2015年11月12日
DiTT/デジタル教科書シンポ 導入の課題は「検定」
デジタル教科書教材協議会(DiTT)は9日、シンポジウム「デジタル教科書の位置づけはどうなる?~文科省検討会議について」を東京・千代田区の紀尾井フォーラムで開催した。
デジタル教科書導入に関する「今後の検討の視点」をテーマとする今回のシンポジウムには、文部科学省 「『デジタル教科書』の位置づけに関する検討会議」の座長を務める東北大学院 情報科学研究科 堀田龍也教授と、同じく検討会議委員であるベネッセ教育所 新井健一理事長が参加。DiTTの中村伊知哉専務理事、片岡靖参与、石戸奈々子事務局長とともに公開討論を行った。
初めに、堀田座長から検討会議における議題の進行状況などについて説明があった。
2015年4月、文部科学省に「『デジタル教科書』の位置づけに関する検討会議」が設置され、デジタル教科書導入に向けての議論が本格的にスタート。現在、デジタル教科書導入に向けての様々な課題が出されている最中で、11日には5回目となる検討会議で、教科書会社へのヒアリングや意見交換を行う。こうした検討をかさね、2016年夏ごろには中間まとめを出す予定だという。
また、教科書をめぐる現状について「国が学習指導要領を策定し、教科書会社が競争し合って良い教科書を作り、地方自治体が責任を持って良い教科書を採択するという日本独自の仕組みには非常に良い点がある」とし、デジタル化を進めるにあたり、教科書の発行に関する臨時措置法など様々な関係規則があるなかで、何かを一斉に変えようとすると課題も多いため、「今の枠組みの中でどうやってデジタル化していくかを考えていくこと」が現実的ではないかと述べた。
そうした報告を受けて、パネルディスカッションでは「『デジタル教科書』に関する検討の視点」という資料を元に議論を進めていった。視点として挙げられたのは、「教科書の意義・役割」「教科書の質の担保」「教科書としての役割」「導入に当たって必要となる環境整備」の4つ。
まず、「教科書の意義・役割」について堀田座長は、教科書に書かれている内容自体を理解していない子どもたちがまだまだ多いこともあり、そうした点からも検定教科書のデジタル版である「デジタル版教科書」で導入を進めることが考えられると語った。
次の「教科書の質の担保」に関しては、質の担保、つまり検定の範囲という重要なテーマでもあり、いろいろな視点から意見が出された。
デジタル化された教科書の検定を想定した場合、例えば音声はどうやって検定を行うのか、画面に貼ったURLのリンク先が変わる等についてどう対応するのか、海外の映像教材を検定し修正がでた場合は教科書会社がもう一度海外に取り直しに行くのかなど、検定の技術的な課題が様々に挙げられるという。
堀田座長は、検定とは学習指導要領に示した内容が表現されているかを調べるものだと説明し、これまでのノウハウを生かすためにも紙で検定を行い、それをデジタルにしていくという形から始めてはどうかと述べた。また、検定する手続きを考えると教科書の範囲は少ないほうがよく、教科書の質を担保することはもちろん大事だが、今の検定制度のままでデジタル化を進めるのには課題が多いとし、デジタル化推進のための具体的な方法を進めていくべきと語った。
こうした意見を踏まえ中村専務理事は、ネットにつながり音がでて音声もあり、子どもたちの創造性を育てる教科書が理想としながら、次のステップに繋げるための落としどころとして「デジタル版教科書」に理解を示し、DiTTとしても中長期的な展望を持ちながら、国や地方自治体、関連団体等への働き掛けを続けていくと述べた。
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