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2020年6月12日

教員コミュニティMIEE Talks@Admin.による『ICT活用教育実践』第1回英語

【寄稿】
第1回:堀尾 美央先生 (滋賀県立米原高等学校) 専門教科:英語

『英語×ICTでつながる世界』

「英語の魅力を教える」

私がICTを最も活用している場面は、英語の授業で、諸外国との繋がりをつくる部分です。昨今では「グローバル化」という言葉とともに、英語も、従来の読み書きから、話したり聞いたりする力も含め、実践的に使える英語が求められることが多くなっています。しかし、授業の時間内のみで英語を習得することは不可能です。だから、「英語を教える」というより、「英語の学び方を教える」ことが求められていると感じています。

しかし、その背景には、「なぜここまでして、英語をやるの?」という疑問もついてきます。「英語は将来の役に立つ」とはよく言われますが、だからといって、誰もが英語の勉強に励むというわけではないのが現状です。日本にいる限り、英語がなくても日常生活は過ごせます。しかし、仮に使わないとしても、英語が私たちにどういった可能性を与えてくれるのか、英語を学ぶことがどう日常生活に繋がるのか、それを伝えることも大切ではないでしょうか。だから、私は英語の学び方を教えると同時に、「英語の魅力を教える」ことを目指しています。そして、その英語の魅力の1つに、「母国語が違う相手ともコミュニケーションを取れること」があると考えています。

「リアルタイムでお互いの国を当て合う交流学習 ミステリースカイプ」

では、いざ外国と繋いでも、何をするかが決まってなければ何もなりません。「ミステリースカイプ」は、接続先の生徒がどこの国の人たちなのか知らせないまま、Skypeをはじめとしたテレビ電話ツールで諸外国と自分の生徒を繋ぎ、英語で質問をし合って、相手がどこの国にいるのかを当てる交流学習です。質問は、「Yes / No」で答えられるもののみで、Skype in the Classroomのウェブサイトで紹介されています。この授業では、基本的に教員はファシリテートに徹します。機器操作、相手が話した英語のパラフレーズやリピート、こちらの英語がうまく通じなかった時の対応などです。事前学習等でやり方を学び、ファシリテートする度合いを変えることで、小学生でも中学生でもできます。

この活動は、英語学習だけではなく、「コミュニケーションとは何か」について考える良い機会にもなります。普段の英語の授業では、コミュニケーションとなると、「読む・聞く・書く・話す」の4技能とは言いつつ、どうしても「話す」「聞く」に集中しがちです。ですが、テレビ電話ツールを使ったコミュニケーションでは、「読む」「書く」もフルに使ってコミュニケーションを行います。時差の関係上、接続先が英語圏でない場合が圧倒的に多く、相手にとっても英語が母国語ではないので、音声のみに頼るコミュニケーションは、ファシリテートにまわる教員側にとっても、比較的難易度が高いものとなるからです。

ですので、質問をする時でも、うまく通じない場合は質問をカードに書いて相手に見せます。すると相手側も「ああ、なるほど!」と理解した表情を見せてくれますし、それを見ると、こちらも「あ、通じた!」と嬉しくなります。逆に、相手の英語の訛りが強くてわかりづらい時、質問内容を書いて見せてもらうと、こちらも読んで簡単に理解できます。英語を通して、全く母国語が通じない相手と、お互いの表現したいことが通じた瞬間を共有して体感できるのが、この取組の魅力です。

「アメリカの高校生とのバーチャルペンパルプロジェクト」

また、英語を話したり聞いたりするのは好きだけれど、文法や単語を覚えるのが苦手だという生徒たちに対し、アメリカの同年代の高校生たちとの交流プロジェクトも行いました。メールではなく、手紙をアメリカの高校生と交換し、同時に動画での交流も行うものです。

動画交流には、Flipgridというアプリケーションを使用し、動画をアップロードする先のコードは、アメリカ側の先生にも知らせておきます。そこに、まず、日本の生徒たちが自己紹介動画をアップロードします。自分のパートナー(アメリカの相手)の名前を紙に書き、それを見せながら、「私があなたの相手です!」といった自己紹介動画を作ってアップロードします。その後、アメリカ側からは届いた手紙を手にした生徒たちが、同様の自己紹介動画がアップロードしてくれます。そのほか、学校の様子を撮影して交換したり、アメリカ側からは簡単な流行りのスラングが紹介された動画も送られてきました。もちろん、やり取りは全て英語ですが、リアルタイムでの交流と違い、事前にしっかり練習して取り組めるため、ハードルはやや低くなります。

「英語×ICTで広がる可能性」

インターネットが発達し、情報へのアクセスが容易になった今、文化圏や言語の異なる人たちと容易に繋がれる可能性が多く生まれました。これまで30カ国ちかくの国と繋いできましたが、情報技術が発達していなければ不可能だったと思います。そして、こういった人たちと繋がることは、英語学習のみならず、異なる言語や価値観を持つことに対する理解にも繋がります。

英語教育においては、英語力を伸ばすという目標はよく聞きますが、生徒は「なぜ英語を学ぶのか」という英語学習の目的についても疑問を持ちます。ICTの活用は、英語力を伸ばす学習面のみならず、そういった英語学習の目的を伝えることにも力を発揮します。そして、いずれは生徒達自身が、自分達自身でこの問いに対する自分の考えを持てるようにサポートしていくのも、これからの私たちにとって大事なことではないでしょうか。

《筆者プロディール》
堀尾 美央(ほりお みお)
滋賀県立米原高等学校 教諭
2016年よりマイクロソフト認定教育イノベーター、
Skype Master Teacher
2016年度JICA主催グローバル教育コンクールにて理事長賞受賞。
2018年12月、イギリスのバーキー財団主催、教育界のノーベル賞と呼ばれるGlobal Teacher Prizeの最終候補50名の1人に選ばれる。

イラスト:Atelier Funipo

《MIEE Talks@Admin.とは》
テクノロジーを教育に活用する全国の教員による有志のコミュニティ。『大人も子どももワクワクする学びの創造』をモットーに、ワークショップやセミナーなどを精力的に行っている。

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