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2016年2月12日

私立学校に学ぶICT導入における“目的設定”の重要性

~ICT教育の現場から~
私立学校に学ぶICT導入における“目的設定”の重要性
教育ICTコンサルタント 為田裕行

学校現場へのICT導入が進んでいる。
2015年には、20校以上の学校を訪問して、ICTを活用した授業を見る機会があった。

教育ICTコンサルタント 為田裕行さん 

教育ICTコンサルタント 為田裕行さん

それぞれの学校で状況は違うのだが、公立・私立にかかわらず、ICT導入がうまくいっている学校は、「こういう学校にしたい」「こういう授業をしたい」という“ICT導入の目的”が明確になっている。そして、目的の明確化という点でいえば、教育委員会主導によるICT導入よりも、私立学校でのICT導入の方が、先行しているように感じられる。
今回は、ICT導入に際して欠くことのできない“目的設定”のあり方について、私立学校を例に紹介する。

私学だからこそできること?

私立学校で「こういう授業をしたい」「こういう学校にしたい」ということを明確にしやすいのは、1校単位でグランドデザインを描くことができるからだ。ICT導入の目的は1つでもいい。もちろん、複数の目的を追いかけてもいい。だが、「とりあえずiPadを40台導入するから、使い方を考えて」と現場に指示が下りてくる、というような使い方は決してうまくいかない。

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(Syda Productions / PIXTA)

ICTを導入することは、目的ではない。何か目的があり、それを実現するための手段としてICTを導入する、という思考の順番であるべきなのは明らかである。ところが、こうした思考の順番をとっていない学校も多い。目的を明確にするには、「こんな授業をしたい」「こんな学校にしたい」ということを最初に考えるべきだ。それは、どんなことでもいい。

例えば、「正解のない問題に取り組んでいくために、協力して課題解決をできるようにしたい」「グローバルに活躍する人材を育てるために、海外とのやりとりをもっと頻度を増やしたい」「授業中に寝ている生徒を減らしたい」など、具体的に考えていけばいい。これらを目標と置いたときに、どのような手段でこれらを実現できるか、を考えていけばいい。この手段の一つとして、ICTが存在する。

「正解のない問題に取り組んでいくために、協力して課題解決をできるようにしたい」という目的を設定したとする。そための手段として「グループに分かれて、協働で一つのファイルを編集して提出する」という手段をとることもできるし、「正解のない問題に現在進行形で取り組んでいるプロフェッショナルにSkypeを通じてプレゼンテーションをしてもらい、理解を深める」という手段をとることもできる。どちらが正解ということはなく、どちらが最初に目的として設定した「正解のない問題に取り組んでいくために、協力して課題解決をできるようにしたい」を実現できるかを、学校の事情と合わせて判断基準にすることになる。目的が明確に決められていないと、このときの判断の基準がなくなってしまう。

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( kobe / PIXTA)

この「目的を明確にする」というのは、簡単なように見えて実は簡単ではない。特に、公立学校であれば教育委員会が管轄している学校それぞれにさまざまな状況があるのでなおさらである。さらに、ステークホルダーは児童生徒だけでなく、保護者、教師、首長、議会など多く存在している。それぞれに説明をし、共通理解を得ることは、かなり大変である。

しかし、私立学校については、目的は明確にすることができる。まず、「建学の理念」がある。この建学の理念から発展させて、「こんな学校にしたい」「こんな授業にしたい」ということを明確にすることができれば、教師にそれを伝えることができるだろう。また、「こんな学校にしたい」「こんな授業にしたい」ということ自体が、学校のアイデンティティに繋げやすいこともプラスだと思う。

また、保護者や児童生徒たちが、学校側からビジョンとして提示された「こんな学校にしたい」「こんな授業にしたい」という方向性に共感して受験するようになれば、学校の方向性を統一することもできる。

たとえば、桜丘中学・高等学校の場合、創立時の校訓である「勤労と創造」をベースとして、“創造性をいかに刺激するか”という問題を導き、 創造性を刺激することを目的にiPadの導入を行い、パーソナルなデバイスとして活用している。

目的を明確にし、評価すること

目的を明確にするときには、評価できる指標も一緒に考えられることが重要だ。明確に目的を設定し、そのための手段として、ICTを導入・活用すると決めたのであれば、目的が達成できたのか、あるいは達成の方向へ学校は変わってきているのかを評価しなくてはならない。

