2024年4月2日
全国2万5827人が参加した「高校生Ring 2023」/グランプリが決定する「高校生Ring AWARD 2023」をレポート
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リクルートによる、高校生の課題発見力を養うアントレプレナーシップ・プログラム「高校生Ring 2023」の最終審査会「高校生Ring AWARD 2023」が2月24日に東京・日比谷で行われ、グランプリ、準グランプリが決定した。
全国2万5827人のエントリーから、1次、2次、3次審査を経てファイナリストとなった5組が最終審査会に臨んだ。「半径5メートルの問い」を大事にした同プログラム。当日の模様をレポートする。
主体的に課題を解決する力につながる「高校生Ring」
社会の急激な変化を背景に、政府や教育機関で推進が進む「キャリア教育」。その一環として「アントレプレナーシップ」のニーズも急速に高まっている。
リクルートが2021年から開始した「高校生Ring」は、高校生にアントレプレナーシップを身に付けるための学びを届ける教育プログラム。
リクルートでは、「新しい価値の創造」を経営理念の一つに、社内新規事業提案制度「Ring」を40年以上前から実施。「スタディサプリ」も同制度によって生まれたサービスの一つだ。「高校生Ring」は、この「Ring」の哲学とノウハウを基に、新規事業のアイディアや未来を考える創造力を全国の高校生にも体験・発揮してもらいたいとの思いから立ち上げたという。
テーマ設定はない。高校生が自分たちの「半径5メートル」からアイディアの種を見つけビジネスプランを考案していく。日常の中にある「身近な気づきや問い」から自分視点でビジネスを考えていくことが特徴だ。自ら課題を設定することで、よりアントレプレナーシップで重要な「主体的に課題を解決する力」が育まれていく。
半年間かけてプランをブラッシュアップ、選出されたファイナリスト5組
2023年夏からスタートした今回の同プログラム。各高校での学内における1次選考、リクルート社内での2次選考、リクルート社員がメンターとして各チームにコーチングを行ったうえでの3次選考を経て、ファイナリストが選出された。
ファイナリスト<発表順>
■埼玉県立大宮南高等学校(埼玉県さいたま市)
チーム名/Make Future
内容/購買のオンラインサービス
■西宮市立西宮東高等学校(兵庫県西宮市)
チーム名/Bestrip
内容/旅行プランの売買サービス
■東京都立上野高等学校(東京都台東区)
チーム名/外来シュポット
内容/外来魚対策サービス
■星陵高等学校(静岡県富士宮市)
チーム名/ユニバーサルクローゼット
内容/医療ニーズに対応する衣服企画サービス
■大妻高等学校(東京都千代田区)
チーム名/しゃぼん玉
内容/生徒同士で教える教育サービス
審査は、(1)オリジナルな視点や切り口か(2)ビジネスになりそうか(3)圧倒的当事者意識があるかの3つの評価観点をもとに行われた。全てのプレゼンが終了後、厳正な審査の結果、グランプリと準グランプリが決定した。
グランプリは星陵高等学校「ユニバーサルクローゼット」
グランプリを受賞したのは、星陵高等学校の「ユニバーサルクローゼット」。医療と衣服に着目し、ユニバーサルファッションに関する情報提供、企画などを行うサービスプランだ。
登壇した生徒自身が自己注射をする際、制服の裾で手元が見えづらく、打ちにくかった経験がプランのきっかけだったという。「怪我や病気を持っている人向けにどのような取り組みがあるかを調べたところ、全ての人が自由に服を楽しめるユニバーサルデザインの存在を知りました。しかし、そのことを知らない人はまだまだいる。自分の体の特徴ごとに服の情報を受け取れるサービスがあれば便利だと思いました。2つの『医療(いりょう)』と『衣料(いりょう)』をつなげ、クローゼットから服を取り出す感覚で気軽に情報にアクセスできるサービスを目指してサイト設営の提案をします」と事業内容を発表した。
周囲へのヒアリングから得られたニーズの事例からも課題を見出し、解決するための仕組みを考案。サイトイメージ、収益構造、今後の展望として海外展開の構想も説明し、「このプランを通じて、服を選ぶことの楽しさを共有したいです。医療についての“不”を解決し、一緒に本当のあなたらしさを探してみませんか?」と投げかけてプレゼンを締めくくった。
・審査員コメント
評価のポイントは3つ。1つ目にオリジナリティが高いこと。自身の経験に基づいて、課題として切り出し解決する着想が素晴らしかった。2つ目はビジネスの可能性。医療はこれから市場が大きくなる可能性が十分にあり、また高齢者向けとしても市場が拡大すると予想もでき、課題解決のチャンスがあるところ。3つ目は圧倒的な当事者意識。自分が絶対解決するという覚悟を感じさせるほどパワフルなプレゼンだった。
