2016年7月1日
平山小学校、先進的なICT活用の日常化と継続に向けて
東京都日野市立平山小学校はこれまで、数々の先進的な取り組みを行ってきた。
2009年度、日野市教育委員会研究課題校に指定されたのを皮切りに、パナソニック教育財団特別研究指定校、総務省「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」、パナソニック教育財団「未来の教室プロジェクト」、文部科学省研究開発校など様々なプロジェクトに参画してきた。
それぞれのプロジェクトはICT機器を教育現場で活用するための実証研究。公開授業はショールームであり、新しいことにチャレンジしその成果を公開する場だ。「こんなツールを使って、こんなことができますよ」と。2013年1月にスタートしたICT教育ニュースの、最初の公開授業取材も平山小学校だった。
ICT活用の取り組み開始から7年目を迎えた2015年5月、新たなプロジェクトがスタートした。
日野市と信州大学、東芝、日本マイクロソフト、シャープビジネスソリューションの3社の産学官共同プロジェクト。次世代型学びプロジェクト「ひの@平山小」である。
このプロジェクトは、児童に1人1台のタブレット(全240台)を貸与することで、学校内だけでなく自宅においても最新のICTを活用した学習が可能な環境を提供し、日常的な学習ツールとしてタブレットを活用する効果を検証するもの。授業でどう使うかから、家庭も含めた学びでどう活かすかがテーマとなっている。
このプロジェクトの第3回公開研究会が6月24日行われた。
オリエンテーションの冒頭挨拶に立った平山小学校の五十嵐 俊子校長は、「かつては先取りしていた平山小学校のICT活用も、今では当たり前になりつつある。わしたちの取り組みは何年か経過したが、同じ方針を貫きながら教員が入れ替わり新しいメンバーになっても、継続できるようにしている」と、技術やノウハウが継承されていることを強調した。
公開授業は1学年1クラスずつ、全学年で実施された。
1年生の教室を覗いてみると、机の上にiPad4台をくっつけて並べ、のぞき込んでいる子どもたちの姿があった。堀切 遼一教諭の国語「こんなおと みつけた」の授業。擬音語、擬態語を活用して、様子が伝わる文を表現するもの。
使っているのは集散的な思考活動を支援するアプリ、XingBoard(クロッシングボード)。
iPad上のフラッシュカードで、各自が作ったカード(付箋)を指で弾いて飛ばし合ったりして意見やアイデアを交換し合うもの。
「風が ・・・ ふく」、「水が ・・・ ながれる」、「木が ・・・ ゆれる」「雨が ・・・ ふる」の「・・・」の部分を自分たちでカードに書いた言葉で埋めるもの。
カードの向きを変えたり飛ばしたり、スクリーンキーボーを使ってカードを作ったり、タブレットを使い始めて3カ月とは思えない熟練ぶり。とはいえ、間に入る擬音はなかなか見つからない様子、学びの進度が遅いのだろうか。
授業の後、プロジェクトの指導に当たっている信州大学の東原 義訓教授に訊ねたところ、「子どもたちは擬音語をはじめて学んでいるので、すぐに答は出ないのかもしれない。それにこの学びは、単に正解を求めるのではなく感性を磨きながら知識を学ぶもの。大人では思いつかない、詩のような文が出来ていましたよ」と解説頂いた。
たしかに。『雨が ざーぁ ふる』。なんかいいですね。
4年生、佐藤 俊輔教諭の生きぬく科は、「よりよい話し合いをしよう」。
東芝が開発したレコーダーアプリ 「TruRecorder」をつかったグループディスカッション。議題は、「災害時に、教室をそのまま避難所として使ってもらうのか、それとも授業が出来るようにしてもらうのか」というもの。
話し合いに使用する「TruRecorder」は、発話者が誰であるかを特定して録音再生時に画面上に色分けで表示でき、大切な発言には目印をつけられるなど、視覚的に話し合いを“見える化”するアプリ。
一人ずつ発話するのが基本となるため、自分の考えをまとめてから発言したり、相手の話を最後まで聞くという話し合いの基本が自然に身につくだろう。また、議論を録音で振り返りながら、考えの変化に影響を与えた発言などを検証できるので、結論に辿り着く道のりを検証できたりもする。
各班の結論の発表では、「平山小だったら、教室とブース(教室前の共有スペース)を分けて使うことができる」、「避難所として使うが、授業も少しやる」「避難所と教室をスペース分けして利用する」、「避難所と授業を、時間を分けて使う」など、議論の深化を伺わせた。
ふりかえりでは、議論の前に確認したルーブリックについて自己評価を記入する。「×」「×」と記入しているメンバーを見つけた児童が、「×はダメだよ。最初は何も言わなかったけど発言したじゃん」などどとアドバイス。「×」を「△」に書き換える場面もあった。
公開授業後の全体会では、平山小学校でのこれまでの「研究実践報告」や、当日の授業内容について各学年から発表が行われた。五十嵐校長が挨拶で話したとおり、初任や2年目など若い教師がICT活用の意味を理解した上で利用している様子がうかがえた。平山小学校では、ICT活用は日常的であり、それが継続されている。
最後に「平山小から始まる次世代型の学び」と題して講演した信州大学の東原 義訓教授は、「Iot、ビッグデータ、ロボット、AI(人工知能)など第4次産業革命の時代と言われている。時代が変われば仕事も変わる、人の役割だって変わっていく。そんな未来に生きる子どもたちのことを、考えなければならない。小中学校は子どもの将来が遠く、実感が無いかもしれないが、教師は子どもの未来に責任を持たなければならない。平山小のプロジェクトは、そうした未来を見据えて行っている」と、ICT活用教育の意義を語った。
東原教授が講演の中で参加者に提示した、「フェルマーの定理」や「最小作用の原理」的な問題は難しかった。○△□を串刺ししておでんにするような発想が必要か。その串になるアイデアを、どんどん思いつくような子どもたちが育って欲しいものだ。
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