2018年1月16日
Classiで先生たちがアクティブ・ラーニング体験
アクティブ・ラーニングを実践したいけれど、どう課題を設定し、授業を進めれば良いのか。やり方が分からないで悩んでいる先生は多い。
Classiは昨年12月23日、「悩める先生のための実践アクティブ・ラーニングワークショップ」を東京・新宿で開催した。アクティブ・ラーニングを体感する同イベントに、全国から120名を越す先生たちが詰めかけ、満席の会場は熱気に包まれた。
冒頭に挨拶をしたClassi マーケティング部 林部貴亮部長は、「企業が大学生に不足していると思う能力要素」の調査結果を示し、「企業が学生に求めているのは『主体性』。次に『コミュニケーション力』という興味深いデータがあります。これから学生が社会で求められるこうした能力に対して、ICTで支援できるのが、『ポートフォリオ』『アクティブ・ラーニング/PBL』『アダプティブラーニング』と考えています。Classiでは実際に2つの事例があり、それが『教科型』と『探求型』のアクティブ・ラーニング。さらに学習のプロセスなどを『ポートフォリオ』の形で支援。こうしたことができるのがICTの良さです」と、この日のイベントの背景を語った。
続いて、「ICTで支える深い学びと評価」と題した講演に登壇した、聖心女子大学文学部教育学科 益川弘如教授は、「ICT機器は学習過程や学習効果を蓄積しやすく、自動的に記録できるため、生徒は自分の思考過程を客観視でき、さらに他者の考えなども共有が可能。自分なりの考えを深めていくためには、この条件がキーと言えます。ICTのこうした特性により、アクティブ・ラーニングをとおして、自らの学びを深めていくための『情報』を得ることができます」とICT活用の利点を述べた。
アクティブ・ラーニングは、昨年公示された「新学習指導要領」で「主体的、対話的で深い学び」と言い換えられている。学習科学の視点から見ると、「生徒が自分で答えを作り出して終わる」、「他者と会話して自分の考えが少しずつ変わって良くなっていく」、「学んだことで次の問いが生まれてくる」といった授業づくりが、生徒の「主体性」を育んでいけるのではないかと益川教授は論じた。
また評価については、「学習成果」だけでなく、今後は「学習過程」も大切な評価になってくるとし、「ICTを活用すれば、生徒たちが学んでいるプロセスをデジタルワークシートに残したり、ポートフォリオに蓄積したりすることで、どう学習して何について考えていたのかが記録でき、それ自体が評価の対象になっていく。これは紙のノートではできないこと。学習過程について、私たち教師が評価しやすい社会になってきたのではないか」と述べた。
この日は、Classiのコンテンツパートナーのサービスである「QUEST EDUCATION」を使用した「紙教材を活用した探求型のアクティブ・ラーニング実践」と、「ClassiNOTE」を使用した「タブレットを活用した教科型のアクティブ・ラーニング実践」の2つのワークショップが開催された。
「QUEST EDUCATION」はアクティブ・ラーニング型教育カリキュラム。今回は、社会課題を題材にした「ソーシャルチェンジ」の授業形式で正解のない課題の解き方を習得していく。ソーシャルチェンジで実現したいのは、当事者意識を育むことだという。
会場では、5人1グループのチームに分かれ、「困っている人」をテーマに実践がスタート。
まずは1人で考え、その後チームで意見を話し合い、アイディアを企画にまとめ、プレゼンテーション、最後に振り返るという流れ。
1人の作業では浮かんだ考えを黙々と書き出し、共有の時間からは意見交換が徐々に生まれ、どよめきや笑いが起き自然と会場の空気が動き出す。
チームで「助けたい困っている人」を決めた後は、模造紙でポスターを作成、プレゼンの準備に取りかかる。どのチームも積極的に取り組む姿が伺えた。
自分と他者との相互作用の中で、一連のプロセスをとおして、自分の考えを広げたり深めたり、そこから納得や発見も生まれる。まさに自分事として設定したテーマを探求し、意識を高め合うワークショップとなった。
一方、「ClassiNOTE」を利用した「教科型アクティブ・ラーニング」の会場は、2人1台のタブレットが用意されていた。
「ClassiNOTE」では、生徒が手元で書いているものが、教師側でリアルタイムに把握できる。アプリではなくWebブラウザのため、タブレット、スマートフォン、PCなどデバイスを問わず利用できるのが特長。
事例発表に2校の教諭が登壇した。
東京都目黒区にある日出中学校・高等学校では、中学1年生と高校1年生にiPadを1人1台貸与し、今年度から「ClassiNOTE」を採用。同校の真栁秀俊教諭は、「ClassiNOTE」の導入で、習熟度が低いクラスの授業の変化や、クラスの団結力がアップするなどの効果がみられたといい、また「ClassiNOTE」を器用に使いこなす生徒も現れ、生徒から学ぶことも多いという。あまり制限を付けず、生徒に好きなようにやらせてみるのが活用ポイントとアドバイスした。
兵庫県西宮市にある報徳学園中学校・高等学校も今年度から「ClassiNOTE」を導入。中学1年生にiPadを1人1台貸与している。同校の新庄秀臣教諭は、英語の授業やプレゼンなどでの活用事例を紹介。またアクティブ・ラーニングをする際はやらざるを得ない環境を意識しているといい、ICT機器があることで、実践中に生徒自身が気づけていない間違いなどをその場で指導できるのが利点の一つと語った。
教科型ワークショップは隣の席の人とペアを組みスタート。資質・能力育成コンテンツを使って生徒の立場で「ClassiNOTE」を体感してみる。
算数の問題が出題された。設問は「バットとボールがセット価格1100円で売られています。バットはボールより1000円高い。そのとき、ボールの値段はいくら?」というもの。
手元のタブレットの解答欄に答えを書き込む。会場前方のスクリーンには全員の解答が一覧で映し出される。解答を締め切ったのち、タブレットでも全員の答えが閲覧できるよう操作。他の人の解答に不安げな表情の先生もいる。100円の解答が多いなか、正解は50円。この問題、実は有名大学の学生でも5割以上が誤解する問題だったと種明かし。会場に安堵の笑みがこぼれる。
次は、図形を描いてみる。お題は「ドラえもん」。ここでも描いている様子が前方のスクリーンに一覧でリアルタイムに映し出される。Webブラウザとは思えないほどスムーズで滑らかな表示。実にさまざまな「ドラえもん」が出現した。
他の生徒の解答に対して「コメント/いいね」を付けあえる機能や、「わかった・わからないボタン」のクリッカー機能などもあり、先生は必要に応じて生徒の理解度などを即時に確認することもできる。
2つのワークショップは、アプローチは異なっていたものの、具体的な課題設定や授業の進め方が示され、また授業の中で生徒がどう変容し気づきを得られるかといったプロセスを先生たち自身が体験できるものだった。詰め込んで完了するだけの丸暗記で終わる授業では、主体性を育むことは困難だろう。生徒が教室を離れた時にこそ、習得した知識や技能を持ち出して使える学びになっているかどうか。こうしたワークショップや研修などの場を手がかりに、アクティブ・ラーニング=主体的・対話的で深い学びの実現が着実に進むことが期待される。
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