2022年7月21日
一斉授業もツールの一つと捉え Qubenaを活用した自由進度学習にチャレンジ/美祢市教育委員会
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日本最大級のカルスト台地である秋吉台に代表される自然豊かで美しい地域であり日本ジオパークにも認定されている山口県美祢(みね)市。美祢市は小学校が11校、中学校は6校で、そのほとんどが小規模校だ。小学校は、複式学級がある学校も半数あり、小規模校のメリットを最大限生かし、人が育つ、人が輝く教育の美祢の基本理念のもと、3つのチャレンジを掲げ日々の教育活動を進めている。その1つが、個別最適な学びと協働的な学びの推進であり、AI型教材Qubena(キュビナ)を活用した自由進度学習に市内各校でチャレンジしている。美祢市教育委員会 学校教育課の大坪伸彰 指導主事、美祢市立大田小学校の磯部達志 教諭、倉永由起子 教諭に話を聞いた。
実証実験の高評価でQubenaの全校導入を決定
2020年7月、美祢市教育委員会ではGIGAスクール構想により1人1台端末が導入されるにあたって、AIで個々に応じた学びが展開できるQubena(キュビナ)の導入を検討。EdTech導入補助金事業を活用した実証実験を行うこととし、8月には、各小中学校の研修担当とICT担当に向けた研修会を開催した。COMPASSの担当者が美祢市を訪れ、Qubenaについて説明を行い、教員たちにも実際に操作してもらった。9月には端末整備も完了し各学校において実証実験を開始した。
大坪指導主事は導入経過について「先生方からQubenaについての理解が得られるのには、少し大変だった面もありましたが、実際に使用した後のアンケート結果における、児童生徒、教員双方の高評価を受けて、2021年4月から、5教科での導入を決定しました。90%以上の子どもたちがわかりやすい、今後も使いたいと、肯定的な回答をしています。また、教員の評価においても、肯定的な回答が多く見受けられ、授業改善と業務改善の有効なツールとなっていることがわかりました。」と振り返る。
ただし、Qubenaの活用はすぐに進んだわけではなく、学校間や教員間でも活用率に差があったという。そこで、年3回の学力向上推進委員会ICT活用研修会で、Qubenaについて
の研修を行った。その他、管理職向け、教員向けのオンライン研修や学校を訪問しての研修の研修を行った。その他、管理職向け、教員向けのオンライン研修や学校を訪問しての研修等、研修の場を多く作ることで、Qubenaの良さや活用方法、操作方法を周知してきた。なぜQubenaを使うのか、どのように活用するのかを説明し、多くの教員の理解を深めていった。
Qubenaを活用した「自由進度学習」にチャレンジ
研修の結果や、前向きに活用していている教員たちの努力で、各校において、朝学や放課後学習、家庭学習、授業での導入や復習など、様々な場面での活用が進んできた。そこで、今年度はさらに活用を一歩進め、Qubenaを活用した自由進度学習にチャレンジすることにしている。
大坪指導主事は自由進度学習に取り組む意味について、「従来の授業は、一斉スタイルありきで構想し、教員が決めた問題を、決まった時間で取り組むというものでした。ただそれは、みんなが同じことができるということに価値がある時代に必要であったスタイルであり、これからもそのスタイルが最適であるわけではありません。これからの授業に求められるのは、児童生徒が主体的に学びに向かい、他者と協働しながら、自分の学びをマネジメントしていくようなスタイルだと考えています。」と、一斉授業のその先を語る。
要は、一斉授業も一つのツールとして考えるということであり、美祢市では、より柔軟な授業スタイルを作っていくために、目的から授業スタイルを考え、授業のあり方を問い直すという教員の意識改革を掲げている。1人1台タブレット端末を活用し、テクノロジーの力を借りて、教員も児童生徒もより力を発揮できる授業作りを目指すということだ。
そして、そのためのツールとして、Qubenaが大変有効であるという。授業作りにおいて、AIに任せられるところはAIに任せることが大事。また、データを蓄積して活用していくことはAIの得意分野であり、AIに任せることで、教員は教員にしかできないことに力を注ぐことができる。
これまでの教員の経験や知恵にプラスして、AIやデータを活用することで、授業改善が進んでいく。知識技能の習得において、これまで教師が力を注いでいた部分をQubenaに任せることで、教師が力を注げる部分が変わり、授業改善が進むという。
大田小学校での自由進度学習の実践事例① 3時間構成の中でQubenaを活用
美祢市立大田小学校では今年度の取り組みに先行し、2021年度の3学期に、市の教育委員会からQubenaを活用した自由進度学習の提案があり高学年で取り組むことにした。
