2013年11月6日
「1人1台タブレット」「反転授業」ICT利活用教育推進へ準備着々/武雄市教委
「iOS」か「Android」か「Windows8」か。人口約5万人の佐賀県武雄市。同市教育委員会では、授業への意欲向上を目的として2014年4月には小学生全員に、15年春には中学生全員にタブレット端末を配る予定で、計約4200台を貸与し1人1台タブレット端末を使った授業を始める。武雄市ICT教育推進協議会から市長へ「機種選定」についてのさまざまな答申が出ているが、業界が注目する中、年明け早々、同市の選定委員会で機種を決定する。また、このほど同市教委は、ICT利活用授業で学力向上を目的として「反転授業」も取り入れて授業を行う方針を決めた。11月には市内の小学校で公開授業も開催。機種選定を来年1月に控え、この10月教育監として新たに就任した、元東京都杉並区立和田中学校長の代田昭久氏などに、ICT利活用教育導入の経緯やねらい、ICT活用授業としての『反転授業』へかける想いなどについて話を聞いた。
■「わかる授業の実施」と「校務の効率化」がICT利活用教育の目的
武雄市のICT利活用教育の主な目的は、『わかる授業の実施』と『情報化による校務の効率化』の二つ。そもそも佐賀県教委が2011年度から「先進的ICT利活用教育推進事業」を行っており、電子黒板をはじめICT教材の配備を推進していることが背景にある。
武雄市では、佐賀県の「佐賀県学習状況調査」(2013年)で、電子黒板などICTを活用した授業が分かりやすくなったと答えた児童生徒が約8割に達した。さらに武雄市でも、iPadを活用した小学校2校でのアンケート調査の結果、授業が分かりやすくなったと答えた子どもが多く、子どもたちの変容を目にした教師たちからもICT関係の整備を求める声が上がったことなどから、子どもたちの学習意欲に応えたいと、市教委は2009年から電子黒板の整備などICT利活用の環境整備を始めたという。
■電子黒板、デジタル教科書、そして1人1台タブレット
ICT機器整備状況は次のとおり。
現在、電子黒板の整備率は、市内16小中学校の学級数に対して約50%(学級レベル)で、2013年度末には整備率80%に達する見込み。デジタル教科書(教師用)も、小学校は国語(全学年)、算数(小2)が、中学校では国語(全学年)、数学(全学年)、理科(全学年)、英語(全学年)が現在導入されている。今後については、「4年ごとの教科書改定ごとに検討していく」という。
これまで、小学校2校(4~6年生)で1人1台ずつiPadを導入しており、コンテンツとしてはeライブラリ(ドリル学習アプリ)、C-Learning(学習内容定着確認アプリ、LMS)、V-Cube(電子黒板とiPadの連携アプリ)を活用してきた。
校内のWiFi環境整備については、今はiPad導入校の2小学校のみだが、年内に発注を行う計画で、2014年春のタブレット配布に備え、同年2月までには全学校に整備予定だという。
■タブレット機種決定は市の選定委員会で2014年1月に
市教委によれば、武雄市ICT教育推進協議会が樋渡啓祐市長に答申したこれまでの内容を踏まえ、以下のスケジュールで機種を決定していくという。
タブレット選定については、12月議会で予算を計上する。また、本年中に機種選定委員会を開き、タブレット及び整備すべきコンテンツとして、アプリケーション(LMS等)も含め総合的に判断し、来年1月までには、プロポーザル方式により機種を選定する予定。ちなみに県教委では県立高校生向け機種として「Windows8 Pro」が選定されている。
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■ICT研修を受講した教員たちは9割超え
来年度(小学校)の1人1台タブレット導入を受け、教員たちの準備はどうだろう。
まず、県教委が進める「情報化推進リーダー」制度がある。各校に推進リーダーを作り、受けた講習内容を校内の教員に伝えていく取り組み。その他、武雄市で作った「ICTプロジェクト委員会」の研修会や、教員たちの自主的勉強会『ICTスキルアップセミナー』(毎月1回)などを重ねており、教員たちは指導への準備をしてきたという。
佐賀県教育委によれば、「ICT利活用指導力の状況」で研修を受講した教員の割合は96.2%を占めており(文科省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査(2012年度)」・小学校)、教師側のICT利活用に対する受け入れ準備は整ってきたと胸を張る。市教委の竹内智道指導主事も「先生たちも電子黒板などのICT機器活用になれてきたのではないか」と話す。
■『協働的問題解決能力』を高める「反転授業」で、学校現場が変わる?!
市教委は、このほど、小中学生全員に1台ずつ配るタブレット端末で、子どもたちの学力向上を目的として「反転授業」も取り入れて授業を行う方針を決めた。
反転授業とは、これまで学校の授業で教えてきた内容について家で予習を行い、学校の授業で、予習してきた内容を生かして、協働的な学習や問題に取り組む方法。米国で数年前から広がった。日本では自治体で導入を検討するのは初めて。
子どもたちは授業の動画ファイル(授業ビデオ)を入れたタブレット端末を持ち帰り、自宅でその動画を見る。学校では授業ビデオではわからなかった点を教え合いながら、問題を解くという。市教委によると、算数と理科について一つの単元の反転授業を研究授業として実施するという。なお、とり込む映像やアプリケーションについては、塾や出版社に無償で提供を受ける予定だ。
代田教育監によれば、「反転授業」のメリットは、①児童・生徒の知識習得の効率が上がる②教員が児童・生徒の理解度を正確に把握できる(落ちこぼれを作らない)、③話し合い、教え合う活動が増えることでコミュニケーション能力も身に着くなどだ。そのために教員は「『一斉授業で教えこむ人』から『子どもとともに考え、議論をリード、修正しつつ見守る人』になる必要がある」。「反転授業」は子どもたちが教え合ったり、話し合ったりして「協働的問題解決能力」を高め、学校現場が変わっていく可能性があるという。
一方、課題もある。家庭との連携ができるか、事前学習の動画コンテンツが充実するか、また、教員が想定外の子どもたちの意見を取りまとめたり、引き出したりする対応ができるかどうかなどだ。11月に「反転授業」の研究授業を実施し、成果を検証していくという。
■子どもたちが学力を向上していくことを目指して~武雄市が描く将来像
ICT教育の目的である「わかる授業の実施」、「情報化による校務の効率化」が実現できる学校作りを目指す武雄市教委。
「ICTのテクノロジーを有効に活用して、子どもたちの問題解決能力を高めたい」。
「ICT活用により教師が子どもたちと向き合う時間も増え、また、ICTを使った『反転授業』も取り入れることにより、先生たちの教え方も変化が見られるようになり、子どもたちは学習意欲が高まり、学力が向上していくのではないか」と代田教育監は期待している。
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