2025年8月22日
個別最適な学び+協働的な学びにAI型教材「キュビナ」を活用する学校教育現場の実践事例/愛知県豊田市
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COMPASSは2025年6月21日、“NEXT GIGAの「個別最適な学び」と「校務DX」”と題するオンラインイベントを開催した。今回はその中からAI型教材「キュビナ」を2022年度に導入し、全市での活用推進に取り組む愛知県豊田市の実践事例の発表を紹介する。報告は豊田市教育委員会 学校教育課の熊谷 等 指導主事が行った。
空間と時間を超えて情報を共有できるICTは、豊田市の教育環境を劇的に変える
◆豊田市のICT活用方針とキュビナ導入の経緯
熊谷指導主事:
豊田市は、広大な面積を有する愛知県で最も大きな市です。人口は約42万人、児童生徒数は約3万2,800人で、そのうち約4%に当たる約1,200人が外国人生徒です。合計104校ある市内の小中・特別支援学校は児童生徒数8人の学校から849人の学校まで規模もさまざまで、約3,000人の教員が勤務しています。
市中心部と山間地域とでは生活環境が大きく異なりますが、情報機器を有効活用することで、それぞれの地域の強みを活かしながら、市全体で教育環境の格差が生まれないように整備を進めています。広域かつ多様な豊田市だからこそICTの活用が重要であると考え、「豊田市情報化プラン」を作成し、市内104校でのICT機器を活用した授業づくりや業務改善を進めています。5年に一度プランを改定し、現在はICT機器を効果的に活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」を通して、目指す子ども像「つなげる子ども」の実現を目指しています。
そうした中で、豊田市ではキュビナを2022年度より導入し、前時の振り返りや適応題の取り組みに活用しています。2020年度に学習用タブレットの整備と協働的な学びのための授業支援ソフトの導入を行い、タブレット端末の使用方法が確立されたうえで、個別最適な学びのためのデジタルドリル教材の選定を2021年度からスタートしました。多くの検証を行った結果、AI型教材というのが決め手になり、2022年度にキュビナが導入されました。
キュビナ導入の狙いは、個別最適な学びの充実を図ることでした。児童生徒一人ひとりに応じた課題を提供できることで、効率的に知識・技能の習得ができるようになると考えました。
キュビナの導入によって、質の高い個別学習を行いながら、限られた授業時間を有効に使えるようになり、児童生徒の学びを充実させることができました。そして、技能の習得を効率的に行うことでできた余剰の時間を探究学習などにあてられると考えました。
キュビナ導入で推進する個別最適な学びと協働的な学び
◆キュビナ活用促進に向けて
各校での活用を推進するために、毎年夏にキュビナの操作研修を実施しています。
講師はCOMPASSの方や市内の推進委員が務めます。基本操作を学ぶ初級、応用的な活用方法を学ぶ中級、上級と習熟度別の研修を実施することで、それぞれのニーズに合わせた学習の機会を提供してきました。
特に初級研修は、あまり操作に慣れていない授業者や管理職を対象として実施しています。基本的な操作方法を知ることで授業で使ってみようという授業者の気持ちを高めることや、仕組みや有効性の理解による管理職の校内での活用推進につながっています。
>>初級研修を受講された先生のコメント
◆キュビナを取り入れた授業実践例①
豊田市では、ICTを活用した授業づくりを推進するための「新しい学びの推進委員会」を組織して授業提案を行っています。その中からキュビナを取り入れた授業を2つ紹介します。
1つ目は、小学校3年生の算数「一万をこえる数」の授業です。45分間授業の中で「個別最適な学び」と「協働的な学び」それぞれの場面でキュビナを活用しました。
まずは導入場面、前時の復習としてキュビナを活用した「個別最適な学び」を行いました。教員がポイントを押さえた後は、自分のペースで自分に合った問題に効率的に取り組むことができました。
>>キュビナを使った「個別最適な学び(復習)」の様子
続いて「協働的な学び」でのキュビナの活用です。キュビナの学習データを投影して学級全体の正答率の低い問題を取り上げることで、効率的に課題設定ができ、児童の実態に応じた学習を進めることができました。多くの児童にとって学ぶ必然性のある共通の課題が設定されたため、質の高い協働的な学びにつながりました。
>>キュビナを使った「協働的な学び」の様子