磯部教諭が取り組んだのは、6年生のまとめの単元で算数パスポートというところ。時数は18時間で、「数と式」「見積もりと計算」「図形と量」「変化と関係」「データの活用」「問題の見方考え方」、これらを3時間ずつで構成したもの。3時間の構成は、1時間目は予習として、自己評価のためのテスト教材で今の自分の実力の把握を行う。そして答え合わせをした後に学習の計画を立てる。2時間目は自由進度学習ということで、教科書、計算ドリルプリント、Qubenaの学習教材から自分で選択して自分のペースで学習していく。3時間目は、その項目に関する応用問題を事前に解いてきて班で話し合って全体で交流する、という流れで行った。
2時間目の自由進度学習は、「教材別にグループ分けした方が勉強しやすい。」という子どもたちからの要望を受けて、教材別にグループを作って学習を進めた。そうしたことで、わからない部分をホワイトボードに書いて説明し合うという姿も見られるようになったという。
初めて取り組んだ自由進度学習について磯部教諭は、「成果としては、教材を自分で選ぶことによって、意欲的に学習する児童が増えたということ。それから教材別の班学習で、お互いに質問がしやすくなったということ。タブレット端末を必要に応じて効果的に活用し始めたということです。課題ですが、大変よく集中するのはいいのですけども、ちょっと静かになりすぎて質問がしにくいということがありました。私は今年も6年生を担任しておりますけども、実際にやってみますと、単元によっては、これは有効だなと思う部分があります。特に計算に関する単元は、非常にいいなと思っているんですが、図形に関するところについては、一斉で進めた方がやりやすいかなというふうには感じています。これからも研究していこうと思っています。」と、自由進度学習へのチャレンジを続けると語った。
大田小学校での自由進度学習の実践事例② 1時間授業の中でQubena活用
倉永教諭の実践事例は、5年生の「速さ」という単元の6時間。児童は13名と少ないが学力格差があり、算数科に対する意欲にも学力にも差があって対応に悩んでいたという。そのときに教育委員会から薦めがあり、意欲向上を狙って自由進度学習に取り組んでみた。
学習教材には教科書に加え、Qubena、やまぐちっ子学習プリント(県教委作成)を選んだ。Qubenaは、一人でも学び進めることができるようにスモールステップになっており、一つずつクリアすることで達成感を味わうことができ、算数が苦手な子どもにも取り組みやすい教材。また、やまぐちっ子学習プリントは、ステップ1から4と段階的に難易度を上げているので、どこまで理解できるのか確認できる。その2つを教科書にプラスした。
倉永教諭は1時間授業の流れの中に自由進度学習を組み込んで実施した。まず最初に前時の振り返りを10分。続いて基本問題で学習する内容のポイントを示す。その後に、個々でめあてを決めてもらう。新しい内容に進んでもいいし、前の学習をもう少し深めたいという子がいればそれについてもめあてのところに書いてもらい、この時間で自分がやらなければならないことを子どもたち自身が決めていく。
続いて、めあて達成のための学習方法を3つの教材から自分で選び、自由進度学習を進める。この取り組みを20分位行い、最後に5分で振り返りの時間をとって、どんなことがわかったか、どこがわからなかったかを自分の言葉で書く。このような流れで授業を進めた。
初めて取り組んだ自由進度学習について倉永教諭は「自分で学習方法を選択できることで、学習意欲が高まりました。また、いろいろな問題を解くことができるという点でも学習意欲が高まりました。分からない問題について自然に聞き合ったり話し合ったりするようになりました。それも、自分から聞くという意欲的な面が見られました。Qubenaについては、個々で異なる理解できていない点を、個別に復習することができました。既習事項についてできていないところをもう一度学び直せたという点では、大変ありがたい教材かなと思いました。」と、成果を語った。
もちろん初めての取り組みということで課題もあるが、それぞれの教材の良さを上手に子どもたちに伝えながら使っていけば自由進度学習は魅力的だと倉永教諭はまとめた。
大坪指導主事は、Qubenaを活用した自由進度学習について、「自由進度学習といっても、進め方はいろいろあり、大田小学校の取り組みをヒントに、現在、市内で自由進度学習の取り組みが広がってきています。Qubenaを活用する狙いが明確な授業作りや、教科書やプリントと日々併用するような、より柔軟な授業スタイルやその他の学習活動が進んでいます。美祢市では個別最適な学びを実現し、子供たち一人ひとりが社会に出たときに活きて使える確かな学力の定着を目指して、今後もQubenaを有効活用していきたいと考えています」と、美祢市全体の取り組みを進めていく考えを語った。確かに新しい学びの第一歩が始まっているようだ。
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