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2025年9月16日

【後編】NEXT GIGAの校務DXとこれからの学校のあり方とは/COMPASS(キュビナ)

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6月に行われたオンラインイベント“NEXT GIGAの「個別最適な学び」と「校務DX」”(主催:COMPASS)において、パネルディスカッション「NEXT GIGAにおけるこれからの学校のあり方」が行われた。本記事では、その後半パートとなるトークセッションの様子をレポートする。

登壇者は、デジタル庁国民向けサービスグループ 久芳全晴企画官、奈良市教育委員会事務局 教育DX推進課 米田力教育ICT推進係長、学校法人東明館学園 理事長・校長でCOMPASSファウンダーの神野元基氏、SasaeL 村中順紀代表取締役社長。モデレーターはCOMPASS 未来教育室の板橋和政氏が務めた。

プログラム前半で各登壇者より発表された校務DXの取り組みをふまえ、校務DX推進の<課題><効果><今後の展望>の3つのテーマでトークセッションが進められた。

※前半の各登壇者の取り組み発表のレポート記事はこちら

校務DXの推進プロセスにおける課題とその解決方法は?

各登壇者からの発表をふまえた一つ目のトークテーマは「校務DX推進の過程における課題」。システムなどの仕組みの面と、教職員の意識やマインドセットなどの人の面、大きく分けて2つの課題と、その解決方法について意見が交わされた。


<奈良市>

奈良市教育委員会事務局 米田力氏

奈良市では、まず人の面におけるすべての教職員がクラウドベースで業務を進めるようになる、という目標に対し、校務のシステム基盤をクラウド、かつ子どもたちと同じGoogle基盤とすることで教職員の業務をクラウドの世界で行いやすくするという、逆説的なアプローチを取ったという。そうして必然的に「クラウドの世界で業務をする」状況を作ったことで教職員の意識が変わり、クラウド前提で「共有すればいい」「一緒にやればいい」というように業務のやり方そのものが変わっていったという。

マインドのクラウド化で進める業務改善(奈良市資料より)

 

一方で、基盤の部分については、様々なツールがある中で、データの相互連携を前提にした仕組みになっていない点が大きな課題であるという。「データを基盤としたときにツールをどう繋ぐか、トータルデザインでの設計については、奈良市としても対応が必要な課題だと感じています」と米田氏は語った。

<東明館>

学校法人東明館学園 神野元基氏

神野氏は、「働き方の変化」を負担に感じる教職員が多い中で、板挟みになりながら尽力している各現場のICT推進担当者の存在に触れ、「教育委員会の方や事業者の方も、このICT支援の先生を何より大事にするということが大切ではないかと思っています。」と呼びかけた。

システムの観点では、「今後、学校ごとに授業時数やカリキュラムなど柔軟にやっていいとなったときに、校務支援システム側でも学校によって機能や設定方法などを変えられるようにしないと、先生の痒いところに手が届くというのが難しくなってくる。」と既存の校務支援システムの柔軟性に課題感を感じているとして、柔軟なカスタマイズを開発方針としているSasaeLへの期待感も伝えられた。

<SasaeL>

株式会社SasaeL 村中順紀氏

村中氏も、全国の自治体との会話を通して、データの連携や移行が容易にできないことによる学校現場や自治体の負担を課題に感じているとして、次のように語った。「自治体ごとの過度ともいえるカスタマイズが移行を困難にしていたり、データ移行に際して既存のシステム会社から多額な費用が要求されるベンダーロックインに近いことが生まれているのも事実です。データ連携、データ移行がよりしやすくなるような、ツールの仕組み作りも全体で必要だと感じています。」

<デジタル庁>

デジタル庁 久芳全晴氏

こうした課題に対する省庁のサポートについて、久芳氏は、行政、特に教育分野におけるDX人材不足の状況は深刻だとして、人材不足=情報不足に陥らないための情報提供の取り組みを共有した。

「これまでの『地方自治だから地方自治体にお任せ』というスタンスではなく、自治体の皆さんが調達の際にいかに楽にできる状態を作っていくのか、そのための情報提供が必要だと考えています。」と言い、ピッチイベントの開催や「教育DXサービスマップ」や「モデル仕様書」のような調達時に役立つ情報集約のほか、自治体担当者であれば誰でも参加できるSlackチャンネル「デジタル改革共創プラットフォーム」を紹介した。

神野氏の話にもあったように、担当者が責められる、孤独になる、という状況を変える必要があるとして、ぜひ「共創プラットフォーム」を活用して横のつながりを作って欲しいと語った。

デジタル庁による「共創プラットフォーム」(デジタル庁資料より)

校務DXの取り組みによる学校現場の変化は?

