2019年9月5日
iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第16回】社会とつながる授業
iPadで時空を超えろ!社会とつながる社会の授業づくり
教育ICTコンサルタント 小池 幸司
「わが校でも来年度から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。導入までの残された期間で、授業での使い方を考えておくようにとのこと。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。ICTが得意でない先生が、タブレット端末を用いた新しい学びを始める際に知っておいてほしいこと、具体的な活用方法をわかりやすくお伝えしていきます。
もし授業でドラえもんのひみつ道具が使えたら?
ICT(情報通信技術)を使う一番のメリットはなんでしょうか。もちろん、答えは1つではありませんが、「時間と空間を飛び越えられる」ことはICTだからこそ得られる大きな利点と言えます。スマホの普及で全世界に広まったSNSは、まさにその代表格。SNSでつながっている友人と数年ぶりに会ったとき、「久しぶりに会った気がしない」なんて経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
「時間」と「空間」を飛び越えられるということは、ドラえもんの「タイムマシン」や「どこでもドア」を持っているようなものです。これを学びに生かさない手はありません。そして、このICTの特性を最も生かせる教科といえば・・・そう、社会です。「タイムマシン」で歴史上の人物に会ったり「どこでもドア」で海外の名所を訪ねたり。想像するだけでもワクワクしてきますよね。
もちろん、いまの科学技術では実際に時空を超えられるわけではありません。でも、iPadのようなデバイスが1台あれば、それをバーチャルで体験することが可能です。紙に書かれた文字や写真だけでは得られない「体験」を手にすることができるのです。そこで今回は、社会の授業、特に地理分野におけるiPad活用の可能性について考えていきたいと思います。
基礎知識のインプットはゲーム感覚で楽しみながら!
「地理」への学びを深めていく上で、まず押さえておかなければならないのが県名・国名といった基礎知識。これが覚えられずに地理が嫌いになってしまう子も少なくありません。逆に言えば、県名・国名が楽しく覚えられるようになれば、地理を好きになる子が今より増えるのではないでしょうか。
そこでまずご紹介したいのが、都道府県をゲーム感覚で覚えることができるiPadアプリ「あそんでまなべる 日本地図パズル」。都道府県のピースを組み合わせるパズルの知育教材がありますが、あれをデジタル化したアプリです。シリーズで「あそんでまなべる 世界地図パズル」も出ています。
また、リズムにあわせて都道府県を覚えることができる「地図エイリアン~都道府県を記憶せよ~」もおすすめです。いわゆる“音ゲー”の一種ですが、お手本と同じ順番で都道府県をタップしていくというシンプルなルール。やってみるとわかりますが、テンポのいいリズムのおかげで自然とのめり込んでしまいます。
ステージをクリアしたときのアクションや、カードをコレクションできるしかけなどゲーム的要素も満載。ゲームと聞くとマイナスの印象をもつ先生もいるかもしれませんが、授業以外の時間に子どもたちが自ら勉強してくれるわけですから、こんな便利な教材を使わない手はありません。
デジタル地球儀を使えばクラスみんなで地球を共有できる
続いてご紹介するのは、地球儀をデジタル化したアプリ「i地球儀」。帝国書院さんが開発したアプリなので信頼性という点でも安心です。アナログの地球儀のように壊れる心配もありませんので、気が済むまで地球をぐるぐる回すことができます。
またデジタルならではの機能として、日本と同緯度の国を探したり、日本やグリーンランドと重ねて面積を比較できる機能も付いています。メルカトル図法で描かれた紙の地図帳を使うより、正しい地理感覚をもつことにつながるかもしれません。
そして、デジタル地球儀の最大の利点はプロジェクターや電子黒板に投影して共有できること。社会の授業以外の時間にも「i地球儀」を投影しておいて、「子どもたちがいつでも国を探したり調べたりできるようにしている」という話をある小学校の先生から聞いたことがあります。「いつでも世界の国々に触れられる教室」ってちょっといいと思いませんか。
【本日のワーク】「Google Earfh」で空中散歩をしてみよう!
今回のワークでは「Google Earth」でバーチャル空中散歩を体験してみたいと思います。道を調べるときなどに「Google マップ」をスマホで使っているという方も多いかと思いますが、まったくの別ものです。初めて「Google Earth」を使う方はきっとビックリするはずですよ。
アプリを起動すると宇宙空間に青く輝く美しい地球が現れます。左下に並ぶアイコンの中から、灯台の地図記号のようなアイコンをタップしてみましょう。宇宙空間からズームしていって、今いる場所の上空へと導いてくれます。これだけでも天空から舞い降りたような感覚になりますよね。
基本操作の練習がてら、上下左右に移動したり、ピンチアウト(ピンチイン)で拡大(縮小)したりしながら、上空からの景色を楽しんでみてください。最初は真上から見た2D表示になっていますが、左下にある「3D」のアイコンをタップすると、上空斜め上の視点(バードアイ)に切り替えることができます。
基本操作がわかったら、左上の虫眼鏡のようなアイコンをタップしましょう。検索バーが表示されますので、勤務校の学校名を入力してみてください。すると現在地から学校上空へとひとっ飛び。上空から見た学校の姿をひとしきり眺めたら、最寄り駅までの「バーチャル散歩」を開始したいと思います。
まずは、上空10メートルくらいの位置になるように拡大してください。そして記憶の中のルート通りに、学校正門を出て駅へと向かいましょう。交差点では、2本指でクルッと回すようにすると視点を回転することができます。駅前までたどり着けたら、左下にある人の形をしたアイコンをタップ。近くの道路部分を選択するとストリートビュー表示に切り替わり、地上へと降り立ちます。
iPadは社会と教室をつなぐ窓。教室を飛び出して世界へ
「Google Earth」を使ったバーチャル空中散歩、楽しんでいただけましたか。今回のワークでは学校名を入れてもらいましたが、検索ワードを「自由の女神」や「ピサの斜塔」などとすれば、一瞬にして世界の名所を訪問することもできます。こんな便利な道具を地理の授業で使わない手はないですよね。子供たちの世界を広げ、外の世界への興味関心を引き出す授業。iPadを使って、ぜひ子供たちを外の世界へと連れ出してもらえたらと思います。
【筆者プロフィール】
小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)
2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。NPO法人 iTeachers Academy 事務局長。
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