2017年9月4日
立場を越え、分かち合って共創する「Classi FAN-MEETING」
ファンミーティングと言えば、人気歌手などがファンとの交流を目的に集まる会として聞くことが多い。8月25日、東京・ベルサーレ新宿グランドカンファレンスセンターで開催されたのは、学校の未来や新しい学びを共創するためのイベント「Classi FAN-MEETING」。
この日、会場に集まった“ファン”は、「Classi」を活用しているユーザーの教員や生徒、パートナー企業など100人以上。学校のICT活用に関心が高い「Classi」を取り巻くステークホルダーが一堂に会した。
「Classi」は、ベネッセホールディングスとソフトバンクの合併会社であるClassiが提供する学習支援クラウドサービス。2015年に正式な提供をスタートし、8月現在、導入学校数は2000校以上、77万人を越える生徒が利用している。
イベント冒頭、Classiの加藤理啓代表取締役副社長は、「人口減少時代」「100歳寿命時代」「シンギュラリティ(AI時代)」の3つをキーワードに、「これまで誰も出会ったことのない能力を持った何かと一緒に生活する時代がやってくる」とこれからの未来を表現した。
「2007年にiPhoneが登場して10年。それまでのPC以上の性能を持ったスマートフォンが今はポケットに収まっている時代。今からの10年は今存在しないものが圧倒的な価値を持って生まれる可能性もある。何が起こるのか全くわからないが、子どもたちには未知の状況であっても対応でき、学んだことを活かせる『人と生きる力』を身につけてほしい。人にしかできないこと、それは人と学ぶことで、それが学校ではないか」と述べた。
そして「共創」をテーマに、2018年4月から提供開始する新サービス「Classiプラットフォーム」を発表。教育改革は目前、未来を感じる同士として、教員やパートナー企業などさまざまな人の意見を得ながら、よりよい教育に向けてともに歩みたいと呼びかけた。
「Classiプラットフォーム」は、教員・生徒・保護者とパートナー企業の間をつなぐサービス。「英語4技能学習」、「アクティブ・ラーニング/PBL」、「プログラミング」、「部活動」の4ジャンルでパートナー企業と連携し、幅広く学習活動をサポートしていく。ユーザーである教員や生徒は、1つのClassi IDで各社が提供する教育サービスを簡単に利用できるようになる。利用するには、Classiにログインし、Classiトップページのリンクからパートナー企業のサービスを選択するだけ。新たなIDやパスワードを作成する必要なはい。また、IDの連携だけでなく、同意をした上で、Classiに登録された生徒のユーザー情報・グループ情報をパートナーのサービスでも参照できる。これにより、クラスなどの生徒情報を再度登録することなく、パートナーのサービスでも課題の出題や学習の管理が簡単に行えるようになる。
英語4技能学習では、約1万4000本の動画教材で学べる「EnglishCentral」、CNNのニュースで最新の話題や言葉を生の英語で学べる「CNN ENGLISH EXPRESS」。アクティブ・ラーニング/PBLでは、協働学習ツール「schoolTakt (スクールタクト)」。プログラミングでは、環境構築なしで学べる「Monaca (モナカ)」。部活動では、コーチングのための映像編集・コミュニケーションツール「SPLYZA Teams (スプライザ・チームズ)」といったラインナップ。今回、先行して提携したパートナー企業は5社。パネルディスカッションでは、コードタクト、EnglishCentral、朝日出版社、SPLYZA、アシアルの各社が登壇し、「Classiプラットフォーム」で提供するそれぞれのサービス概要を紹介した。
イベント後半は、この日のメインである、参加者全員・全18チームによる共創ワークショップが行われた。Classiを日常的に使っているアンバサダーの教員、一般ユーザーの教員・生徒、パートナー企業、Classiスタッフというチーム構成。
はじめに「ICTを使って良かったこと」を模造紙に書き出していく。スタートから間もなく、「記録の蓄積」、「生活に計画性が出てきた」、「個々の生徒の情報把握」「生徒・保護者とのコミュニケーション」「アンケート等の省力化」「授業展開の効率化・多彩化」などさまざまな意見が記入された。なかには「年配の先生がICTを使うことで生徒が驚く」といった内容も。
次に、「10年後の先生」と「10年後の生徒」をテーマに、まずは一人ブレスト。一人ひとりが考えを付箋に書き出し、その後、順番に内容を発表しながらチームで共有していく。各チームのテーブルを覗いてみると、実に興味深い言葉が書かれた付箋が次々と模造紙に貼られていた。
「10年後の先生」については、「教壇がなくなり教室の真ん中にいる」、「AIと共同作業の就業形態」、「ファシリテーションスキルの重要性が高まる」、「肩書きの変化」など。「10年後の生徒」については、「バーチャルな世界でトレーニング」、「世界中の人と協働」、「机がキーボードとディスプレイ」、「体にICチップ的なものを入れて、もはやスマホすらない」など。教員の役割が変わっていったり、AIが広がることを前提にしている意見が多く見られた。
日々感じている現実的なこと、こうできたらいいなと思うことなど、共感の言葉が重なったり、思わず拍手が出たり、どっと笑いが起きたり。意見交換の活発さの証か、席を立ち上がる人の姿が目立った。
ワークショップの最後には、アイディアを全体に共有したいというチームが登壇。学びのスタイルが変わることで、教員の役割が知の創造をサポートすることになるのではないかという考えや、いつでもどこでも学べる環境が整うことで、10年後の生徒は知識を得ようとする意識の違いによって、学力の二極化がさらに広がるのではないかとする意見をチームの代表として高校3年生が発表する場面もあった。
全体の振り返りとして、Classiの井上寿士取締役は、「教員・学校の役割が変わっていくかもしれない、ただ学校の重要性はなくならない。日々うっすらと感じていることをより強く認識できた日になったのではないか」と述べ、「この先、教員と生徒のつながりがいろいろな角度や形で増えていくと感じている。今日の温かい雰囲気の中で、これからもさまざまな人と共創し、子どもたちによりよい学びを届けたい」と締めくくった。
ここに集まったのは、次期学習指導要領を踏まえ、これからの教育のあり方を見据え、ICTを活かした新しい学びについて具体的に動き出している人々。井上取締役の言葉のとおり、会場は終始温かな雰囲気でありながら、参加者の誰もが活発で、ワクワクした感覚を持ちあわせ、情熱的だった。学校や企業など、立場を越え、それぞれの専門性からお互いに働きかけ、共創が進むことがますます期待される。
ICTは学びの可能性を支えるのに欠かせないツール。学校でのICT活用を通して、時代にマッチした良質な学びを一つでも多く子どもたちに届けるための準備が急務と言える。
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