度も興味も属性も多様で、85%の理論で言うと、難易度は全員バラバラになるはずです。そのことを前提として、自己有用感や学習する楽しさを最大限に味わえることをベースに考えていけば、自由進度学習に限らず、一斉授業でも、探究でも、「自分らしく学べる」環境づくりは可能だと思います。

大事なのは一人ひとりがちょうどいい「ストレッチゾーン」に合わせられるか。多様性というと特別支援対応の子どもたちにフォーカスされがちですが、すべての子どもたちは多様であるという前提のもと、「包摂性」=Equityを上げていくということが、主体性を子どもたちに委ねていく大きなヒント、一番大事なところだと思います。

「多様性の包摂」を学校として実現するための学校経営のありかたとは?

山本氏:
大切なのは、学校で設定する目標だけで学びを捉えないことです。子どもたちはそれぞれ違っていて、学校が一律に示す目標を達成したかどうかだけでは、その子の学びを十分には測れません。だからこそ、試験範囲や学習目標といった学校から提示する共通目標に加えて、生徒一人ひとりが自分で「個人目標」を設定することが重要なのです。

子どもたちも揃えないし、先生たちも揃えない。多様な特性の先生がいて、その先生を子どもたちが選んでいくと考えると、先生それぞれの強みが生かされてくる。1人の先生が1つの教室を担当するのではなくチームで担当する。そういう枠組みでカリキュラムや組織作りを行うと先生も助けられます。結果的に子どもたちも救われる。だから先生の多様性を生かしていくような学校経営が重要です。

子どもも教師も多様であることを前提に目指す「最大多様の最大幸福」

テーマ3 実現可能性の確保 (Feasibility)

最後となる3つ目のテーマは「実現可能性の確保」。これまでのトークテーマをふまえ、そうした実践をどうすれば継続的に実現していくことができるのかについて、掘り下げられた。

多忙な学校現場で「主体的・対話的で深い学び」や「多様性の包摂」を継続的に実現するには?

蓑手氏:
学習のマインドセットというか、子どもたち自身が85点の課題調整の力を身につけて、先生が準備をしている段階から脱却することが、実現可能性を増やしてくれるのではと思います。子どもたちの多様性がもたらし合うもの、それを面白がれるような環境、土壌をつくっていくことで、先生たちももっと楽に、そして楽しめるようになる、それが継続のためにすごく大事なのかなと。

あとは、小さい目標の到達度に近視眼的にならずに、本来、社会なら人の行い・営みの面白さ、理科なら世界の面白さ自然事象の面白さ、国語なら言葉を楽しむといった、そういう力を育む教科なんだよな、学校ってそういう場所だよな、と。一旦立ち返ってみるというか、そういう方向に見方をシフトしていく必要があるんだろうなと感じています。

ICTの活用も主体的な学びのサイクルを後押し

新しい学びのかたち・実践を学校全体に根づかせるために、組織として注意すべきポイントは?

山本氏:
先生と生徒が楽しそうな学校をつくるには、やはり「働き方改革」がとても重要で、特にマネジメントの部分。最上位目標を言語化してみんなが誰かに説明できるぐらい理解できたら、手法は100点じゃなくて60点くらいでいい、として、権限を個人と分掌に与えていくということがすごく大切です。

最上位目標の合意を前提に分掌改革を実施

自分でやってみて達成する経験、これを繰り返すと先生たちも生き生きしてきます。すると授業にも余裕が出てきて、いろんな工夫をするようになり、そこで成果が出ると生徒も楽しいし先生も楽しい。だから権限を与えて、達成感を先生たちが味わっていくこと、先生たちが笑顔で、対話の文化を根づかせながら働き方改革を同時に進めていくことが大切だと感じます。

参加者へのメッセージ
最後は2名のゲストからイベント参加者へのメッセージで締めくくられた。

蓑手氏:
どうすれば「主体性」が育つか。HILLOCKでは、自由進度学習の範囲を広げていて、やるかやらないかも子どもたちが決めます。それぐらい開いてわかったことは、「子どもたちはやる」んです。心配なこともたくさんありましたが、やってみて見えてきたことがあるので、是非遊びに来てください。同じ時代に、一緒に、教育というものに魅せられて取り組んでいる仲間として、一緒に進んでいきましょう。

山本氏:
「主体性」を育てる秘訣は、目標を自分で設定することや、目標を意識させる言葉掛けをすることです。何か思うようにいかない、問題を抱えている子にも、「時間がかかるかもしれないけど、必ず君はできるようになるよ」と。目標をポジティブに達成できるという言葉をかけ続けると、子どもは間違いなく変わります。大人が本気で信じてあげる言葉をどれだけかけるかが、本当に一番大切です。

>ゲストによる実践発表、およびトークセッションの全体は、COMPASSの公式Youtubeチャンネルで公開中

「次期学習指導要領改訂に向けて考える “主体的な学び”と“先生の役割”とは」のアーカイブ動画

関連URL

HILLOCK初等中等部

横浜創英中学校・高等学校

COMPASS「キュビナ」

自律的な学習者への第一歩に 自己効力感の向上 活用事例多数紹介 すらら 活用事例のご紹介
Benesse AIドリル x デジタルテストの導入事例大公開!
株式会社TENTO

アーカイブ

  • ICT要員派遣はおまかせ!ICTまるごとサポート 詳細はこちら
  • 事例紹介作って掲載します。 ICT教育ニュースの楽々 事例作成サービス