2022年3月3日
「マインクラフトを活用した(SDGsに関連した)PBL学習」/大森学園高等学校
【寄稿】
「マインクラフトを活用した(SDGsに関連した)PBL学習」
大森学園高等学校 情報科:杉村 譲二
コロナ禍の状況の中で、大森学園高校(畑澤正一校長 生徒691人)は、校内には無線LANを配備し、2021年度入学生から全員1人1台端末としてiPadを持たせた。
また授業支援アプリの「MetaMoJi Classroom」を導入し、生徒・教師間で双方向のやり取りが可能となった。さらに単焦点型プロジェクターとスクリーン、AppleTVが全教室にある。
マインクラフトとPBL学習を導入した経緯
「情報の授業で、大森学園としての特色を出した授業をしたい!」と思ったのがきっかけでした。現在、私は高1の「情報の科学」と高3の選択科目「PC活用講座」を担当しています。これまでこの「PC活用講座」の授業では、P検(ICTプロフィシエンシー検定試験)の対策講座をしていました。その中でMicrosoft Wordの文書作成やMicrosoft Excelで関数を用いた表計算を中心に授業をしていました。
この内容もICT活用能力を向上させることにつながることになり、とても大切なことです。しかし情報科の向かうところは資格取得が第一ではありません。(個人的には、座学に新課程の内容を先取りしていましたが)私自身、来年度から新課程になるのに、このまま旧態依然したアップデートされない授業ではいけないと問題意識がありました。
逆に、これまで情報科の授業で取り組んできたこと全てが悪いとは思いません。しかし、新しい取り組みをしていかないと生徒のためにもならないし、学校も発展していかないと感じました。なかなか実技教科の側面が強いため、PBL学習や探究系の取り組みをどのようにしたらいのかと考えていました。
また色々な学校の先進的な取り組みを目にします。それはその学校のやり方や魅力なので良いと思います。例えば、タイピングや基本的な表計算は特に授業では行わずに、統計などの処理を学習する学校もあると思います。そこで「自分の学校では?」となった時に、その学校の事例をそのまま取り入れるのではなく、自分の生徒や学校の状況や段階も含んだ上で授業設計をするべきだと思います。
このような思いの中で、まずはこの高3の選択科目で新たな取り組みができないかと考えました。その中で「プログラミング」「統計」「情報デザイン」といくつか候補をピックアップし、「プログラミング」に決定しました。
そこからプログラミングということで、言語は「ビジュアル型」と「テキスト型」とありますが、現高3は、旧課程のためプログラミング初学者のため「ビジュアル型」から入ることにしました。
色々と調べていく中で、私がマイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)であるため、MIEE同士が情報交換できる中で「マインクラフト」の情報があり、そこに着目しました。
マインクラフトに関して何か参考となる事例がないか調べたところ、事例の多くが小学校や総合的学習時間であり、情報科の授業での事例が多くありませんでした。さらに授業設計をしていく中で、悩みがありました。それは最終的にテストにどのように落とし込むか?成績評価は?ただマインクラフトを操作させるだけになると意味がないのでは?という悩みです。
テストや成績のための授業ではないし、やる前から無理と決めつけても何も進まないと思いました。まずは、やってみよう!そこから見えてくるものがあるし、やりながら軌道修正していけばいいと思い臨みました。そこからマインクラフトをもとにPBL学習をどのようにして入れるかを日々考えました。
マインクラフトはゲームの側面が強い。いかにコーディングの部分を強調して生徒に学習させることができるかを悩みました。このような点に悩んでいる時に、MIEEの方々やマインクラフターとして有名なタツナミシュウイチ先生や立命館小学校の正頭英和先生にアドバイスをいただきました。
そして、色々と構想を練る中で、マインクラフトで何か建築物をつくろうと考えました。しかしただつくるだけだと、マインクラフトのための授業になってしまう。何か大きな目標を設定して、プログラミングをしようと考えました。
マインクラフトとPBL学習を組み合わせた手ごたえ
そもそも写経のように黙々とプログラミングをしても生徒のモチベーションは上がらないことが予測されたので、建築物を効率的に建てることを通してプログラミングを学習していくことにしました。また本校の生徒を見たときに「真面目」「ボランティアに積極的に取り組む」「掃除にしっかりと取り組む」このようなことがうまく本校の建学の精神につなげることができればと考えました。
それではこの生徒に取り組ませたい授業設計のイメージとマインクラフトをどのようにして結びつけることができるかを構築していきました。そこでSDGsやESD、自分たちの通学する大田区の問題解決をしてみようと閃きました。
具体的には、(企画書参照)SDGsの11番目の目標にある「住み続けられるまちづくりを」を達成するために「こんな建築があれば私たちが住む大田区はもっと良くなる」ということをテーマに学習を進めていくことにしました。少しずつ描いてきたイメージが具現化してきました。
最後に、「AI GROW」というツールを使ってフィードバックをしました。ただ感想をアウトプットしただけでなく、コンピテンシーを多面的に評価して可視化し合うことにも取り組みました。
この授業を通して生徒に伝えたいことは、「新しく何かクリエイトする力」や「問題発見および解決能力」をつけることです。そのためにこれまで培ってきた教科の知識・ICTの力を使って、目の前の問題に対して、どう使って、どのように考え、どのように自分たちで結論や代替案を導き出すのかをすることを目指しています。そうすることで、ただ高校で教科の知識を教科書通りに学んだということだけでなく、それが高次な学びへとなり、今後に生かすことへとつながっていくのだと私は考えます。
それがこのPBL学習では、本校の建学の精神「社会に貢献できる有為なる人材の育成」につながり、工業高校が前進であるが、これをバックボーンとして、現代の生徒への学びへとつなげていくことが、大森学園で学ぶ1つの意義であり、生徒像であると考えています。またこの学年は旧課程だが、高等学校→大学、さらには社会人へとつながる学習にしていきたいです。この先全員が情報系の学部に進むわけでもないし、将来プログラマーやSEなどの職につくわけではありません。しかしやらないので必要がないのではなく、色々と学習してきたことが今後の自身の学びや仕事において何らかの素地となっていくはずです。
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