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2020年9月29日
IBS、「オンライン授業で外国語の発音指導の可能性」を発表
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(IBS)は25日、特にオンライン化が困難と思われる発音指導に注目し、オンライン外国語指導のあり方を発表した。
ポイント1は、「外国語の音声は視覚情報と共に聴くと習得に効果的」。周囲が騒がしいときなど、話している人の顔の表情や口の動きといった視覚情報によって、聞き取りやすくなることがある。これは外国語の発音指導にも当てはまり、教師が発音する際に、口の形を同時に見せると指導上効果的だという。
これを示す音声学の理論の一つに、「マガーク効果 (McGurk Effect)」がある。提唱者のMcGurkら(McGurk & MacDonald 1976)は、協力者が「ba」「ga」「pa」「ka」という4つの音を発音するのを録画。音声と映像を切り分け、以下の表のように合成した刺激を作成し、これらに対する反応を3~5歳、7~8歳、18~40歳の3つの群で検証。
この結果で最も知られているのが、音声が「ba」、発音する口の映像が「ga」のときに、全ての年齢群で、「ba」でも「ga」でもなく「da」を聞いた被験者の割合が一番高かったこと。聴覚が視覚の影響を受け、音声の知覚が変化していた。このことは、外国語の音を視覚情報と共に聴いた人が、習得に効果的であるということを示唆しているという。
ポイント2は、「母語に存在しない音&区別されない音の違いを認識」。発音指導では、学習者の母語に存在しない音や、母語において区別されない音の違いを認識させるのも教師の重要な役割。日本語の母音はアイウエオの5つだが、英語には10を超える母音がある(母音の数は方言によって異なる)。このため例えば英語では異なる音であるfatherとmotherが、日本語では「ファザー」、「マザー」と同じ「ア」の音に書き起こされる。
ウェスタンシドニー大学のCATHERINE BEST教授はこれを、外国語では異なるカテゴリーに属す音が、話者の脳内で母語の音に「同化する(assimilate)」と表現し、Perceptual Assimilation Modelというモデルを提唱。L・RやB・Vなどの音の違いとは異なり、英語の母音は綴りから予測されにくいため、英語の音のカテゴリーを認識せず、母語の音として知覚してしまい、それが、正しい英語の発音の習得の妨げに。
この「間違い」の矯正には教師による発音矯正等のフィードバックが不可欠。中高生以上であれば、以下のような母音表を見せながら指導すると効果的。口の開きの度合いや舌の位置を意識しながら正しい音を聴いたり自分の発音を確認したりすることを何度も繰り返すと、発音が改善する場合がある。
では、教師の存在が不可欠である発音指導分野をオンライン化する際はどうかというと、ポイント1の「音を聴く際の視覚情報」は、オンライン環境でも大部分が再現可能。
ポイント2の「発音練習の際の教師のフィードバック」に代わるものとしては、自動音声認識システムがある。未だ開発の余地があるものの、現在提供されているオンライン発音矯正システムの中には、上述した口の形などに関する明示的なフィードバックを与えるものも。
これからの外国語発音指導は、教員が一人ひとりの学習者に対して行うものから、各々の学習者に提供されるソフトウェアやアプリを利用したものに、また、授業時間に行われる「指導」から授業時間外に自主的に行われる「学習」に変化していくという。
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