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2020年10月26日

時間と距離の課題をクリアして、島しょ部の生徒たちに刺激と交流の機会を――東京都教育庁 ICT活用事例

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新しい出会いの機会が少なく、進路を考える際の参考になる情報もなかなか得られないなど、島しょ部の教育現場は様々な課題を抱えています。現在、東京都では、こうした島しょ部の課題を解決するためにチャレンジが行われています。活用しているのは Cisco Webex Board。ディスプレイを通じて、リアルタイムかつ双方向のコミュニケーションを行える環境によって、様々な可能性が見えてきています。

島の中だけで完結してしまいがちな生徒たちの世界を、ICT の力で広げてあげたい。刺激を与え、可能性の扉を開くような場にしたいと考えています。
東京都 教育庁 都立学校教育部 高等学校教育課 計画総括担当 石田 元 氏

近年、教育の現場では、ICT が欠かせないインフラとなっています。大学では、学生がスマートフォン、タブレット、ノート PC などのモバイルデバイスを持ち、図書館や教室など、学内の様々な場所から自由に無線 LAN に接続。講義に関する情報を確認する、クラウドを通じてレポートを提出する、あるいは遠く離れた大学の学生と交流したり、講義を受講したりするなど、大学生活の様々な場面で ICT が活用されています。

このような教育における ICT 活用のニーズは、小・中・高校教育の現場でも着実に高まっています。文部科学省が「GIGA スクールネットワーク構想」を掲げて、1 人 1 台の端末、高速大容量の通信ネットワークの一体的な整備のための予算を投入することを決定したことは、その大きな証しといえるでしょう。

課題
島しょ部の特殊な環境が学びと成長に大きく影響

東京都の教育庁でも ICT を活用して、教育現場の課題を解決しようというプロジェクトが始まっています。具体的には、島しょ部における教育格差の解消です。

東京都 教育庁 都立学校教育部 高等学校教育課 計画総括担当 石田 元氏

東京都の島しょ部には、大島の大島高校、大島海洋国際高校、新島の新島高校、神津島の神津高校、三宅島の三宅高校、八丈島の八丈高校、小笠原の高校と 7 つの都立高校があります。島外とは物理的に隔絶された特殊な環境にあるため、島しょ部ならではの課題があるといいます。

「例えば、島の高校の生徒たちは、ほとんどが小さいころからずっと一緒に勉強や運動をしています。強い絆が生まれるなど、よい面もありますが、関係性が固定的で刺激が少ないという面もある。複数の中学校から生徒が集まってくる島外の高校では、入学後に新しい同級生たちとの出会いや競争がありますが、島では、ずっと同じメンバー。勉強や運動が得意な子に対して、最初から『あの子にはかなわない』という思いを抱きやすく、競争環境で切磋琢磨することさえ難しいといわれています」と東京都 教育庁の石田 元氏は言います。

東京都立三宅高等学校 副校長
矢島 定章氏

他にも、塾、予備校に通うには船や飛行機を使わなくてはならず、コストや時間を考えると現実的ではないなど、島外では当たり前のことも島しょ部では簡単には行えません。三宅高校の副校長である矢島 定章氏は、こうした現実に様々な課題があると言います。

「生徒たちが日常的に受けられる教育の機会を、島の生徒たちが得られないのは大きな問題です。また、島外の高校の場合、学力レベルが近い生徒が集まりますが、島の高校は生徒の学力がまちまち。カリキュラムの組み方も異なります。さらに、卒業後の進路を考える際も、島の狭い社会には将来の自分を投影できるロールモデルが少なく、進路という面でも大きな課題だと感じています」。