最後に学習内容の定着を図る「個別最適な学び」の様子です。キュビナの「ワークブック」(個別最適な演習問題の配信機能)を活用し、児童一人ひとりが自分自身の学びを振り返り、定着度を確認しながら学習内容の理解を深めることができました。このように授業の中に「キュビナ」を効果的に組み込むことで授業改善を図ることができています。
>>キュビナを使った「個別最適な学び(定着)」の様子
◆キュビナを取り入れた授業実践例②
2つ目の実践は、中学校2年生の国語の授業でのキュビナの活用です。単元計画の2時間目にキュビナの活用を位置付け、本文の内容を理解するための学習を組み込みました。
「ワークブック」で「単元確認問題」(教科書の単元ごとの確認問題。教科書本文の読解問題も搭載)を配信し、キーセンテンスを正しく理解することで、その後の読解をスムーズに進められるようにしました。また、授業の後半のまとめタイムでは「キュビナマネージャー(先生用の管理ツール)」で「ワークブック」の取り組み状況を確認することで、生徒一人ひとりの理解度を把握し、話し合いに活かす展開を工夫しました。
豊田市のキュビナ活用に対するQ&A
Q:豊田市全体でのキュビナ活用促進のためにどんな取り組みを実施されていますか。
熊谷指導主事:
豊田市では、2024年度に学力向上推進委員会で「学力向上授業モデル」を作成し、授業の中でどのようにキュビナを活用すればいいかわからない、といった現場の声に応えるための活用例を提案しました。
活用方法を具体的に示したことで、これまでキュビナの授業内活用に消極的だった教員も積極的に活用できるようになりました。
比較的活用が進んでいた算数などの教科に加え、活用率が低かった国語などでの事例も多く示したことによって、独立した学習の時間ではなく、1時間の授業の中にキュビナが自然に組み込まれるようにしていきたいと考えています。
Q:キュビナを活用した授業を実際に行った先生方には、どのような変化がありましたか。
熊谷指導主事:
実際に授業を行った先生方には、キュビナを効果的に授業に取り入れることで、これまでできなかったような授業づくり、質の高い授業の実現につながるといった、さまざまな可能性を感じていただいています。学力向上委員の先生からは、教科書に対応した「単元確認問題」の搭載により授業内での活用の幅が広がり、単元内の重要知識の効率的な理解だけでなく子どもたち同士の対話にもつながっているというコメントをいただいています。
>>学力向上委員の先生のコメント動画
Q:キュビナ導入後の子どもたちの変化や先生目線での変化はどのようなものがありますか。
熊谷指導主事:
「児童生徒の学習に関する調査」の結果として、「キュビナは楽しい」と答えている子が小中学校合わせて約半分いました。また、キュビナに多く取り組む学校ほど、「再学習を繰り返すことで学力が向上しているという手応えを感じている」という児童生徒が7割近くいました。
さらに、キュビナの再学習を繰り返すほど正答率が向上しているというデータも確認でき、事前の学力の低い層でも、キュビナの取り組み量を増やすことで正答率が大きく向上する例が多く見られました。これはキュビナによる個別最適な学習によって着実に力をつけている児童生徒が多くいる結果だと捉えています。
先生方の調査でも、キュビナをよく使っているAグループと、あまり活用していないBグループで、授業準備時間の削減について差が見られました。
よく活用しているAグループでは、授業の中で基礎基本の定着が早くなったと答えた先生が6割を超えました。一方でキュビナをあまり活用していないBグループでは、同様の質問に対する回答が1割未満にとどまりました。
授業の中で、基礎・基本の習得にかける時間の割合がBグループの方が高く、やや非効率的な傾向が見られました。授業の準備にかける時間についても同様の結果が見られて、キュビナを積極的に活用することで、プリントの作成や採点などの業務を減らすことができ、授業準備時間を削減することができているという声が多く聞かれました。
生み出された時間は子どもたちと触れ合う時間、教材研究を充実させる時間、ワークライフバランスを保つことなどに有効に利用できているようです。
本日発表しました取り組みによって、豊田市でも、徐々にキュビナを活用した授業づくりが広がっています。現場からは授業の導入時、また授業中の確認・復習時の活用による効果を実感している声が多く聞かれるようになってきました。
今後の課題としては、キュビナの強みと弱みをしっかりと周知して、授業の中でより有効に活用できるようにしていくことが求められていると考えます。今後も現場の先生方の声を聞きながら、豊田市全体の活用を推進していきたいと考えています。
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