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2017年9月25日
玉川大、シンポジウム~未来の社会~シンギュラリティは来る?来ない?
玉川大学は24日、今年4月に「工学部情報通信工学科」が発足したのを記念して、「工学部情報通信工学科キックオフ・シンポジウム~未来の社会~」を開催した。
情報通信工学科は、「情報と通信の科学」、「人に優しい工学技術」、「コミュニケーションの科学」といった情報分野のコミュニケーションに重きをおいた学びを行う学科で、ICT、ロボット、人工知能と脳科学、データサイエンス、クラウドコンピューティングなどをキーワードにしている。
冒頭挨拶した小原芳明学長は、「本学にとって“情報通信工学科”の立ち上げは2度目の挑戦です。1970年代に認可を申請したときは『情報と通信と工学を一つにすることは不可能だ』と理解してもらえませんでした。しかし、いまや情報通信はICTと言われ、人々の暮らしに欠かせないものになり、大きな恩恵をもたらしています。こうした背景を受けて海外の多くの国では小学校から、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)教育に力を入れ、最近では文系のArtを加えたSTEAM教育を実践しています。産業界でも情報通信を活用した様々な取り組みが行われており、AIやロボット、ドローンなどの分野が発展して未来の社会はどうなっていくのか興味がもたれています。本日は専門家の方々の話を伺い、プラスになるのかマイナスなのか考えて頂きたい」とシンポジウムの開催意義を語った。
講演では、玉川大学学術研究所 AIBot研究センターの岡田浩之主任が「ロボットとAIが創る未来の社会」と題して登壇。「20年以上ロボットの研究をしてきたが、思ったほど進化していない。これから先も急激に進化の速度は変化しないだろ」と推測。AIについては、「機械学習を中心として、第3次AIブームと云われているが、AIの定義も定かではない。AIブームは終わるという予測もある。なぜならば、現状ではハードウェアー・ボトルネックが最大の課題だが、一般にそれが認識されていないこと。もう一つは、“人間の知”に対する過小評価だ。人間を越えるのは簡単ではない」と、シンギュラリティが容易く到来しないと予測した。
「情報知能の汎用化するインパクトとは何か」と題した、ドワンゴ人工知能研究所の山川宏所長の講演では、ディープラーニング(深層学習)によるAIの進化が語られた。また、AIの進化によって人間の多くの職業が失われていくという予測に対して人間が優位となる職業については、高度な創造性を有する仕事や複雑なコミュニケーションを必要する仕事などの「当面AIが不得意なスキル」、AIに与えるデータを作成したりAI活用人材を育成する教育産業など「人工知能を活用する」もの、組織の意思決定者や責任者など「人間としての価値を発揮するもの」だとした。しかし、汎用AI(AGI)が「自立性」や「創造性」を獲得した場合、シンギュラリティに到達する可能性もあると解説した。
「ドローンが切り開く未来」と題した、ドローンジャパンの春原久徳取締役会長の講演では、「ドローンとは何か」からはじまり、「ドローンの役割」、「ドローンの産業利用」、「ドローンの仕組み」などが語られた。また、ドローン開発の意義として、労働人口減少の解決手段としての「移動型インテリジェントロボット」、「IoT世界の拡大」、「持続可能な社会を作り上げる」などがあり、「ロボットフリーな社会」の構築が必要だと語った。
AIとは何か、AIは人類を幸福にするのか、シンギュラリティは来るのか、来ないのか、来たらどうなるのか。今回のシンポジウムを通じて、疑問は深まるばかりだが、それだけ研究する意味がある分野だということだろう。参加していた情報通信工学科の学生たちの活躍を期待したい。
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