ぜひ生徒たちの自由な発想で Webex Board を使いこなしてほしい

ソリューション
誰でも簡単に使えて導入のハードルが低い

現在、このような島しょ部ならではの課題を解決するために活用されているのがシスコの Cisco Webex Board です。

これは、デジタルホワイトボード、4K ディスプレイ、ビデオ会議端末の 1 台 3 役に使えるコミュニケーションデバイス。ホワイトボードには付属のペンや指で簡単に書き込みができる上、その内容は自動的にクラウド上に保存され、いつでも参照できます。しかも、Webex Board 上で資料を共有したりしながら、同時に書き込みを行っていくことも可能。ピンチイン/アウトやズームなどの操作も双方向で行えます。

また、ビデオ会議は、4K カメラや高感度マイクを通じて品質の高い画像と音声で行える上、発言者に自動でズームしたり、音量を自動で調節したりして目の前で対話しているような環境を実現します。

「イベントで実機を操作させてもらったところ、誰でも簡単に扱えるよう設計されており、教育現場への導入ハードルは低いと感じました。それぞれの島の高校をつなぎ、リアルタイムかつ双方向なコミュニケーションを行えるようになるだけでも、状況は改善できると感じました」と石田氏は話します。

提案時には、ICT で教育の課題を解決したいというシスコの担当者の熱意も強く印象に残っているといいます。

「実際に島を訪れて学校に足を運び、教員や生徒からいろいろな話を聞きながら『何ができるのか』を一緒に考えてくれました。ここまでやってくれるのかと強い感銘を受けました」(石田氏)。

結果~今後
7つの高校の生徒がティスプレイを通じて交流

現在、島しょ部の 7 つの都立高校では、Webex Board を活用した様々な実証が進んでいます。まず挙げられるのが、島しょ部の 7 つの都立高校の生徒が集まり、研修や情報交換を行う「島しょサミット」での活用です。このイベントは、各高校が持ちまわりで主幹を務めて開催されており、第 1 回は大島高校、第 2 回は小笠原高校、そして第 3 回は三宅高校が担当校でした。第 1 回、第 2 回と Webex Board を設置した後に行われた第 3 回では、企画プロセスに大きな違いがあったそうです。

島しょサミットの様子

「これまでは、準備段階から頻繁に顔を合わせて相談することは難しく、担当教員同士が電話やメールで打ち合わせを行い、サミット開催当日に最後の打ち合わせを行ってから、実際の催しに移っていました。しかし、Webex Board を活用したことで、7 校の担当教員や事務局を務めた生徒が事前に顔を合わせたコミュニケーションを行い、その段階でほとんどの準備を終えることができました。スムーズな運営につながったのはもちろん、生徒同士があらかじめ顔を知っているということは非常に大きく、会話も弾み、それぞれの島の成り立ち、文化風習があること、そして、そこには自分たちと同じ世代の生徒がいることなど、島しょサミットに参加する意義を、より深く考えるきっかけになったようです」と矢島氏は言います。

様々なコミュニケーションにCisco Webex Board および Webex DX80 を活用

キャリア教育の面でも可能性を感じさせる取り組みが行われました。

島の生徒たちに、将来なりたい職業を聞くと「学校の先生」と答える生徒が多いといいます。これは、生徒にとって、自分の身近にいる職業人が、両親や親戚を除くと学校の先生くらいしかいないことからだと推察できます。

「社会にはいろいろな職業、生き方があることを知ってほしい。そこで、シスコの営業担当者の方に講師となってもらい、Webex Board を通じた授業を行ってもらいました。日々の仕事の内容、求められる資質などについて話してもらったのですが、島の生徒たちが IT 企業の方とふれあう機会はめったにありません。大学で何を学び、どんなキャリアで入社し、今どんな仕事をしているか。そういう話を直接聞くだけでも大きな刺激になるし、視野が広がるきっかけになったはずです。こうした取り組みは、今後も継続的に行っていきたいと思います」と石田氏は話します。

他にも、八丈高校では、Webex Board で教員と島外のスクールカウンセラーがコミュニケーションをとり、カウンセリングの充実を目指しています。

会議参加のための移動など、教職員の負担軽減にも期待

Webex Board を有効活用して、教職員の業務効率化にもつなげたいという期待も高まっています。島しょ部に赴任した教職員は、会議などに参加するために定期的に都庁などに足を運ばなければなりません。特に遠方の島の場合は、定期便の運航の関係で数日がかりの旅程となる場合もあります。このような会議に Webex Board を活用することで、コストや時間の節約、教職員の負担の軽減につながると考えられるからです。

