2016年5月23日
モリサワがICT教育向け「UDデジタル教科書体」を発表
モリサワは20日、グループ企業のタイプバンクが開発して販売する、ICT教育の現場に効果的なユニバーサルデザイン書体「UDデジタル教科書体」を発表した。
「UDデジタル教科書体」は学習指導要領に準拠し、書き方の方向や点・ハライの形状を保ちながらも、太さの強弱を抑え、ロービジョン(弱視)、ディスレクシア(読み書き障害)に配慮したデザイン。また、今年度から施行された障害者差別解消法の理念に基づき設計されている。
発表会で登壇したタイプバンクの高田裕美氏は、開発の背景とデザインコンセプトについて、「弱視の子どもたちにとって“明朝体”や“教科書体”は太さに変化があって見づらい。見やすいのは“ゴシック体”だが、もともと印刷用のフォントのため正確でないところがある。“UDデジタル教科書体”は、教育現場に相応しい教科書体の良さを活かし、線の太さを一定にて、電子黒板などでの利用時に遠くからでも見やすいデザインにした」と説明した。
ゴシック体の不正確さとは、資料画像の「山」では画数が、「心」では向きや形状が、「追」では形状が異なるといった点だ。デジタル教材として「漢字ドリル」などを提供する場合、画数や形状が異なるのは、正しい学びではないことになってしまう恐れがある。
開発にあたって、実験研究とエビデンス(科学的根拠)作成に協力した、慶應義塾大学大学院社会学研究科の中野泰志教授は、「“一般の人に提供している情報には、障がい者が自ら選択する方法でアクセスできるようにしなければならない”と定めた『国連の障害者の権利に関する条約』や、今年4月に施行した『障害者差別解消法』の主旨からも、障がい者の選択可能な方法を提供する“合理的配慮”は、義務や努力目標となっている」とユニバーサルデザイン書体の必要性を述べて、検証作業について報告した。
検証作業は、実験と調査を当事者参加で客観的データが得られるよう名方法で行なったという。
実験では「低視力シミュレーション」や「白濁シミュレーション」の他、一対比較法アプリを使った他の書体との「見やすさ比較」など。
調査では、専門家や弱視生徒(47人)、弱視生徒を指導している教員(104人)へのヒアリングやアンケート調査を行った。
こうした検証の結果、既存の教科書体や明朝体に比べ「見やすさ・読みやすさ」において上位にあることが、統計学的上も有意な差であることが分かったという。また、“UDデジタル教科書体”でデジタル媒体と紙媒体での見え方を比較した場合、僅かではあるがデジタル媒体の方が有意だったという。
中野教授は最後に、弱視生徒に対するデジタル媒体活用について、「紙媒体だと近づいて見るという方法だが、これには限界がある。デジタル媒体では“拡大”とい方法がありとても効果的だ。また、読み上げという音声によるサポートも可能だ」と、可能性の大きさを述べた。
“UDデジタル教科書体”は、6月中旬から、教科書メーカーや教育委員会、学校などに提供を開始する予定。カスタマイズも可能だという。
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