2022年12月26日
児童が主体的に学ぶ自由進度学習〜社会とシームレスにつながる学校をデザイン/ 名古屋市立矢田小学校のQubena活用事例
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名古屋市では、「ナゴヤ・スクール・イノベーション」で子ども一人一人の興味・関心、能力・進度に応じた「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図る教育改革を推進している。名古屋市立矢田小学校は2019年からモデル実践校に指定されており、PBL(Project Based Learning)とタブレットPCの活用を核とした個別化・協同化・プロジェクト化した学びを実践。その中で児童が主体的に学び、考えを深める自由進度学習に取り組んでいる。
AIが子どもたち一人一人の習熟度に合わせて最適な問題を出題するQubena(キュビナ)を手段のひとつととらえ、取り組む教材選択についても子どもたちにゆだねる、一歩進んだ自由進度学習の様子を紹介する。
一斉授業からの転換 PBL型の学びには自由進度学習が欠かせない
2019年、名古屋市では従来型の一斉授業からの転換に取り組み始めた。当時はQubenaも導入されておらず困難はあったが、新学習指導要領の主旨やGIGAスクール構想の狙いとも一致しており決して突飛なことではなかった。山内彰一教務主任は振り返る。
PBL型の学びを実現するためには、自由進度の学びが欠かせない。児童らが決められたことを一斉に学ぶ従来の授業に対して、複数の多様な教材やツールをパーツとして揃えておいて、何で学ぶのか、何が必要なのか、児童が主体となって選べるのが矢田小で行っている自由進度学習だ。2021年、名古屋市内の全校に導入されたAIドリルQubenaは、その揃えたパーツの1つに位置付けられる。教科書、紙のドリル、プリント、他のデジタルドリルとパーツが並ぶ。児童が主体的に、自らの学びに責任を持って選べるように、同じようなものばかりを複数並べるのではなく、それぞれに特徴的で多様なツールを揃える必要があるのだという。AIが児童の習熟度に応じて個別最適な問題を出すQubenaは期待通りだと山内教務主任はうなずく。
2年生算数 自由進度学習 〜九九(七の段)
実際の授業の様子を紹介する。2年2組の算数の授業は、児童らが全員で前回覚えた六の段を元気に唱えて始まった。「今日は七の段です。7ずつ足していってもよいし、九九づくりや練習問題など、できる人はどんどん進めていってください。もう始めている子もいますね。」担任の中川大輔教諭が朗らかに話し始めると、児童らは待ちきれないようにそれぞれ手を動かし始める。算数の授業は最初にポイントを解説したら、あまり制限せずに多くの時間を自由に自分で教材を選び学べる時間にあてているという。「1つのやり方だけでなく、いろいろやってみましょう。」と声をかける。
◆指示がなくても自由に工夫し学ぶ児童
授業の前半は机に向かって教科書やプリントで九九暗記に集中する児童が多い。しばらくすると自由に席を立ち始める児童も増え、自主的に多様な学びに取り組み始めた。集中して紙のドリルに取り組む姿、九九問題が書かれた紙のカードをカルタのようにして3、4名で競い楽しみながら取り組む姿、覚えた七の段を中川教諭の前でチャレンジしてシールをもらう姿、Qubenaに取り組む姿など様々だ。特に指示を出さなくても自発的に学びを発展させる児童らの様子が印象的だ。
中川教諭は必要に応じて声をかけながら児童らの席を回る。一斉授業より目配りが必要な児童が分かり、個別対応もできるため全体の学力が向上しているという。
2年生になって自由進度学習を始めたばかりのころは、何をしたらよいのか立ち止まる児童や適切に選択できない児童も多かったというが、その都度丁寧にアドバイスを繰り返してきたことが現在の成果につながっているのだろう。
◆多様な教材を組み合わせて学ぶ
「Qubenaは簡単な問題もあるし、簡単ではない問題もあるし、ちょっと難しい問題もあるから楽しい。」という児童の声があった。派手な演出はないが、昇順・降順・ランダムのような単調な九九問題だけではない点を好む児童も多いようだ。
例えば、『5個ケーキが入った箱が6箱あります。全部で何個?』といったシンプルな文章問題、式を答えさせる問題、『1箱増えました。増えたケーキは何個?』といった読解力が必要な問題など多様だ。うっかり読み間違えて解答を誤ると同様の問題が続く。次の問いでは正解して画面に大きな丸が表示された。児童が自信を持ち満足気に学び進む様子が伺えた。
別のデジタル教材に取り組む児童は、九九問題に挑戦して正解するとゲームのキャラクターを集められる演出が魅力的だと笑顔を見せる。単調な暗記を演出で飽きさせない教材、良質な問題で力を伸ばすQubenaなど、児童らは自ら複数種類の学びに取り組む。特徴的で多様な教材を組み合わせて学ぶ効果は大きいだろう。
6年生算数 自由進度学習 〜拡大図と縮図のかき方
6年2組の算数は、図形の拡大図と縮図のかき方を理解することがめあてだ。
『拡大図と縮図のかき方は合同な図形のかきかたににているよ。忘れてしまっている人は、Qubenaで復習するといいよ!(5年生)』と教室の前面に大きな文字が投影された。
担任の石田圭以輔教諭は、児童が作図方法を自ら考え、理解を深められるように授業を進めていく。教科書やQubenaなど児童は思い思いに学習ツールを選んで自由に使う。できたらどんどん学び進めて理解を深めるようにと促すと、独自の作図問題を考えて取り組むグループまで現れた。理解を深めるために何をすべきか考えるよう、常日頃からアドバイスをしているという。
考えた作図方法は必ず友達と互いに説明しあって間違いがないかをしっかり確かめ合うようにと指導する。児童らは席を立ち、友達に説明をしたり相談をしたりしていて活気がある。広いスペースでゆったりと学べるようにとA、Bの2教室を使い児童らは自由に行き来していた。6年生は自ら動いて主体的に学ぶという姿勢がしっかりと身についている様子で振る舞いも自然だ。
◆学年縦断の復習で底上げ、全体の学力向上を実現する
Qubenaは、学年を縦断して復習できる点もメリットだと石田教諭はいう。拡大図と縮小図を書くには5年生範囲の「合同な図形」の知識が必要だ。Qubenaは全学年の問題を搭載しているため、忘却していて復習が必要な児童は自分のペースで復習することができる。一斉授業だと覚えていて必要のない児童も説明を聞かなければならず退屈するし、じっくり時間をかけて復習が必要な児童も切り上げなければならないことがあるだろう。それぞれのペースで理解度や進度に応じて学べるので学力が底上げされ、成績上位層も先に学び進むことができて伸びる。自由進度学習で差ができるのではないかと懸念を耳にすることもあるが、決してそのようなことはなく全体の学力向上につながると石田教諭は力を込めた。
社会とシームレスにつながる、子ども中心の学びのために
「子どもの主体性を一番大切に考えている。自分が何を活用し、どのように学ぶのか自由に児童が選ぶということは、自分の学びに自分で責任を持つということだ。もちろんできない部分や必要な部分は教員がフォローするのだが、児童は責任を転嫁せず自分で考えて選択することが大事だ」と、山内教務主任が語る。そこには子どもたちが社会に出た時に困ることがないようにしたいという非常に強い思いが込められていた。学校だけが護送船団方式のように足並みをそろえることばかり重視していては社会とのシームレス化は実現できない。社会に出て困らない子どもの主体性を育てる、子ども中心の学びを実現するための学校全体のデザインを、矢田小学校全教員で主体的に考え情報を共有し合い、推し進めている。
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