実際、矢島氏が中心となり、7 校の副校長同士のミーティングを Webex Board で開催しました。「実際に顔を合わせるには大変な手間がかかり、電話やメールでは細かなニュアンスが伝わりません。Webex Board なら、7 人それぞれのちょっとした表情の変化や声のトーンまで把握でき、理想に近いコミュニケーションができたと思います」と矢島氏は語ります。

教育庁には、デスクトップ型のコラボレーションデバイスである Cisco Webex DX80 も導入されており、Webex Board だけでなく、これらも併せて利用することで、より柔軟に日々の打ち合わせや会議を開催できると考えています。

国内外の高校と交流する町田工業高校

島しょ部の高校以外でも Webex Board の活用が進んでいます。東京都町田市にある町田工業高校は、3 年前からベトナムの高校と交流を持ち、スタディツアーを実施。以前は、事前・事後のやりとりには、コンシューマー向けの SNS ツールを使っていましたが、複数の同時アクセスが可能で、双方向でディスプレイに書き込んだり、資料を共有したりすることが簡単にできる Webex Board の存在を知り、活用を開始しました。

検討時には、このようなデバイスとしての使い勝手はもちろん、シスコが展開する「デジタル スクール ネットワーク」も決め手となりました。

これは遠隔授業、学生間交流、教員同士のコミュニティなどを提供するプログラム。参加することで、国内はもちろん海外の学校との共同授業を実施したりできる他、プロバイダーが提供する教員向けのトレーニングを受講したりすることができます。

東京都立町田工業高等学校 総合情報科 情報システム系列 主幹教諭 寺島 和彦氏

「高校時代にはいろいろな経験、人との出会いをしてほしい。そこで、先日、デジタル スクール ネットワークを通じて、北海道から沖縄までの 6 つの高校の生徒と共に企画に参加しました。当校の生徒は制服ですが、制服がなく私服の生徒もいたり、それぞれに雰囲気が違いました。最初、生徒は少し戸惑い気味でしたが、いろいろな高校の生徒と時間を共有し、コミュニケーションをとれたことは、いい刺激になったようです」と同校の寺島 和彦氏は話します。同校では、今後も海外の高校との交流を含め、生徒に様々な経験、学びの場を提供したいと考えています。

このように、現在、東京都では Webex Board によるコミュニケーションを活用した様々な取り組みが進んでいます。

「道具によって島しょ部の課題を克服する。その道具の 1 つが Webex Board をはじめとするシスコのソリューションです。宝の持ち腐れにならないよう、新しい使い方を検討していきたいですね。生徒たちの自由な発想にも期待しています」と矢島氏。石田氏も「島しょ部の 7 校と大学などをつないで大学の講義を体験したり、先輩に進学相談ができる場を設けたり、様々な施策を考えています」と続けます。

課題を解決し、生徒たちに新しい学びの機会を提供する。これまで障壁となっていた距離や時間は新しいテクノロジーによって克服が可能。東京都のチャレンジは、教育現場全体に大きなインパクトを与えそうです。

東京都 教育庁

所在地/東京都新宿区西新宿 2 – 8 – 1
総人口/13,942,856 人(推計人口 2019 年 10 月 1 日)
都政施行/1943 年
URL/https://www.metro.tokyo.lg.jp/

域内には 23 特別区・26 市・5 町・8 村の基礎自治体がある。5 町・ 8 村の多くを占めるのが、伊豆諸島と小笠原諸島の島しょ部にある自治体。島しょ部の各自治体に設置される公立の学校では、地理的な制約による教育活動の課題を解決するために、以前から様々な教育活動が模索されていた。

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参考リンク
シスコ デジタル スクールネットワーク

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