2019年1月30日
昭和小学校、全普通教室で超短焦点プロジェクター「ワイード」と学ぶ毎日
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東京都世田谷区に校舎を構える昭和女子大学附属昭和小学校は、こども園から大学院までがワンキャンパスの中にあり、都心にありながら落ち着いた環境が広がっている。
現在、同校の全ての普通教室の黒板で日々活用されているのが、サカワが提供するウルトラワイド超短焦点プロジェクター「ワイード」だ。導入の経緯や授業での使用法、教師や児童の反応など、同校 教頭・教務部長の渡邉直人氏と教諭の相原史隆氏に話しを伺った。
同校では、15年ほど前にインターネットのライブカメラでロンドンとつないで授業をしたり、コンピュータ室を設けたりと、ICT活用の先駆けともいえる教育に従来から取り組んでいる。そうした流れの中で、8年前から書画カメラや50インチプラズマモニターなどを普通教室に導入。その他、Wi-FiをはじめとしたICT環境も徐々に整備してきた。
モニターは当初、書画カメラの映像を映し出すために使用していたという。その後、3年前に全教員43名に1人1台iPadを付与し、モニターを活用して授業を行っていたが、後ろの席の児童には画像や文字が見づらいなどの困難が生じた。
渡邉教頭は、「特に低学年では、子どもを前方に移動させるだけでもざわついたり時間がかかったりしました。また限られた45分の授業時間で、できるだけ見やすいようにモニターの角度を変えたり、倍率を上げて見せたりと、工夫していました」と当時を振り返る。
「教科書やプリント類を大きく映し、そこに児童に書き込ませたいという先生たちからの声も上がるようになりました。50インチでは小さいし、モニターは上方に付いているので届かない。そうした理由からプロジェクターを検討することになりました」と相原教諭も続ける。
多機能な電子黒板を検討しなくはなかったという。しかし、それほどの授業展開があるかどうか。むしろ使い勝手がよく、短焦点かつ大画面で投影でき、その映像に対して書き込みできるものが、まずは教師たちの要望として高かった。
7年前に電子黒板を扱うほぼ全ての企業を訪ねたという相原教諭は、「各社にいろいろ相談するなかで、サカワの『SMART Board』という電子黒板を見て使えそうだなと思いました。しかし、先生たちの要望にピッタリはまらず、その際は見送ることに。その後、2016年の教育ITソリューションEXPOで『ワイード』をはじめて見ました。映像を左右に動かせるのは良かったのですが、当時は曲面黒板に非対応で、2画面別系統出力もできなかった。それが2017年にその2つともが改善され、ついに導入する時期が来たと思いました」と導入の経緯を説明する。また、2017年度には児童用のiPad60台を購入。児童たちの画面を複数映し出すのにもプロジェクターの必要性を感じていたという。
ウルトラワイド超短焦点プロジェクター「ワイード」は、黒板全体に投影ができる。対応画面サイズは最大140インチ。アスペクト比は16:6と非常にワイドだ。従来の16:9や4:3での投影も可能で、映し出したい内容によって使い分けができる。これだけの大画面だが、壁からプロジェクターまでわずか58.6cmの距離で投影。まさに超短焦点である。曲面黒板にも対応。湾曲した面に投影した際に発生する歪みを補正できる。
取材時、実際に「ワイード」から投影された黒板の画像を教室の後方から見たところ、教室の広さが標準の1.5倍あるという同校だが、後ろからでもよく見えるうえ、大画面のため迫力もあった。
「ワイード」には、投影画面を左・中央・右へとリモコンでスライドできる「デジタルスライド機能」がある。プロジェクター自体を移動させる手間がなく、レール等の取り付け工事も不要。たとえば、国語では投影画面を左側に配置し板書は右側から、英語や算数では反対に、投影画面を右側に配置し板書は左側からといったように、投影位置を手軽に操作できる。
さらに、2系統同時出力が可能。左右に別々の映像を出力できるため、たとえば「PCと実物投影機の画面を並べる」「児童の回答を並べる」「デジタル教科書と写真を並べる」など、2つの異なる系統の画面を左右均等に分割し同時に表示する機能や、メインの大きな画面の中に小さな独立した領域を設けて別系統の映像を出力する機能もある。
同校では前述のとおり、「映像を左右に振れる」「曲面黒板に対応できる」「2系統の画面表示ができる」ことが決め手となり、2017年12月と2018年3月の2期に分けて「ワイード」を導入。現在、18ある普通教室の全てに設置し、全学年で使用している。50インチプラズマモニターも並行して使用。たとえば、鮮明な映像を映したい時はモニターで、画像を大きく提示したい時にはワイードでといった具合にしている。また、授業内容によってワイードとモニター両方の2画面を使うこともあるという。
「校内で研究授業を年5回行い、授業で使うアプリケーションなど教師同士での学び合いや情報共有をしています」また、「ICT機器はツールの一つ。算数の図形などは全体に提示して説明することで具体的に捉えやすくなりますし、国語は詩の鑑賞において児童が言葉からイメージしづらいような実物を見せることもあります。つまり、内容によってこの部分はICT活用でより授業が効率良くなる、児童にわかりやすく視覚化できるといったことで使用します」と渡邉教頭は児童の立場に立ったICT機器の活用という考えを示していた。
若手の教師から、iPadで作った資料やネット検索、動画の利用などが広がり、現在は、教科の特性を活かして、書画カメラから徐々にICT活用にシフト。今の時代に合う教材を開発しながらの授業展開になりつつある段階だという。
次年度は新たに児童用iPad60台の導入を予定。これにより計120台となり、3クラス分の台数になる。相原教諭は、「従来は聞くだけのスタイル。今は、たとえば5年生の算数での答えの求め方であれば、自分の回答を他の児童に説明するという場面をつくることで自主性が出てきたり、低学年でも自分でまる付けをさせることで間違いに気づかせたりできています」と子どもたちの学びの姿勢にも変化が見て取れるという。
教師からも好評の声が上がっている。黒板の左側に問題を書いておき、中央に映像を映し出し、そこに児童が問題を解いて書き込み、右側にまとめをするなど、黒板を分割した活用などわかりやすい授業展開も可能になっているという。
「ICT機器を過信し過ぎないことが必要かなと思っています。ただ、授業を深くするためのツールとして使っていきたいです」と相原教諭。渡邉教頭も、「こうした機器が出る前であっても、先生方は日々、教材研究、教具開発をなさっていたはず。その中の一つに今のICT機器が加わったという感覚で捉えると、授業の中で使える部分を基本に、それが子どものためになればという発想になる。本校も今そういう気持ちで取り組んでいます」とICT活用の心構えを語った。
時代に適した授業スタイルを常に模索する同校。2020年には100周年を迎える。現在、普通教室での「ワイード」との学びの毎日は、児童の好奇心やモチベーションを引き出したり、内容の理解の助けになったり、深くわかることの楽しさにつながっているようだ。
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