最近、「教育にもエビデンスを」という文言をよく見かける。これは、数値化して評価できるものは評価をせよ、ということだ。だが、教育現場のすべてを数字で評価できるわけではない。だが一方で、テストの点数以外に、数字で評価できる部分もあるだろうと思っている。

数値化できるものはないか、考えてみるべきだと思う。

例えば、「授業中に寝ている生徒を減らしたい」という目的なのであれば、寝ている生徒の数を教師が数えることはできる。授業中に寝ている生徒を減らすために、もっと机間巡視をしたい。そのために、AppleTVを導入して机間巡視しながら授業の説明をできるようにする。そのときに、実際にICTを導入する前と後で、寝ている生徒の数は変わるか、眠そうな生徒の数は変わるか。

プロジェクタで教材を提示するときに、生徒が黒板を見る時間はどれくらい増えるのか。これも計測をすることもできる。数値化してエビデンスとして出せるのは、学力(=テストの点数)だけではない。ICTを導入した結果、学力以外にどんな数値を示してエビデンスとしていけばいいのか、それが教師の現場感覚と合っているのか、合わないものなのか、そこを突き詰めていくのが、これから数年で非常に重要なことになる。

桜丘中学・高等学校の授業風景

桜丘中学・高等学校の授業風景

ICT導入目的の達成度評価を設計している学校には、まだ実は出会っていない。教師の中には、エビデンスを出すことの重要性を意識している人はいるものの、まだ評価技法なども含めて、スタート地点に立ったところだ。

前述の桜丘中学・高等学校の場合について、品田副校長は、「先生が新しい授業スタイルにチャレンジするのも『創造』であり、生徒がクラブで新しい使い方を始めるのも『創造』でであると捉えている」と言う。そのため、評価としては数値ではないが、例えば華道部の生徒が「WebDav使っています」と言うが、教員はおそらく誰も活用できていないが生徒は自分たちで便利と思って使っている、という事例が出てきているそうだ。こうした事例を、職員会議で共有することで、どんどん自由に使われるようになってきているそうだ。

「どう使われているか」「こうした使い方がある」という事例を、それに伴いどういった変化が起こったのかと合わせて積み上げていくことで、徐々にICT導入目的の達成度評価を行えるようになってくるだろう。

加点主義で「学び方の幅」を広げるためにチャレンジする

ICT導入については、先行事例が多く出てきている今日、先行事例の中から自分たちの「こんな学校にしたい」「こんな授業にしたい」に近い先進事例を見て、できる範囲でどんどんやってみることだと思う。ICTを教室に導入することは、教師の「教え方」と児童生徒の「学び方」の幅を広げることになるからだ。「教え方」についてはまだしも、「学び方」の幅は広げられる方がいい。

ICTは使ってみなければわからないこともたくさんある。そのときには、減点法で考えるべきではない。動作が遅かったり、ちょっと表示場所がずれていたり、100点満点ではないこともたくさんあると思う。だが、比べるべきは「100点満点=理想の状態」ではない。現状の授業がもし80点だとして、100点でなくても85点に上げられるのであれば、満点に届いていない15点を見るのではなく、ICTを導入して上がった5点に着目すべきだと考える。

満点は取れていなくても、少しずつ点数が上がっていく=授業が変わっていく、その楽しさを感じながら先生方がICT導入を進めていけば、必ず成功すると信じている。

Mr-Tameda為田裕行
教育ICTコンサルタント
フューチャーインスティテュート株式会社 取締役
1975年生まれ。慶應義塾大学卒業後、大手学習塾企業へ就職。現場で鍛えられ、1999年フューチャーインスティテュートの設立に参画。東京都における教材開発支援プロジェクトに関わり、教育ICT導入の可能性を模索。教育ictリサーチで情報発信中。

[編集部追記]
今回、為田さんには教育現場へのICT導入に際し最も重要なコンセプトともいえる「目的設定」の意味について解説をお願いした。確かに「目的設定」の重要性は理解したが、それからどうしたらいいのかわからない、具体的なICT導入の方法もわからない、なにより誰に相談したらよいのかもわからないという方も多いことだろう。そこで、ICT教育ニュースでは、「ICT教育・相談室」を計画している。相談1件1件に対してプロからの助言が受けられるような仕組みを考えている。ひとまず、ICT導入について「相談してみたいこと」「訊いてみたいこと」のある方は気軽に下記まで「学校名」「氏名」「メールアドレス」「相談内容」を記入してメールを送っていただきたい。

「ICT教育・相談室」 sodan@ict-enews.net

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