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2015年3月3日

近大附属高校/教師と生徒のトークイベント「iPadと進化する学校教育」を東京・銀座で開催

近畿大学附属高等学校は2月28日、教師と生徒が登壇するトークイベント「iPadと進化する学校教育」を、東京・銀座のApple Store GINZAで開催した。

近大附属高校 岡崎忠秀校長

同校は現在、3000台以上のiPadが稼働する大規模なタブレット導入校。2013年度にiPadを導入して以来、学習ポータル「CYBER CAMPUS」の活用や、反転授業、アクティブラーニングなど新たな学習スタイルに取り組み、数々の事例を発表している。2015年1月には、これらの取り組みが評価され、Apple Distinguished Program 2014-2016に日本の高校として初めて選ばれた。当日のイベントでは、ITジャーナリストの林信行氏がモデレータを務め、会場には同校の教師、生徒らのリアルな声を聞こうと関係者らが詰めかけた。

冒頭挨拶した岡崎忠秀校長は、2年前から実施したiPad導入を振り返り「生徒たちが能動的に学ぼうとする意欲が伸び、学校全体が活性化した実感がある」と述べた。

自分のカメラロールを披露した女子生徒

実際に、登壇した女子生徒も「iPadを使った学習では、今まで面倒だったことが簡単に、気軽になり勉強に対する意欲が出た」と述べ、具体的にはプレゼンテーションを例に挙げ、わざわざPC教室に行かなくてもiPadで手軽にスライド作成ができる点が良いと語った。

また同女子生徒は、学校ではiPadを自由な環境で使用しているものの、生徒の使い方に様々な問題があると打ち明けた。近大附属高校は生徒に対して規制やルールで縛りつけず、自由な使い方を認めていることで知られるが、生徒の意識やリテラシーが最初から高いわけではない。女子生徒は、自分たちの自立心や自制心が問われていることを普段から感じていると話し、「わたしたちが次世代の高校生のスタンダードになれるようにがんばりたい」と伝えた。

iPadのメリットについて語る男子生徒

続いて、男子生徒が登壇しiPadを使った学習の魅力について発表した。「インターネットが使えること」「勉強のパフォーマンスがアップすること」「アクティブになれること」「学習の強みになること」を挙げ、生徒側からみてもiPadを使った学習には多くのメリットがあると伝えた。

後半はiPadと進化する教育について、現場の教師たちが発表をした。

ICT教育推進室 室長の乾武司教諭は、「iPadはパーソナルな端末であるため、多くの規制を設けては最大限生かされない」と語った。具体的なエピソードとして、同校で昨年開催されたICTオープンスクールを挙げた。生徒らに会場の設営、当日の案内、運営などを任せたところ、イベントを楽しく盛り上げ、最後は来校者にデジタルのイラストをお土産で配ったという。乾教諭は「生徒たちは、教師の発想では思いもつかないようなアイデアをひらめき、形にしていく」と、教師の決めた範囲で使わせないことが大切ではないかと語った。

英語科の青山祐子教諭は、「英語を教科として学ぶのではなく、コミュニケーションのツールとして学んで欲しい」と話し、Academic Writingと呼ばれる学習法を取り入れたかったと語る。ただし、授業では教科書の内容も教えなければならず時間数が足りない。そこで、文法解説は動画を、リスニングはPodcastを利用し、音読発表会もやめてiMovieで英語のムービーを作成しメールで提出するようにしたと話す。これにより、授業時間で自分のやりたかった授業ができるようになったという。

教師たちのiPad活用発表

「なによりも嬉しかったことは、生徒の質問内容に変化が見え始めたこと」と、青山教諭はiPad活用の手応えを語る。“このフレーズは他の場面でも使えますか?”という質問が増え、生徒たちが英語をコミュニケーションとして意識し始めたことに、教える喜びを感じるようになったという。青山教諭は「生徒は学びのオーガーナイザー、教師はファシリテーターになることが大切だ」と語った。

地理公民を受け持つ神野学教諭は、iTunes Uの活用について述べた。元々、iTunes Uは受け持ちの生徒が利用することを想定にしていたが、実際は、世界の様々な人からコンテンツにアクセスがあり、面白い動きになりつつあるようだという。神野教諭は、iTunes Uで事前に教材を配信できるようになったことで、授業ではプレゼンの時間を多くしたり、iTunes Uのディスカッション機能を用いて意見交換がしやすくなったことがメリットだと話した。

最後は、森田哲教頭が登壇し、「近大附属では、今までの授業をよくするためにiPadを活用しているわけではない」と語った。iPadの活用は、“どのような生徒を育てていくか”という本質的な問いかけを教師自身が持つことであると述べ、教師の考えを変える必要性について強調した。課題点もまだまだ多いが、学校が変わらなければいけない部分や問題を見つけて変化していきたいとの想いを語った。(取材:神谷加代)

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