2019年7月1日
iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第14回】ICTで変わる数学
「解ける数学」から「使える数学」へ!iPadで数学の授業は変わる!?
教育ICTコンサルタント 小池 幸司
「わが校でも来年度から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。導入までの残された期間で、授業での使い方を考えておくようにとのこと。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。ICTが得意でない先生が、タブレット端末を用いた新しい学びを始める際に知っておいてほしいこと、具体的な活用方法をわかりやすくお伝えしていきます。
数学嫌いの生徒が口にする“あの疑問”がICT導入でなくなる?
「なんで、こんな勉強しなきゃいけないの?」勉強嫌いの子が一度は口にする言葉です。あなたならこの疑問になんと答えますか。もちろん、いろいろな返答方法があり、どれが正解ということはありません。でも一番大切なのは、こんな疑問の声が出ない授業をすることではないでしょうか。
そもそも、子どもたちはなぜこのような疑問が抱くのでしょう。勉強する意味が見出せない。実生活とのつながりが感じられないことが主な原因です。そしてこの疑問、教科別に見ると数学の授業で上がる頻度が比較的高いような気がします。実際、数学に対して「お勉強」という負のイメージを持つ子は少なくありません。
そんな数学ですが、ICT導入をきっかけに大きく変わろうとしています。授業見学に行ってみると「えっ、これがホントに数学の授業!?」と驚くような光景を目にすることが増えました。今回はそんな分岐点にある数学の授業で、ICTがどのように活用できるかを考えていきたいと思います。
高校数学で増加中の「教えない授業」とは!?
都内のある私立高校で目にした数学の公開授業の様子をご紹介したいと思います。座席はグループ形式に並べられ、生徒たちは1人1台のiPadを手に授業を受けています。先生が例題を示したあと、指名された生徒が思いつきの数値を当てはめた問題を出題。生徒たちはグループで話し合いながら正しい解答を導き出していきます。
ここで大活躍したのがiPadの電卓アプリ。あらかじめ整った解答が出るよう用意された問題ではないため、手計算ではとても追いつきません。電卓アプリは生徒が自分で気に入ったものを使用。中にはiPadに加えて関数電卓を手にしている生徒も目につきます。グループでの作業が進んでいくと、あちこちから「エラーが出て計算できない」という声が・・・。どうやら桁数が多すぎて普通の電卓では計算できないようです。
そんな中、ある男子生徒がiPadの画面を得意げにグループのメンバーに見せています。その生徒のiPadを覗いてみると、使っていたのは「My Script Calcrator」というアプリ。本連載の第4回(欲しい機能を追加!App Storeでアプリをインストールしよう)でもご紹介した手書き電卓アプリです。他の生徒たちも「なにそのアプリ!?」と興味を持ったようで、あっというまにクラス中に広まりました。
・MyScript Calculator:App Store
生徒が出題者になるだけでなく、解き方まで解説するという授業スタイルも増えてきています。このような授業を実現するには、あらかじめ生徒が解法をインプット(=予習)している必要があります。自宅で解き方を学習しておき、授業ではアウトプットする。いわゆる「反転授業」と呼ばれる授業方式です。
数学の授業はこの「反転授業」との相性がいい教科と言えます。解説部分を映像化しやすいというのがその大きな理由です。数学の場合、解法自体が大きく変わることはないため、解説動画を一度作ってしまえば、翌年以降も使い回すことが可能です。また、「Explain EDU」のようなアプリを使えば、iPad1台で音声入りのオリジナル映像教材を作ることができます。
小学算数では「体感」できる授業がポイント
それでは、小学校の算数はどうでしょうか。基本的な概念の習得が必要な算数では、インプットを効果的にするためのICT活用がおすすめです。「時速20kmで兄が弟を追いかける」「混ぜ合わせて濃度65%の食塩水を作る」などなど、好き嫌いが出やすい算数の授業。ICTを活用して子どもたちの興味を引き出せる時間にしたいですね。うまく活用するためのキーワードは「体感」です。
例えば、イメージづくりが大切な図形の授業に、ICTはもってこいのツールです。特に空間図形は紙の教科書だけで教えるのが難しい単元の1つ。紙の模型を作ろうとすると授業準備の負担が大きくなってしまいます。そこで「Shapes」というiPadアプリを使ってみてはいかがでしょうか。
角柱や角錐、回転体や正多面体といった立体を自由に回したり、展開して見せたりすることができます。また、面を透明にして辺や頂点だけを強調させるといったデジタルならではの見せ方も可能です。
・Shapes – 学ぼう ~3D幾何学~:App Store
苦手な児童の多い「比例・反比例」や中学数学の「一次関数」「二次関数」の授業には、「Geometry Pad+」というアプリがおすすめです。
あらかじめ用意しておいた関数のグラフをプロジェクターや電子黒板に投影したり、変数を変えてグラフの変化をその場で見せたり。1人1台のiPadがあれば、自分でいろいろなグラフを描くうちに、数式とグラフの関係性を体感的に身につけていくことができます。
なお、2020年度からの学習指導要領の大きな変化である「プログラミング」は算数との相性がバッチリです。例えば、実生活と結びつけることが難しい「変数」の概念などは、ゲームを作る際に「スコア(点数)」のプログラムを書くことで、体感的に学ぶことができます。
【本日のワーク】禁断の数学アプリを体験しよう!
今回のワークでは、先生たちにぜひとも知っておいてもらいたいアプリをご紹介します。その名は「Photomath」。中高生の多くが自分のスマホにダウンロードしているアプリでありながら、先生たちにはあまり存在が知られていない“禁断の数学アプリ”です。計算問題が載っているプリントや問題集をご用意の上、アプリをダウンロードしてみましょう。
用意ができたら使い方はいたって簡単。アプリを起動しカメラのアイコンをタップ。iPadのカメラをかざして計算問題をガイド(長方形)の枠の中に収まるように表示させましょう。ガイドは大きさを変更することもできます。
ピコッという音とともに解答が表示されましたでしょうか。このアプリ、小数・分数を含めた四則計算はもちろんのこと、指数の入った文字式の計算、方程式や不等式、さらには高校レベルの計算まで対応しています。さらに活字だけでなく手書きの問題まで読み取って解答してくれるというすぐれもの。これがあれば、計算問題の宿題がすぐに片付いてしまいそうですね。
「いや、宿題では途中式も書くように指示してるから大丈夫」という先生、表示された解答の右側にある「→」をタップしてみてください。何が表示されましたか。そう途中式、しかもご親切に解説つきです。こんなアプリが無料でApp Storeに並んでいて、目の前にいる生徒たちのスマホに入っている。その事実をぜひ先生たちには知っておいてほしいと思います。
日進月歩で進化するテクノロジー。求められる数学力とは?
禁断のアプリ、体験してみていかがでしたか。このアプリの存在を知って、「けしからん、使わせないようにしよう!」と考えるか「これを使えば生徒が自分で答え合わせまでできる」と捉えるか、それは先生たちしだいです。テクノロジーはすでにここまで来ています。そんな社会で生きていく子どもたちにどんな学びを与えていけばいいか。他の先生たちと一緒に「Photomath」を触りながら意見交換してみてはいかがでしょうか。
【筆者プロフィール】
小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)
2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。NPO法人 iTeachers Academy 事務局長。
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