2019年3月18日
墨田区の教育ICT導入事例から学ぶiPadの効果的な導入とWindows環境との共存
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文部科学省の掲げる2020年を分岐点と見据えた教育改革が、着実に進んでいる。
この状況の中で、iPadに対する導入効果への関心は高いが、既存のWindows環境の中でどのようにiPadの整備をおこなえばいいのか悩んでいる自治体、教育委員会、学校関係者も多いのではないだろうか?
Windows環境の資産を有効に活かしたままで、iPadを導入しその活用が日々進んでいる墨田区の導入事例についてご紹介する。
墨田区の教育ICTの取り組み
墨田区は平成21年3月に「墨田区立学校ICT化推進計画」を策定し、平成22年度から校務支援システムの導入をはじめとした校務の情報化とともに、電子黒板の導入など授業におけるICT活用にも取り組んできた。ただし当時は電子黒板の整備がフロアに1台程度だったこともあり、「日常的に活用していたのは全体の2割程度」という状況だったという。
「ICTは校務を効率化する道具であるとともに、授業改善のための道具。ならば、日常的に『普段使い』できることがまずは大切である」の考えのもと、「いつでも」「だれでも」「どこでも」活用できる機器を整備し、気軽に使うことができる環境を作る必要がある。そこで平成26年度から、教員のICT活用能力の向上とICTを活用した授業改善を目的とし、ICT環境整備を本格的にスタート。まずは「いつでも」利用できるように各教室にプロジェクターを常設化するとともにタブレット端末を教員1人に1台整備した。
そして「だれでも」利用できるよう操作が簡単ですぐに使える機器を選定し、普通教室だけではなく理科室や家庭科室などの教室にも同様の整備をおこない、学校全体で「どこでも」取り組むことができるよう環境構築を進めた。平成26年度の5校によるモデル実施を踏まえ28年度で全校の整備を完了し、ICTを活用した授業改善の取り組みをスタートした。
まずは授業改善の道具として教員にタブレット等を整備し、教員がICTのメリットを享受したうえで、次のステップとして児童・生徒へタブレット等を整備し段階的に整備する。また「整備をしたら終わり」ではなく、整備後に生じた課題にも向き合いながら、より使いやすい環境に進化し続けている。
iPad導入の選択と導入後の効果
墨田区の教育目標の実現のために、なぜiPadを導入したのか?
「まずは全ての先生がICTを使って授業を改善できることが当面の目標だったため、『使いやすさ』を一番に考えたときにiPadの選択となりました。授業づくりの中で先生が実践したいことは多種多様であり、導入後に先生ごとにユニークなiPadの利活用の方法が生まれ、誰でも直感的に使えるのではないかという期待感からiPadの導入を決定しました。」
墨田区では全教員に約1100台のiPadを整備しており、すでに墨田区におけるiPadの活用の割合は常に80%を超えている。「活用頻度の高さが、教員のICTリテラシー向上につながっていると考えています。」
平成30年度には、モデル校として小学校1校、中学校1校、特別支援学級にiPadを整備し、児童・生徒のICT活用を開始した。
「教員がiPadを自然に授業で利用できる環境を整備し、教員が授業の中で自身が活用できる土台を作ってから次のステップとして児童・生徒への整備をおこないました。」
児童・生徒のiPad導入は導入してから数ヶ月だが、今までのICT機器との大きな違いは
・授業準備に時間がかからない = 起動時間が早く操作方法も直感的に使える
・児童・生徒がiPadを操作するためのサポートが必要ない
ことだという。「すぐに始めることができて、操作がシンプルであることは授業の内容に集中して取り組める条件の一つではないかと思います。」
教員各々が自身の考えた授業デザインでユニークに子供達と授業を実践していることを実感
「今までのICT機器は授業の中での利用方法が限定される製品が多く、その機器の操作方法を覚え、マニュアル的な教育ICT機器の利用が教育現場に有効なのか?と悩んだこともありました。しかしiPadは多くの教育向けアプリケーションがあり、先に教員が「実践したい授業」を考え、その実践に必要で有効なアプリケーションを『探し』、『選び』、『使う』という点で、今までのICT機器とは全く状況が異なります。」
また児童・生徒のiPadの自発的な利用も進んでいる。
「休み時間にiPadのタイピングソフトで練習している児童がいたので、どうしてタイピングの練習をしているのかを尋ねると、『私はタイピングが苦手なので、周りの友達みたいにタイピングができるようになりたくて。』と自分の課題解決にむけて取り組んでいる様子を見かけました。また、別の児童は放課後に下級生にダンスを教える必要があったため、ダンスの動画を見ながら教えるポイントを確認しダンスの練習をしていました。ここでもiPadの手軽に利用できるという利点が活きていると感じることができました。」