二つ目のトークテーマは「校務DXの取り組みによる学校現場の変化」。学校現場の教職員、そして子どもたちにどのような変化が起きているか、各登壇者より共有された。

<奈良市>

奈良市では、クラウド環境に慣れてきたことで、現場の教職員の中に業務改善の実感が広がってきているという。一方で、クラウド化、マインドをクラウドに寄せていくことへの取り組みが前向きに進む学校と、そうでない学校の違いが見えてきたそうだ。今後は「クラウドでかなり楽になった」といった好事例を横展開することで、市全体に波及させていく考えだという。

また、学びの変化に向けた動きも生まれているそうだ。「先生方がクラウドに慣れてきたことで、 子どもたちと一緒にクラウドを使って学びを変えていこう、という動きも生まれています。自己選択・自己調整学習みたいなことも、突き詰めてやっていくにはクラウドがあると便利で、そうした動きが見られるようになってきたことは大きな違いかなと思っています。」と米田氏は語った。

クラウド環境の浸透による学びの変化(奈良市資料より)

<東明館>

東明館学園では、書類の作成業務や子どもたちに関する情報共有といった教職員の業務の効率化が進んできたという。さらに「非常に大きな変化」として、トラブル発生時に担当の教員1人で抱えるのではなく、教職員全体、チームで考えることができる体制になっている点が挙げられた。

また、事務的な作業のデジタル化で業務生産性が上がったことで、教職員が子どもたちと向き合う時間が相対的に大きく増加したという。「結局帰る時間が変わってないということもあったりして、これはこれで今後どう考えていくのか、正直管理職としては頭を悩ませるところですが、次の働き方改革に入りつつあるのかな、というのは感触として思っているところです。」と神野氏は語った。

DXで軽減に取り組む教員の業務負担(東明館学園資料より)

<SasaeL>

村中氏は、「SasaeL電話」導入による学校現場の変化として、従来事務室で手動で行っていた1日30~40件の電話の振り分け業務を自動化し、業務削減を実現できた例を挙げた。また、自動文字起こしで通話履歴が正確に残ることで、手書きでメモを取る負担が減るだけでなく「言った」「言わない」のトラブルや、どんなニュアンスで言ったのかというところも、正確な情報を元に対応できるようになったという。

また、トラブル対応の「T-topia」では、対応時のリスクや留意事項、聞き取りの手順などを事前にイメージできることで、対応時の参考になる、特に対応経験の少ない若い教職員の役に立ったという声が上がっているという。報告書作成にかかっていた時間の大幅短縮にもつながっているとのことで、「そのぶん、先生方が子どもたちと向き合う時間を増やせているのではと感じています。企業でも進んでいる事務的な業務はAIに置き換えて本質的な業務に時間を割けるように、という動きを先生方にもお届けしていきたいですね。」と村中氏は語った。

東明館学園へのT-topia導入時の効果(SasaeL資料より)

<デジタル庁>

こうした効果創出を全国に広げていくための省庁の取り組みとして、久芳氏は教育DXロードマップの「12のやめることリスト」について紹介した。一足飛びでDXを実現することは難しいという実感のもと、まずは「慣れる」段階が必要という観点から作成したものだという。「「やめましょう」とか、「こうやったら効率化できますよ」ではなくて、「あ、これってデジタルに置き換わっても一緒だよね。だけど時間は減ったね」と。このあたりから慣れをまず入れていただいて、そしてその慣れたところから横展開を図っていくという流れを作っていけるようにと感じています。」と久芳氏は語った。