準グランプリは東京都立上野高等学校「外来シュポット」
準グランプリは、東京都立上野高等学校の「外来シュポット」が受賞した。生態系に影響を及ぼす外来種の問題をゲーム方式で楽しく解決する外来魚対策サービスだ。
きっかけは滋賀県に住む祖父と琵琶湖へ釣りに行ったこと。「私はブルーギルしか釣れなかったのですが、祖父は昔、同じ場所でさまざまな固有種が釣れて、食卓にも並んでいたと話してくれました」。今では見られない風景を取り戻すため、自分にできることを考えたいと思ったという。固有種の減少に関するデータなどを用いて固有種と外来種の関係を考察。滋賀県へのヒアリングからは新たな外来種の早期発見の重要性もわかった。「持ち込んだのは人間。私たちが釣って解決することが大切。スマホゲームを使って外来魚問題を解決します」とリアルとバーチャルが融合した新感覚の釣りゲームが楽しめるアプリを考案した。
同プランの成功の理由として、スマホゲームの市場、競合などにも触れ、「外来魚問題がより身近になり、固有種が再び身近な存在になる未来。植物などにも応用していきたい」と今後の展望も語った。
・審査員コメント
社会も気づいている外来種の問題。当事者意識を持って取り組んでいたことが素晴らしかった。どうしたら外来種を釣りたくなるかというゲーム性がプレゼンの中でありありとイメージできた。課題をしっかり捉えながら考え抜いたことも素晴らしい。植物などへの広がりもあるが、グローバルへの展開も見えるようなプレゼンだった。
「日本の高校生はかっこいい」社外審査員も高評価
全プレゼンの総評として、参加した審査員からは、「素敵なプレゼンをありがとうございました。熱意が伝わってきてよかったです。今日は皆さんが考えたアイディアを発表する場でしたが、本来面白いのはここから人を巻き込んで、実際に世界を変えていくところ。ぜひ今後もチャレンジしてもらいたいです」。「『日本の高校生はかっこいいな!』と勇気づけられました。この先は行動あるのみ、行動こそが全てに勝る。まずは一歩を踏み出して、世界を変える挑戦が当たり前のワクワクする毎日を送ってほしいと思います」など感想やエールが贈られた。
リクルート「スタディサプリ」プロダクト責任者 池田脩太郎氏のコメント
池田氏は、基礎学力はもちろん、アントレプレナーシップをはじめとする非認知能力も大事だと考え「高校生Ring」の提供に至ったとし、「アントレプレナーシップは起業家だけではなく、さまざまな職業に就く方が主体的に課題を解決する際に重要な能力。主体的な課題解決力を身に付けるにあたり、『高校生Ring』では『半径5メートルの問い』を大事にしています。私も『スタディサプリ』を立ち上げたメンバーの一人ですが、当時の業務で高校生にインタビューをし、“お金がなく大学に進学できない”“塾・予備校に行きたいが近くにない”という声がサービス開発につながりました。自分の身近な問いに目を向ける、自身の原体験が大事だということは、そんな私の経験からも確信しています」。
グランプリを獲得することだけが正解や結果ではないと思っていると池田氏。「全国で2万5000人以上の方にエントリーしていただきましたが、『高校生Ring』に取り組むプロセスの中で『この課題は自分が解決するんだ』と情熱に火がついた瞬間があるのではないでしょうか。そのような経験がこれからの人生で情熱を持ち何かに取り組むきっかけになれば嬉しいです」とコメントした。日本でアントレプレナーシップが広がるよう「高校生Ring」の活動を広げていきたいという。
高校生の瑞々しい感性とポジティブな未来の可能性を見た最終審査会。5組のプレゼンから、「主体的な解題解決力」には自身の成長はもちろん、不確実な未来やこれからの社会をより魅力的に変化させたり創造したりする力が確かにあることを筆者は感じた。「高校生Ring」で参加者が得る経験の価値はとても大きいだろう。次回、「高校生Ring 2024」の開催がすでに決定している。高校生にとってアントレプレナーシップを養える絶好の機会。まずは「身近な気づきや問い」から始めてみてはどうだろうか。
3月30日(土)22時より、「高校生Ring AWARD 2023」の様子をABEMAにて特別番組としてOA予定とのこと。高校生たちがどのようなプレゼンテーションをしたのか、ぜひチェックしてみてください。
「【生徒事例紹介】「高校生Ring」の経験が、進路選択や入試に生きた」
「【学校事例紹介】「総合的な探究」の学びに、アントレプレナーシップ教育プログラム「高校生Ring」を取り入れて」
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