2015年2月16日
新潟大学附属新潟小/初等教育研究会を開催 「ICT活用は学級経営から」
新潟大学教育学部附属新潟小学校は5日、6日の2日間、「平成26年度初等教育研究会~学びをつなぐ力を高める授業-二年次研究-~」を開催した。全国から教師や学生2000名以上が2日間で参加し、教室は熱気に包まれた。
全体発表の冒頭で挨拶した宮薗 衛校長は、今回の研究の基本姿勢として「研究においては、職員一人ひとりが対等・平等であること」と「新潟から全国の教育実践をリードし、全国の学校に届けるという、気概と誇りをもって臨もう」の二つを共有してきたと語り、この2日間は附属新潟のお祭りなので皆で楽しもうと呼びかけた。
研究主題となっている「学びをつなぐ力を高める授業」とは、既有の知識や技能、経験とつなぎながら、「中核的な知識や技能」を創り出し、考え方を自覚する子ども、を目指すためのもの。知識や技能の獲得と思考力の育成を一体として行う授業は、まさに、新しい時代を生きる上で必要な資質・能力を確実に育成する授業なのだという。
こうした授業を進める上で、ICTツールは各所で活用されている。大型ディスプレイや電子黒板、iPadは、研究クラスでは1人1台、その他全校用で約100台が導入され、教科ごとの授業内容に合わせて活用されている。
公開授業は、CCT(クラスカルチャータイム)で教室から聞こえてくる美しい歌声から始まった。別のクラスでは、全員が曲に合わせて踊っていた。そして、あるクラスでは子どもたちが一人ひとり自由にiPadで遊んで(学んで)いた。切り抜かれた白地図の県のピースを、日本地図にはめ込む社会のアプリに取り組む子。お絵かきアプリを使って、車の画を描いている子。中には英語の翻訳アプリを使って、英会話にチャレンジしている子もいる。iPadに夢中な子たちも、教師が「はい、止め」の声を掛けると一斉に使うのを止め、合唱の体制を整えていた。
授業では、安藤達郎教諭の5年生理科「とける?とけない?-物の溶け方-」。お湯の温度による食塩の溶け方の違いを動画で記録して比較するという実験で、iPadが使われていた。
渋谷美和子教諭の5年家庭「お任せ!片付けの達人-持続可能な整理整頓-」でも、調べ物や発表資料作成にiPadを使って取り組んでいた。
1人1台タブレットを使った授業研究を続けている片山敏郎教諭の公開授業は、4年生の総合的な学習「下本町レボリューションプロジェクト-YouTubeで街おこし-」。
同校の地元下本町の魅力を伝えて外国人を呼び込むために、PR動画をつくって発信しようというもの。iPadのカメラ・ビデオ撮影機能を使って取材し、プレゼンアプリを使って構成や編集して、1分間のCMにまとめてYouTubeで公開するのが目標。
今時限では、仮編集が終了した動画をiPadで5人のゲストティーチャー(街づくりの専門家、街の住人、発信対象となる外国人、人権の専門家、著作権の専門家)に観てもらい、課題を抽出して改善に役立てようという内容。
著作権の専門家からは「BGMに使う曲は著作権フリーの曲から選ぶこと」、街の住人からは「街の歴史を考慮した見せ方をしたらいい」、外国人からは「1カットが短すぎて分かりづらいから少し長くした方がいい」などのアドバイスをもらい、グループで課題の整理や話し合いを行い、次の作業計画をまとめた。
公開授業、全体発表などの後、フォーラム「考えるすべを発揮させる 附属新潟式情報リテラシー」が開催された。ここでは、同校の情報リテラシーを「ICTを活用し、考えるすべ(思考の方法)を発揮しながら、問題解決に向かって情報を収集・判断・表現する力」と定義し、すべての教科でタブレット端末を活用する経験をさせ、子ども自身が自由に活用方法を生み出す姿を見いだし、価値づけること、という情報リテラシーを育む基本的な考えが発表された。
フォーラムの講師を務めた東北大学大学院の堀田龍也教授は最後に、「ICT教育では、タブレットの使い方を学ぶのではなく、使って何を学ぶかが大切。ツールがあることによるリスクも考えられるので、ツール活用に必要な力を意図的、継続的に育んで行くことが重要だ。そして何よりICTの活用には、附属新潟のような確かな学級経営の基盤が必要だ」と、ICT導入以前の重要性を語った。
来年度の研究会は、2016年2月4日、5日の予定。
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