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2020年12月28日

教員コミュニティMIEE Talks@Admin.によるICT活用実践集 『Sphero』で体験学習

【寄稿】
プログラミングのできるロボットボール『Sphero』を活用した “思い”に寄り添った体験学習
大島啓輔(埼玉県立熊谷特別支援学校)

1.はじめに

“創造をカタチプロジェクト”の様子

Spheroとは、画面上に描画してプログラムする「ドロープログラム」やプログラムのパーツとなるブロックやタイルを並べる「ビジュアルプログラミング」のできるロボットボールです。私が初任の時、当時本校の教員であった内田考洋教諭と関口あさか教諭を中心に実施された“創造をカタチにプロジェクト”(写真1)の活動でSpheroと出会いました。

Spheroに絵具をつけ、肢体不自由のある児童生徒が思い思いに大きなキャンパスに自由に描いている姿を見て感動したことを今でも覚えています。その際、『Spheroを活用したら、さらにもっと児童生徒の“思い”と“可能性”を広げる活動ができるのではないか』と思い、試行錯誤を繰り返しながら様々な実践を行いました。本稿では、その中から2つの実践を紹介します。

*協力:バザール(Sphero SPRK+の貸与)
*アプリは「Sphero Edu」を使用して実施。

2.本校について

本校は、小学校1年生~高校3年生までの総児童生徒数134名の肢体不自由のある児童生徒が通う特別支援学校です。「かしこく 心豊かに たくましく」を教育目標として、「児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育を行い、可能性を伸ばし保護者・地域から信頼される学校」を目指す学校像としています。近年では、児童生徒の一人一人の教育的ニーズに応じるために、iPad等のタブレット端末を活用した授業実践に取り組んでいます。本稿で紹介するSpheroも幅広い学年で活用されており、児童生徒や教師にとっても身近な教材となってきています。

3.実践①『Spheroラグビー』

本実践は、「目的に応じて、問題の発見する力や課題解決する力の育成」を目標に自分たちの力が発揮できるように計画したものであり、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップ(以下W杯)の後に実践したものです。本校が設置されている市はW杯の試合会場となっており、ラグビーに関して生徒の関心が非常に高くありました。しかし、本校広い校庭はなく、環境が整っていないため、また生徒たちは身体に障がいがあるため、実際のラグビーを実施するのは困難でした。そこで、Spheroを活用してラグビーを体験する活動を実施しました。

Spheroラグビーのルール

本学級の高等部の生徒4名を対象に行いました。4名のうち2名は電動車いすを操作しており、2名は不安定ではありますがクラッチ等を使い自分の力で歩いて移動することができます。それぞれの身体的特性や活動方法にばらつきがあるため、スポーツに取り組んだ経験は少ない状態でした。全生徒が、W杯が開催されていたことを知っており、生徒の興味・関心に基づく活動であるから楽しんで取り組めるとともに、仲間と協力して活動することをねらいとしました。

・指導の実際と生徒の様子

授業の様子

Spheroラグビーでは、Spheroに違いが分かりやすくなるように、写真のように生徒一人一人の顔写真をつけた紙コップをかぶせました。活動は2人1組で行い、活動しやすいように特別ルール(表1)を設定しました。生徒がルールに慣れていく必要があったので、①ジョイスティック操作、②ドロープログラム、③ブロックプログラムの順で取り組みました。「ジャッカルがしたい!」「トライ!」といった言葉や「くるくる回ってみよう。」「こうやって動いてみたらどうだろうか?」などお互いに相談したり意見を言い合ったりしながら活動する場面が見られるようになり、ねらいに沿った活動を実施することができました。

4.実践④『Spheroボッチャ』

Spheroボッチャのルール

ボッチャは、2016年に行われたリオパラリンピックで日本代表が銀メダルを獲得してから、非常に注目されている競技です。今回の参加者の多くは小学生以下の子どもたちで、ボッチャについての理解は「TVなどで見たことある。」「やったことある。」など興味関心が非常に高かったです。

・指導の実際と活動の様子
ボッチャのルールを参考に作ったルール(表2)で、 ①ドロープログラムで床に置いてあるA4用紙の上にSpheroを止める、②3人1組のチームに分かれ試合の順で活動をしました。「くるくる回りながらボールに近づけてみたい。それがロマンだ!」など、子どもたちそれぞれの個性のある投球をする様子が見られました。

5.終わりに

当日の様子

2つの実践では、児童生徒の“思い”に寄り沿うことを意識し、“可能性”を広げることを大切にしながら実践しました。『Spheroラグビー』では、W杯が行われ児童生徒の興味関心が高まっており、ラグビーをやってみたいという“思い”がありました。しかし、身体障がいのある子どもたちが実際に体を動かして体験することは難しいのですが、Spheroを使用することでスポーツを体験する“可能性”を広げることができました。

『Spheroボッチャ』では、Spheroでボッチャができないのかという本校の生徒の“思い”から実現を目指しました。そこで、プログラミング教育と合わせることで、パラスポーツに馴染みのない子どもたちにもボッチャを知り関心を高めるという新たな“可能性”を広げることができました。これからも、児童生徒の“思い”に寄り添い、“可能性”を広げていくことを大切にした実践を行っていきたいと思います。

イラスト:Atelier Funipo

《プロフィール》
大島 啓輔(おおしま けいすけ)
埼玉県立熊谷特別支援学校 教諭

2017年よりマイクロソフト認定教育イノベーター。
MIEE Talks@Admin. 彩特ICT/AT Labo. SOZO.Ed に所属。
肢体不自由障害のある児童生徒に、スイッチ教材やタブレット端末等のICT機器を活用して児童生徒の主体性を引き出す授業を実践している。

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