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2017年8月14日

徹底討論「松田 vs 平井 vs 参加者」の至極妥当な結末

総合的な学習の時間を中心に「プログラミングを学ぶ」を実践してきた小金井市立前原小学校の松田 孝校長と、教科において「プログラミングで学ぶ」を追求してきた元古河市教育委員会 指導課 平井聡一郎課長(現 情報通信総合研究所 特別研究員)が、「~未来のまなびプロジェクト~夏の緊急職員会議 2017 実況中継!」というイベントで激突するというので出かけてみた。

ロボホンと登場した松田校長

ロボホンと登場した松田校長

結論から言うと、激突はしなかった。しかし、貴重な体験と知見を参加者に提供する場となった。対立軸が成立しなかった原因は、教育委員会という公的な縛りが無くなって平井氏から肩の力が抜けたのと、「やればやるほど、このやり方だけが正しいなどと言えなくなった」という松田校長の「プログラミングやり過ぎ症候群」だと推測される。あくまで推測である。

お盆休み中の12日、場所は東京の下町、東陽町にある複合施設東京イースト21 ビジネスセンター2階シネックスインフォテックの特設会場。参加定員30名は、告知直後に満席になった。

「夏の緊急職員会議 2017」は、松田校長の語りとシャープのモバイル型ロボット電話「ロボホン」のダンスの共演でスタートした。

松田校長は冒頭の挨拶で、「学習指導要領」でプログラミングの必要性が明確に示されているにもかかわらず、いま小学校の現場のプライオリティ(優先事項)は「英語」「道徳」「アクティブ・ラーニング」であり、プログラミングはまったく登場してこない、と嘆いた。それは何故なのか、「何も無い」からだ。人も物もノウハウも情報も学校現場に無い。それを少しでも埋めようというのが、今回のイベントの趣旨である。

平井の「アンプラグド」教材WS

平井氏の「アンプラグド」教材WS

午前中のプログラム第1部「教材研究」の冒頭、平井氏は「学習指導要領の実施は2020年だが、2018年から移行措置期間がはじまる。あともう7カ月ない。環境を整えるのは自治体の役割だろうが、現場ではリーダーを作らなければならない。今日集まった先生方は、リーダーとなる気概のある方々だ。持ち帰って広めて欲しい」と、奮起を促した。

「教材研究」では、平井氏から「アンプラグド・プログラミング」とプログラミング学習ロボット「Sphero SPRK+」が、松田校長からはビジュアルプログラミング言語の「Viscuit」と「Scratch」が紹介され、参加者はワークショップで実際の授業内容を体験した。

井上准教授の「特別講演」

井上准教授の「特別講演」

午後の第1部は、駒澤大学経済学部の井上智洋 准教授による特別講演「人工知能は未来の経済・社会をどう変えるか?」。第4次産業革命の時代と云われる現代、ロボットや自動運転車などのスマートマシーンが社会を変えようとしている。第1次~第3次までの産業革命で日本は中心的な役割を果たせなかったが、AIを中心とした第4次産業革命ではどうか。日本はものづくり大国だと云われるが、ソフトウェアの分野で世界に置いて行かれるおそれがある。その原因は、「日本人はITが苦手」だということ、そして「知的好奇心がない」ということ。その一例として、技術分野の論文数が減少し、米国や中国に差を広げられている現状を示した。

こうした現状を踏まえて井上准教授は、「日本の教育には転換が必要だ」と強調。悟性(論理的な思考を行う能力・知力)と感性(物事を心で感じ取る能力)を育む教育が必要だとして、「悟性を育むプログラミング教育は、いわゆる文系の人にも必要だ」と、プログラマー育成のためではない「プログラミング教育モデル」の必要性を力説した。

3部の討論会

3部の討論会

第3部は、徹底討論「プログラミング教育を実践するため課題と対策」と題した討論会。しかし、プログラミング教育の現状の共有というニーズが高いのか、プログラミング教育の事例発表、課題共有という至極妥当な内容で推移した。

以下、参加者の意見・感想を紹介する。

私立教員:「プログラミングは教科の中ではやりにくい。我が校では“情報科”で計画しているが、“プログラミング”という教科があればやりやすい」
小学校教員:「アニメーションなどを使って小1の国語でやったが、やりやすかった。図工では、キャラクターを動かした。家庭科では、料理の手順をアルゴリズムに見立てて、アンプラグドをやった」
mirai-7小学校教員:Scratchを使い小4の算数で「たて、よこ、たかさ」をやった。民間企業の協力を得て、連携してやったので実現した」
小学校教員:「予算がないという話を聞くが、本校では教育財団の指定校になって200万円の支援を獲得した。テーマにプログラミングは入っていないが、主題の能力育成にプログラミングを活用すると云うことで関連の教材を揃えることが出来た」
私立中高教員:「系列の大学生を呼んで小学生の学校見学時にロボットを使ったプログラミング体験をやってもらっている。学校内の力だけでは、プログラミングに取り組むのは難しい」
小学校教員:4年前から一人で取り組んできたが進まなかった。校長が替わって『ヤルゾー』となって一気に変わった。トップが替われば学校が変わる」

討論会の松田校長(左)と平井氏(右)

討論会の松田校長(左)と平井氏(右)

松田:「教員の力で校長を変えることは出来ない。しかし、やっているという事実を積み上げて、子どもの学びの姿を見てもらえば考えが変わることもある。大変だけど、諦めないで欲しい」
平井:「ICTやプログラミングに取り組む先生は、孤立することもあるだろうが“早すぎるかなあ”などと気にしないで、モデルを作り楽しい学びの姿を見せて欲しい」

その他、多数の意見が出されたのは、学校や地域による“格差”の問題だった。ICT環境にしても、人材や機材にしてもその差が大き過ぎるということ。それを埋めるのは、もちろん国や自治体によりる支援であるが、企業や地域との連携を実現するために教員や学校側からも積極的なアプローチやアイデア出しが必要だということだった。

実はこのイベントには、ビデオカメラが入っていて、もしかしたら番組として放送されるかもしれないという前提があり、参加者の過激な発言をセーブしたのかもしれない。

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