2013年7月31日
学情研/タブレットの実践活用とICT環境のセミナーに210名参加
学習ソフトウェア情報研究センター(学情研)は29日、教育現場で導入が進むICT機器や教材についての報告・発表の場である「情報教育セミナー2013」を東京・港区のニッショーホールで開催した。
小中学校の教員や教育関連企業、研究機関・行政・団体の教育関係者ら約210名が参加した。
セミナーのテーマは、「新しいICT環境の現状と展望」。教育の情報化を推進する目的で、2010年に総務省が「フューチャースクール推進事業」をスタートし、推進校に指定された小中学校では、児童生徒1人1台のタブレットPC・端末、普通教室へのインタラクティブ・ホワイトボードの配備や無線LAN環境など、ICTが整備された環境下での実証研究が行われてきた。また佐賀県や大阪市、荒川区でもタブレット端末導入を進めるなど、教育現場でのタブレット導入は急速に広がっている。
ただ、ICT機器の導入状況は各自治体や学校により開きがあり、すべての学校で1人1台のタブレットPC・端末が整備されるまでにはもうしばらく時間がかかるとの見方が一般的だ。
こうした背景を踏まえて今回のセミナーでは、タブレットPC・端末の実践活用と環境にスポットを当て、現状の環境下でタブレットPC・端末が実際の授業でどのような使われ方をしているのか、これらの機器を使うことでどのような学習効果が期待できるのかなどを、具体的な実践例を検証しながら考察を深めることが狙い。
多目的ホールで行われた特別講演では、白鳳大学 赤堀侃司教授が、紙、PC、タブレット端末といった学習デバイスについて、それぞれの有用性と特徴を比較研究した結果について述べた。紙教材、PC教材、タブレット端末教材の3種類で学習する被験者各20名、合計60名に学習後の理解度テストを行ったところ、決められた範囲の学習内容を知識として覚えたり理解するといった学習活動には紙が最も優れ、一方タブレット端末は、自分の考えや判断、総合的に述べるような問題に適していることが分かったという。これらの知見を元に、紙とデジタルとのブレンド、教科のICT活用から情報活用へ、といった提言がなされた。
また、午後には3つのパネルディスカッションを開催。そのうち、「タブレットPC・端末セッション」では、放送大学中川一史教授がコーディネーターを務め、柏市立教育研究所の佐和伸明氏、大阪市教育センターの坂恵津子氏、千葉県立袖ヶ浦高校永野直教諭が参加し、それぞれの立場からタブレットPC・端末の活用状況について発表を行った。
中川教授によると、教育関係者から問い合わせを受けることが頻繁にあり、質問内容は「各校で何台ずつ入れればOKか」「Windows、Android、iPadのどれがいいのか」「タブレット以外に何が必要か」「結局いくらかかるか」「学習効果が得られる活用とはどういうものか」「どこに参観させてもらえばいいのか」の6つに集約できるという。こうした背景には、各教育委員会や学校ごとに情報化の進み具合や予算の付き方など条件が異なり、一様な答えが簡単に見いだせないといったこともあるようだ。
パネリストの立場は3人3様である。佐和氏と坂氏は教育委員会、永野教諭は授業に従事する立場。またタブレットPC・端末の導入では、「1クラス分(40台)を外部が購入」(柏市立教育研究所)、「複数クラス分を教育委員会で購入」(大阪市教育センター)、「1人1台を生徒が個人購入」(袖ヶ浦高校)であり、導入状況に合わせた活用を実践している。
柏市の小学校では、タブレットPC・端末をグループ学習の発表ツールとして活用しているという。「カメラ機能で撮った画像を電子黒板に表示して発表に使っている。伝えあう学習など、機能を生かせる場面で有効活用できる」(佐和氏)。同じくグループ学習での利用が多い大阪市では、タブレットが授業に使われるようになり、「児童が発表する機会が増えた」(坂氏)という。
一方、袖ヶ浦高校でも、全ての授業でタブレットPC・端末が活躍する訳ではなく、例えば発表のため写真を撮って資料を作って見せるといったクリエイティブ・プレゼンツールとして活用している。「学びの自然発生がタブレットならではの学習効果を生む。個人購入の1人1台は、自分のモノとして愛着を持ち、学習の積み重ねが蓄積できるメリットがある」(永野教諭)と述べた。
3名のパネリストによる発表は、導入過渡期の今、タブレットPC・端末の活用を考える上で貴重な手掛かりになるものとなった。
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