2017年9月22日
南信工科短大で世界初の試み 「3Dプリンター」×「デジタルモールド」
ストラタシス・ジャパンは21日、長野県南信工科短期大学校(南信工科短大)で、同社の3Dプリンター技術を活用した3Dプリント樹脂型アプリケーション「デジタルモールド」が、金型の基礎から実践を学ぶための教育課程に採用されたと発表した。デジタルモールドの教育課程における導入は世界初の取り組みとなり、同カリキュラムは今年12月から同校専門課程の学生向けに開始される。
「デジタルモールド」は、長野県伊那市に本社を置く製品設計開発会社スワニーが開発した、3Dプリント樹脂型を使用してABS、PS、POM、PPなどの熱可塑性樹脂を射出成形する最新技術。迅速で安価に量産材料で試作部品や小ロット部品を製造することができる。
今回の取り組みは、南信工科短大を応援する地元企業の団体である南信工科短大振興会とスワニーの協力で実現したもの。
南信工科短大では、従来の金型技術についての知識はもとより、実践的なスキルの習得もできる課程と環境が整備されている。今回の取り組みにより、金型の試作ともいえる最先端技術の「デジタルモールド」を採用した授業を同校カリキュラムに取り入れることで、実践的、かつより柔軟な考え方やスキルを備えた競争力の高い人材の育成を目指すという。
スワニーの橋爪良博 代表取締役社長は、「今後の3Dプリンターの進化とともに、近い将来デジタルモールドは当たり前に企業で活用される技術になっていくと考えています。地元企業の大きな期待のもとに設立された南信工科短大から、基本技術とさらに新しいツールも使いこなすことのできる応用力をもつ人材が地域に根付き、モノづくりに活気を与えていってくれるだろうと期待しています」と、語る。
南信工科短大では以前からストラタシスの3Dプリンターを導入しており、製品設計などの試作だけでなく数々のプロジェクトでも3Dプリンティングを学生たちが活用している。今回導入されるデジタルモールドを活用したカリキュラムでは、製品設計だけでなく、金型設計やその試作なども学べる内容となる。また、人力射出成形機も新たに導入し、課程内で成形の仕組みを実体験することができるようになる。これにより、設計・製図から金型加工・成形まで、一貫して学べることになる。
南信工科短大の大石修治 校長は、「南信工科短大としても、従来の教育現場で学ぶことができる基本的な技術だけでなく、地元で誕生した新しい技術を学生が学ぶことはとても意義深いと思います。これからの日本のものづくりを担っていく若い世代が、技術やマインドを身につけて、地域の企業で大いに活躍し地域を盛り上げていってくれることを願っています」と、期待を語る。
カリキュラムへの導入に先立ち9月14日に行われた体験実習授業では、橋爪社長の講義に続き、中島一雄 准教授の指導で、3Dプリンターを使った樹脂製金型作成と人力射出成形機による樹脂成形を体験した。
この方法による金型製作のメリットは、製作コストが安価にできることと、失敗が許されることだという。通常の金型製作では、コストの問題で、ほとんど失敗が許されない。そのため教育機関などで、実際に設計から成形まで一貫して体験することはできないという。
中島准教授は今後の活用について、「カリキュラムで活用するのはもちろんですが、学生が自主的に取り組んでいるグループ研究や卒業研究など、様々な利用が期待できます」と、新たな学びの創出を期待している。
第4次産業革命が叫ばれ、ICTやデジタルに目が向きがちだが、IoTもロボットも基盤を支えているのは、金型などのものづくり技術だ。これまで職人によって支えられてきた日本の「ものづくり」を、先端技術である3Dプリンターが大きく変えようとしている。
南信工科短大振興会会長の向山孝一 KOA代表取締役会長は、「産学が密に連携したこの新しい教育課程を通じ、より実践的な技術を習得した競争力の高い人材を育て、ひいては地域企業の活性化につながることを期待しています」と、取り組みの意義を語る。
南信工科短大に集った産学連携のメンバーや地域産業が学生たちに期待するのは、最新技術を駆使して職人技に近づくことではない。IoTにも対応できる複合的な技術を身につけ、企画したり提案したり「ものづくり」をプロデュースできる技術者の創出である。
「3Dプリンター」×「デジタルモールド」が教育課程に採用され、活用される南信工科短大の少し先の成果に期待したい。
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