12のやめることリスト(教育DXロードマップより)

奈良市の米田氏は、「12のやめることリスト」のうち奈良市では「学校徴収金の現金徴収」のみ△、口座振替をしているものの、業務そのものの見直しができずもう少し、としながら、「教育DXロードマップの内容の多くが、学校現場において『今できること』になっている。この環境を活用して、マインドを醸成していきたい。1番キーワードになることは『ワンスオンリー』で、先生方も保護者もワンスオンリーの考え方で業務を進めていくことがとても大事だなと思います。」と語った。

校務DX、その先の「学校のあり方」について今後の展望は?

最後のトークテーマは、校務DX、そしてその先の「学校のあり方」についての今後の展望。これまでのトーク内容もふまえ、今後に向けた意見が交わされた。

<奈良市>

米田氏は、教育DXの推進を、目的としての「学びの充実」、その実現手段としての「校務DX」、そしてそれを支える基盤としての「働きやすい・学びやすい環境づくり」の三層構造で説明し、基盤となるシステム導入において、この三層構造の全体を意識し、最上段の目指す姿を描きながら取り組む必要があると語った。

教育DX推進の三層構造(奈良市資料より)

一方で、自身も含めてDXに取り組む教育委員会の担当者にはシステムや行政の経験が浅い人も多いため、繋がることで知見を深めていくことが重要であるといい、「チームでの仕事というのがどの階層でも必要と思っています。今後は自治体も含めて、学校も含めて、よりスクラムを組んでやっていく、そういう方向性が望ましい環境じゃないのかなと感じています。」と語った。

<東明館>

神野氏は、学校現場に立ったことで、これまで推進を呼びかける側だった教育改革の理想を実現することの難しさに直面したと言う。教職員にとっての大きなハードルとして、「変化する」ということ自体を保護者や地域の人たちに理解してもらうこと、を挙げ、理想の実現には、それを描く人たちだけはなくて、それを受ける側や周りのすべての大人たちとの共有が必要であると語った。また、神野氏はそうしたハードルに向き合う全国の教職員や教育委員会、そして地域の保護者のつながりの場となるコミュニティ「ASPARK」を立ち上げたということで、参加の呼びかけがなされた。

神野氏が主宰するコミュニティ「ASPARK」

<SasaeL>

村中氏は、事業者の立場として、校務支援システムが変わるべき点と、校務支援システムだけでは変わらない点の2つがあると話す。まずは、校務支援システムの使い勝手や使いやすさの重視に加えて、過多ともいえる機能を精査することが必要だとして、帳票出力寄りのシステムから、名前の通り「校務を支援する」サービスに変わるべきと語った。

校務支援システムだけでは変わらない点としては、周辺サービスとの連携や各システム間の連携を挙げ、次のように語った。「本来デジタル化のメリットとしてシステム間の連携による利便性向上があるはずなのに、現状は単純にICTツールが乱立してるだけという構図になっているところもあるので、そこをより改善していきたいと思っています。」

校務支援システムと周辺サービスとの連携が今後の鍵(SasaeL資料より)

<デジタル庁>

久芳氏は、「いかに教育活動と人間関係以外でストレスを感じない状況を作るということが、校務DXによって生まれてくる学校のあり方なのではないかと思っています。」と話す。教育の場が人と人との関係である以上、そこで感じるストレスをゼロにすることは難しいが、それ以外はデジタルが貢献できる領域だと感じているという。

GIGAに合わせた5年単位であるべき姿を提示(教育DXロードマップより)

「これから5年間はいかにストレスを減らすか、先ほど米田さんが言われていたことをしっかり進め、神野さんが言われていたようにみんなでなんとか頑張っていく、その上で村中さんをはじめとする事業者が作ってくださるところに対して、ユーザーが正当な要望を上げていくという形になるように頑張っていきたい。」と、セッションを締めくくった。

<パネルディスカッションのアーカイブ動画>

関連URL

デジタル庁

奈良市教育委員会

東明館学園

SasaeL

COMPASS「キュビナ」

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