学校における活用事例
墨田区において学校の教員へiPadを一人1台整備したことにより実施している取り組みを2つ紹介する。
1つ目は教材の共有である。学力向上のため学習状況調査等で課題のある点を抽出、教材化し、教員が授業で活用できるよう共有化している。
「ある単元の理解度が低いとします。その原因を詳細に分析すると、手順を踏まえて教える必要がある場合や、指導のポイントを特に意識する場合など様々なことが必要になります。これらの教材や資料がトータルに参照でき、子供たちが今何につまずいているのかを把握できて必要な教材や資料が引き出せるポータルサイトを作成しました。」
2つ目は体力向上の取り組みである。
「墨田区では全国体力・運動能力、運動習慣等調査(以下「体力テスト」)で小学校の投げる(投力)が全国平均を下回っていました。そこで小学校の研究組織の体育部会教員が中心となり対策を考えている中で、模範動画を撮影し区内の教員に配信することで正しい指導方法などを広く周知でき投力向上につながるのではないかとして、動画の製作に取り組みました。模範動画やポイントなどをわかりやすく編集し、動画を活用することによって次の体力テストでは数値が向上しました。体育の模範動画の作成は、その後も鉄棒や跳び箱などの他の動画制作へと発展しています。」
既存のWindows環境とiPadの接続
こうした取り組みを行う上で、墨田区は前述のとおり教員へiPadを活用できる環境を構築しているが、Windows環境とiPad環境の間で、ファイルのやりとりができる環境の必要性が実際に生じたという。
「具体的には、職員室等で作成した資料をタブレットにて授業で活用できる環境が必要と考えました。授業前には職員室でWindowsのノートPCにて教材を確認し、教材を作成することが必要となります。作成時にはタブレットよりもキーボードのあるノートPCがより適していると考えました。一方、授業での活用時においては若干の修正作業とともに教材や資料をすぐに取り出せ、簡単な操作で扱えることが必要です。この2つのニーズをかなえるために、機器の種類に関係なく活用できる仕組みができたらと考えました。」
そこでOSも異なる環境下で教材がやりとりできる環境として構築したのが「ファイル共有の仕組み」「クラウドの活用」である。これは墨田区とSB C&Sが平成27年度に締結した「墨田区の教育の情報化推進事業に関する協定」に基づきSB C&Sがアドバイスをおこない、墨田区が保有するMicrosoftのライセンスに含まれる無償のオプションを利用する形で実施されたものである。
iPadのアプリケーションを通じてサーバーにあるファイルにアクセスできる環境を整備するとともに、Windows端末からはOffice 365を利⽤してクラウド環境にアクセスできるように構築した。
この環境により、Microsoft製品でこれまで作成した資料や教材だけなく、新しく作成した資料もiPadで利⽤することができるようになった。iPadの上でMicrosoft製品を利⽤でき、かつクラウド環境を整備したことで、その利⽤範囲が広がり教員から⾮常に喜ばれているという。
さらにOffice 365のサービスのひとつである「Microsoft Teams(以下「Teams」)」の利⽤も進められている。Teamsは会話やコンテンツやアプリをひとつの場所にまとめるデジタルハブであり、墨⽥区では教育委員会事務局と教員とのやりとりにTeamsのチャット機能を利⽤し、コミュニケーションをおこなっている。
「区内の中学校ではMicrosoft Teamsを使って連絡事項を教員間で共有することにより、朝の職員室でのミーティングがなくなり必要なコミュニケーションを関係者だけでとることができるようになったため、すぐに授業に取り掛かることができるようになりました。このような活⽤が授業改善、授業改⾰だけでなく、教員の働き⽅改⾰にも繋がっています。」
このような新しい取り組みに対しては導入時に抵抗感を持つこともあるが、墨田区の場合は比較的抵抗感なく導入が進められているという。「墨田区では管理職向けのICT研修を8年間続けています。この研修は、校長先生などの学校現場のリーダーの方々へ、社会変化やICTに対する認識などを大学の先生を中心とした外部講師の方々から直接刺激をいただくことで、教育ICTの活用、さらには教育改革の推進の担い手としての重要性を理解いただき、推進するために実施しています。ICT機器の整備や活用において、魂を吹き込むのはやはり人なので、この研修を通じてリーダーとなる学校現場の方々のモチベーションをあげることも非常に重要なことだと考えています。」
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