2013年8月8日
DO-IT Japanと日本マイクロソフト/障がいなど困難を抱える若者を支援するプログラム開催
DO-IT Japanは、障がいや病気による困難を抱える若者の支援活動の一環として「DO-IT Japan夏季プログラム」を4日から6日まで東京・港区の日本マイクロソフト(MSJ)本社ほかで開催した。
「DO-IT Japan」は、障がいや病気による困難を抱える小中高校生、大学生に対して高等教育への進学やその後の就労への移行を支援することで、将来社会のリーダーになる人材を育成することを目的としたプログラム。任意団体である「DO-IT Japan」の主催で、MSJが共催企業となり2007年にスタートした。
2012年度の参加者総数は75名、大学進学者総数は36名で、今年度は参加者100名以上、大学進学者40名以上と年々広がりをみせている。
今回で7回目となる「DO-IT Japan夏季プログラム」では、障がいについての理解を深め、IT活用を中心とした障がいに対する環境調整の方法や、必要な合理的配慮について周囲へ適切に説明する方法(セルフ・アドボカシー)の学習等さまざまなプログラムが行われ、全国から選抜された障がいのある、または病気を抱えた児童生徒ら14名が参加した。
5日の午後からは、MSJ品川本社で「思考を整理する方法を学ぶ」と題した講義が行われた。
「DO-IT Japan」の卒業生で書字困難や聴覚過敏の障がいを抱えながら大学進学を果たした斉藤真拓さんが学生スタッフとして参加、Microsoft Office Visioで作ったマインドマップについて発表した。
「DO-IT Japan」では今年度からの新たなプロジェクトとして、特別支援教育でのICT機器活用推進のため教員に機器を提供する「DO-IT School」をスタートさせた。
「DO-IT School」には、読み書きに困難のある児童生徒を Windows 8 タブレットなどの利活用によりサポートする「ディスレクシア プログラム」と、肢体不自由などによりコンピューターの操作等に困難のある児童生徒の顔や手などのわずかな動きを感知し信号を送ることのできるセンサー Kinect for Windows などを活用してサポートする「OAK プログラム」の2つの取り組みがあり、それぞれの研究への参加を希望する教員・指導者を募り、ICT機器の無償提供と授業などにおける活用を6月から開始した。
「DO-IT Japan」の会長である東京大学先端科学技術研究センター 中邑賢龍教授は、初等中等教育における障がいのある児童生徒を取り巻く環境についてこのように述べた。
「読むことや書くことが困難でも、PCなどICT機器を使えば授業に遅れることなく学習できる子どもに対しても、まずは読む練習・書く練習をさせるという状況がある。小中学校の教室へのICT機器の持ち込みが認められることが少ないのは残念である」
しかし今、追い風が吹いているという。2013年6月に「障害者差別解消法」が成立し、このなかで合理的配慮の提供が公立学校で義務付けられた。
DO-IT Japanでは「DO-IT School」などの活動を通じて、教育現場などでの合理的配慮を求めるため、学生とともにエビデンス(科学的根拠)の収集・定時活動を継続的に実施している。
こうした取り組みは着実に実を結びつつあり、斉藤真拓さんは、大学入試の小論文にWordを用いて受験し合格した。国立大学でPC利用が認められた初めての事例だという。
特別支援学校では教職員の意識も高く、合理的配慮が既に進んでいるが、初等中等教育の現場はこれからだという。
特別支援学校から通常学級への統合教育(インクルージョン)を進めるためにも、「学習に困難のある子どもたちにこそICTが有効」であることを広く認知させていきたいと中邑教授は語った。
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