2021年4月7日
教科書のコードを写すだけでない、生徒が自分で考えアプリを作るMonacaによるプログラミング授業/知徳高等学校
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知徳高等学校は、静岡県駿東郡長泉町にある私立校。普通科、情報ビジネス科、福祉科、創造デザイン科の専門性あふれる4学科9コースを設置し、グローバル化や技術革新が進み、大きく変容する社会で求められる人材を育成する。
情報ビジネス科情報コースの伊澤敏之教諭と3月1日に卒業式を終えたばかりの生徒4名にMonacaを活用した授業について話をきいた。
教科書の例題はできても練習問題は解けないという課題を解決するために
情報ビジネス科情報コース2年生の「ビジネス情報」科目、3年生の「プログラミング」科目で、伊澤教諭はVBAとJavaを使い教科書の記載内容にそって授業を進めていた。生徒は教科書に解き方が載っている例題はできても、同じテーマの練習問題は解けないことが大きな課題であった。情報処理を専門とする情報コースの生徒が、なかなか自分の頭で考えてプログラミングできるようにならない、そうであるがゆえにプログラミングの楽しさ、創造の楽しさを感じさせることができないと伊澤教諭は悩んだ。
解決策を模索していた時、静岡県商業科教員研修で受けたMonacaを活用したプログラミング授業が転機となる。Webブラウザで開発ができ、実際に動くものが作れるMonacaなら実践的でものづくりを楽しめ、解決につながるのではという直感があった。
研修後すぐに伊澤教諭はMonacaで研究授業を行い、生徒が楽しんで自分で考える姿を目の当たりにし、その思いは確信へ変わったという。
情報コース3年生のプロジェクト型の学び、ひと工夫でクラスの仲間が笑顔になる体験
2020年度、情報コース3年生は10月から1月までの4カ月間、「ビジネス情報管理」「ビジネス情報」「課題研究」という3教科を使って生徒主体で協働するプロジェクト型の学びに取り組んだ。
はじめの1カ月間は、Monacaの公式テキスト、公式動画教材を活用してHTML、CSS、JavaScriptの基礎を学び、小テストを通じて理解を深めた。アルゴリズムの基本的な考え方は学習済みだったのでWebアプリを作る上で必要な知識をこの期間に集中的に押さえた。
おみくじや心理ゲームなどのサンプルコードの改造は、生徒にも好評だった。教科書のコードを写すのではなく、実際に動くアプリを自分の手で作れるのだ。少し工夫を加えるとクラスの仲間の笑顔という反応も得られた。実践的で楽しめるので、自然と主体的な姿勢になり成果が出た、それが自信に繋がっていった。
プロジェクトの遂行で得たコラボレーション力、コミュニケーション力
クラスの生徒は数名ずつ、12のグループに別れてアプリ制作に取り組んだ。まずはテーマや役割を決めてプロジェクトが始動した。
ゲーム作り、演劇に関する業界用語辞典、英単語学習アプリ、ロールプレイングゲーム、情報処理検定対策アプリ、長泉町アプリなど、各グループのテーマは多岐に渡った。
「長泉町アプリ」を開発した大川さんは、「知徳高等学校のある長泉町には3年間通ったが、実はあまり町について知らないのではないかと気がついた。自分も含めクラスのみんなに楽しみながらもっと町を知ってもらいたくてクイズアプリを作った」とその制作への想いを語る。クイズに回答した時のリアクションは単に正解不正解だけではなく、長泉町の観光交流協会へ出向いて取材を行い得た深い情報を表示するなど、丁寧に作りこむ。
生徒らの開発中に苦労は全くなかった、基本的にはファシリテーターとして見守ることに専念したと伊澤教諭は笑顔を見せる。生徒らは積極的な姿勢で取り組んでいて、困った時にだけサポートを求める。例えばチームワークに関することであれば助言を与えればよかった。技術的に高度なことを要求されたら、伊澤教諭が解決するのではなく一緒に考えたり、あるいは連携する沼津情報ビジネス専門学校やアーツカレッジヨコハマの講師とのパイプ役をつとめたりするだけであったという。
卒業をひかえた3年生ということで外部の講師や観光交流協会の職員とのやりとりを通じて、学校内だけでなく外部の大人とのコミュニケーション力もつけてほしいという伊澤教諭の思いもあった。
課題研究発表会
1月、各グループのアプリが完成した。静岡県商業高等学校課題研究発表大会にも成果物の映像が提出された。1月21日には、クラス内の課題研究発表会として、グループごとのプレゼン大会が行われた。もっとも喝采をあびたのは、伊澤教諭がボスキャラとして登場するロールプレイングゲームだ。まったくのゼロから開発した非常に完成度の高い凝った作品であった、と生徒らも教諭も称賛する。
「すごいな」という憧れとともに、「自分も進学した先でしっかり学んで、ゼロからプログラムを作れるようになりたい。こういう技術を身につけていきたい」とやる気を見せる生徒の様子が印象的だった。今回は少し思うようにいかない部分が残った生徒は、「やりきれたのはよかったが満足とまでは言えない」「まだ完成といえないのではないか。これでいいのかという思いが残った」と悔しさを滲ませる。一様に次のステップで力をつけて満足のいくものを作りたいと語る表情には、強い意思と、やれるという自信が現れていた。
4人の生徒は、システムエンジニア、組込技術を学び人々の生活が豊かになるロボットの開発、人の役に立つものを作り出すなど目標をもっており、進学先でプログラミングをも更に学びたいという。
伊澤教諭は生徒らに、失敗してもよい、失敗を糧にもっと学び、力をつけて社会に飛び立ってほしいとエールを送った。
卒業式後の最後のHRを盛り上げた「3JB図鑑」アプリ
3月1日、卒業式後のHRはパソコン室で行われた。プロジェクターには生徒の開発した「3JB図鑑」が表示され最後のHRを盛り上げる。クラス35名全員のプロフィールを閲覧できるアプリだ。写真や趣味、特技、笑いを誘う楽しい一言をそえる生徒もいる。開発した和泉さんは、「2年間ともに楽しい時間を過ごした仲間の思い出を残せるアプリを作りたかった。情報を集める苦労があった、肖像権や個人情報もあって慎重に扱わなければいけないことも痛感した。開発やデバッグ(欠陥を発見・改修する作業)が間に合わずに放課後や家で取り組んだこともあった。受験勉強が忙しい時にグループメンバーと協力し合うなどスケジュール管理、効率アップも工夫した。」と振り返った。
伊澤教諭がMonacaの授業で目指した、実践的で主体的な学び、ものづくりの楽しさを感じることができる学びの成果がうかがえる言葉だ。
Monacaを活用したプログラミング授業への大きな期待
来年度は、情報ビジネス科はもちろん、2022年の「情報Ⅰ」必修化を見据えて普通科の授業でもMonacaの活用準備に挑戦したい。商業ビジネス部という部活動にも力を入れていて、地域や企業と連携し実践的なアプリを楽しみながら生徒と作っていきたいと、伊澤教諭。コミュニケーション力、コラボレーション力を育むMonacaを活用した実践的なプログラミング授業展開への期待は大きい。
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