2020年11月4日
iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第30回】ICTで暗記を効率化(後編)
暗記は隙間時間に!ICTを使ってインプットを効率化(後編)
教育ICTコンサルタント 小池 幸司
「わが校でも来年度から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。導入までの残された期間で、授業での使い方を考えておくようにとのこと。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。ICTが得意でない先生が、タブレット端末を用いた新しい学びを始める際に知っておいてほしいこと、具体的な活用方法をわかりやすくお伝えしていきます。
覚え方の押しつけが「◯◯嫌い」を生み出す?
学生時代、嫌いな勉強ってありましたか? 私は小学生の頃、漢字の勉強が大嫌いでした。大量に出された「漢字の書き取り」の宿題が終わらず、叱られながら泣く泣くやった光景が、そのときの腕の痛みとともに記憶に残っています。それ以来、漢字そのものが嫌いな子になってしまいました。
一方、英単語を覚えるのは好きでした。「(インク残量が見える)透明の青ボールペンで何度も書いて覚える」という方法を知ったのがきっかけです。インクが減っていくのがうれしくて何度も書いているうちに、英単語を覚えるコツが身についていきました。単語力がついたことで英語の成績も上がり、おかげで英語という教科自体が好きになりました。
書いて覚えるという方法は同じなのに、なぜこのような差が出たのでしょう。インプット自体を楽しめたこと、自分でその方法を選択できたことが大きかったのだと考えています。先生として教える側に立ってからも、「こんな暗記の方法があるよ」と紹介することはあっても、強制することは決してしないよう心がけてきました。
これはデジタルになっても同じです。前回ご紹介したデジタル単語帳アプリにしても、合う子も言えばそうでない子もいるはずです。そこで今回は、暗記(インプット)に使えるおすすめアプリをいくつかご紹介したいと思います。授業前後や授業中の隙間時間、家庭学習用で活用すると効果的ですよ。
iPadで楽しく覚れば「漢字博士」がもっと増える?
まずは、漢字を楽しく覚えられるアプリを2つご紹介します。1つ目は「小学生手書き漢字ドリル1026」。小学1年生から6年生までで習う全1026漢字を学習できるアプリです。メニューは学年ごとに分かれていて、1回につき5問ずつ出題される形式。問題文で伏字になっている漢字をiPad上に手書きで書くと、すぐさま正解・不正解が自動判定されます。
続いておすすめするのは「まなニャン 漢検 小学校修了程度」というアプリ。漢検5〜9級レベルの漢字を学ぶことができます。メニューは漢検の級ごとに分かれていて、「読み方」「書き取り」「筆順」の出題形式に対応。一度に10問ずつ出題されます。正解すると「まなニャン」に魚やちくわを食べさせることができます。
どちらのアプリもイラストやBGMが凝っていて、漢字が苦手な子でもゲーム感覚で飽きずに学べるよう工夫されています。漢字プリントに向かってひたすら書き続けるよりも長続きしますし、なにより楽しくインプットできるはずです。
算数好きへの分岐点!「九九」をマイペースで学習
算数でも計算手順や公式など、覚えないと進まない単元があります。中でも「九九」は最もインプットが求められる難関の1つ。人より早く覚えられれば自信につながりますが、覚えるのに時間がかかる子にとっては、算数嫌いのきっかけになってしまうかもしれません。
そこでおすすめしたいのが、カード形式で九九を覚えられるアプリ「9×9カード」。表面に九九の問題、裏面にその答えが書かれているというシンプルなアプリです。また九九の読み方(6×9:ろっく / 54:ごじゅうし 等)が書かれているのが特徴。読み方の変更もできるため、学校で習う読み方に合わせるといったカスタマイズも可能です。
覚えられたら「九九チャレンジ」でトレーニング。「だん」を選んで(「4のだん」以上は要課金)テストしたり、「だん」をまたいで10問ずつテストしたりすることができます。さらに「タイムアタック!」モードでは、答えた時間を記録。一度覚えたあとでも最短記録をめざして何度もチャレンジできます。
【本日のワーク】中高生に人気の「暗記シート」をiPadで
赤や緑の透明シートで答えや重要語句を隠して学習する暗記シート。専用のペンや参考書なども製品化され、いまの中高生にとっては定番の暗記ツールとなっています。この暗記シートをアプリ化したのが「イルカの暗記シート」。50ページまでは無料で利用することができます。
まずは解答部分が空欄になっている問題プリントをご用意ください。赤ペンで解答を書き込んだらiPadで写真に撮りましょう。続いて「イルカの暗記シート」を起動して、右下の(+)ボタンをタップします。「画像ファイルの取り込み」をタップして写真を選択すると「ブック」としてアプリに保存されます。
保存された「ブック」を開いてみてください。画面下半分に問題プリント画像が表示され、その上に赤い透明シートが重なった状態で表示されます。赤字で書いた部分(=解答)が消えているのがわかりますでしょうか。「赤字解析機能」により、赤い文字や線が表示されない仕組みになっています。
通常、赤シートを使うときにはシートの方を動かしますが、「イルカの暗記シート」では教材の方を動かします。教材画像を画面の上の方にスワイプすれば赤字部分が表示され、答え合わせができます。赤シートの上部中央部分を上下に動かすことで、赤シートの大きさを調整することも可能です。
続いて、画面の一番下にあるペンの形をしたアイコンをタップしてみましょう。色ペンやマーカーなどのツールバーが表示され、書き込み可能な編集モードに切り替わります。次にツールバーの一番右のアイコン(Aの上に赤い四角)を選択して、重要な用語をマーカーで塗りつぶしてみてください。
画面左下のアイコンをタップして編集モードを解除し、マーカーで塗りつぶしたところを見てみましょう。
赤シート上では塗りつぶされて読めなかった語句が、赤シートエリア外では表示されるはずです。アプリ上で隠したい部分をマーキングして隠すことができるので、書き込みがむずかしい教材で学習するときに便利な機能です。
根性論からの脱却。方法の選択肢を示せることが大切
「漢字の書き取り」は何のためにするのでしょう。「体で覚える」と言いますが、嫌々くり返すだけの単純作業にどれほどの効果があるのかは疑問です。書いて覚えること自体を否定しませんが、子供たちが新しい漢字を覚えることに喜びを感じ、楽しく学べることの方が大切です。iPadを使えば覚え方の選択肢が無数に広がります。いろいろな方法(選択肢)を示すことこそ、子供たちの可能性を広げることにつながるのではないでしょうか。
【筆者プロフィール】
小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)
2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。NPO法人 iTeachers Academy 事務局長。オンラインショップ「先生のためのICT活用塾」を運営。
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