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2020年2月3日

光明学園相模原高等学校、ICT活用による思考の時間を創出

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仏教の思想を根本に1919年に創立した光明学園相模原高等学校。創立100年を超える伝統校だ。総合、体育科学、文理の3コースに1600名ほどの生徒が在籍する。文武両道をモットーに据える同校はスポーツの強豪でもあり、放課後の校舎には運動部の掛け声が響く。伝統芸能に力を注ぐ文化部も、インターハイほか輝かしい成績を称える賞状や盾が玄関口にずらりと並ぶ。

同校には、2部屋あるパソコン教室にデスクトップが80台、その他250台の端末がある。加えて、2019年4月からは新1年生500名を対象に500台のChromebookを購入し1人1台端末の環境を整え、同年9月には48クラスの普通教室に電子黒板を設置した。段階的にICT環境の整備を進め、学校全体で使いはじめてからは1年弱だという。

ICT活用について清水尚人校長は、「時間の上手なやりくりの急務化」を挙げる。「端的に言えば、教育の質の向上の支援。基礎学力の習得は重要で昔もこれからも変わらないでしょう。しかし、同じ学習時間でありながら、その質と充実が問われる時代。限られた時間の中で、基礎を習得した上で、生徒が思考して判断するステップを踏むための時間を確保するにはどうしたら良いか。そのための学習環境をどう作るか。電子黒板一つとっても時短になり、節約できた時間は知識の活用の時間にあてられます。どう習得し、活用し、表現していくか。PDCAが上手く回ると、今まで以上に生徒たちの学びへの興味関心も増えていくと考えます」と語る。

もう一つが「成果の可視化」。真面目だが勉強が苦手な生徒も多い。できることの可視化で彼らに成果を実感させたいという。例えば、英語4技能の定着が求められる中、英検取得もその一つ。他にも、問題発見や解決を見出せる力。他者と情報共有しながら、その場に合った最適解や納得解を得る能力。ICTを取り入れることで生徒の人生が心豊かなものになるだろうと確信しているという。

ICT環境構築までの道のり

1991年にコンピュータ委員会を立ち上げたという同校。当時は手作りの有線LANを敷いていた。その後、新校舎を建てた2003年にパソコン教室を整備し、校内の全てに無線LANを導入。しかし当時の活用の広がりは情報科のみ。活用する教員もいたが、サーバを設置し最新仕様を取り入れたことで、ランニングコスト、メンテナンス、アクセスポイントなど費用がかさんで一時凍結した。

光明学園相模原高等学校 清水尚人校長

その後は時代の流れもあり、全校内で生徒たちがタブレットやノートPCを使った授業展開ができないか、教員たちの教材を先述の目的に合わせて使えないだろうかと、ネットワークを再構築したという。トラフィックが途切れる他校のトラブル事例も参考に、無線LANの設計は慎重に行い、現場が困らない環境づくりに徹した。当初、こうしたICT環境を整えるための大きな投資に、教員間で賛否両論が出たという。慎重論は少なくなかった。しかし決断に至った理由を、「生徒の学力向上のみならず、職場の業務改善や学校の魅力度向上にも必要性を見出していたから」と清水校長。躊躇はなかったという。ICT活用は、大々的に実施する前に学年や小クラスなどで検証を重ねて方向性を探ってきた。現在はICT教育推進委員会を立ち上げている。

指導の安定にも「すらら」が効く

同校が「すらら」を導入したのは2014年。「勉強ができるようになりたい願望が生徒自身にはあります。すららは自分のペースで学習習慣が身に付けられる。教員の十分な伴走が必要ですが、苦手な部分を繰り返し自学自習できるコンテンツが魅力」と清水校長は高い信頼を寄せる。はじめに、文理コースの1クラスと希望者を募って英語科で検証したという。英語科の鈴木昭和教諭と、清水校長も当時は文理コースを担当しており、基礎学習のばらつきに「すらら」を活用した。

英語科 鈴木昭和教諭

その後、2016年の新入生において文理コースの2クラスで1年間の外部模試の結果を観測したところ、全体で偏差値が5.4ポイント上昇する成果が表れた。成績が向上したこと以上に、鈴木教諭が注目したのはデジタル教材の「使いよう」だ。この時、1クラスは鈴木教諭が、もう1クラスは別の教諭に任せて、鈴木教諭が出した課題を同じように実施してもらったという。人によらず、デジタル教材を上手く同じように使えば同じような成果を出せるということ。「すらら」の活用は指導のばらつきも均していく効果があるという結果でもあった。

理想は、気づいたら終わっている授業

現在、「すらら」は総合コースと体育科学コースの1、2年生の英語科で主に使用している。今年は、家庭学習で「すらら」を使い、授業では演習や深い理解を促す「反転授業」のクラス作りを軌道に乗せたいという鈴木教諭。

「生徒の頭を動かしたいと考えた時に反転授業は使いやすい。『すらら』なら動画など教材作りが全て省けますし、『すらら』を使って授業を構築すればいいだけ。その中に思考を使うものを取り込んでいけばアクティブ・ラーニングになります」と、教員にとっては授業のプランニングがしやすくなる利点を説く。生徒が早く終わったと感じる授業は思考している証拠。自分たちで考え、なぜこの答えなのか、そうした時間を増やしてあげたいという。

「その実現にはやはり基礎学習。そこをデジタル教材に任せ、思考するための時間を創出するのが私たち教員の仕事かなと思います」。課題を出す手間が圧倒的に軽減され、達成率の確認もひと目でわかるなど、「すらら」は教務の省力化にも威力を発揮する。その分のエネルギーを授業の充実にあてられる。清水校長が言う「時間の上手なやりくり」につながる。

ICT教材を組み合わせた授業

鈴木教諭は、個別学習教材に「すらら」+ 協働学習ツールに「schoolTakt(スクールタクト)」と2つのICTツールを組み合わせた授業実践もしている。「schoolTakt」は(株)コードタクトが提供する授業支援システムで、生徒同士の解答の共有やコメント機能での情報交換など学び合いの学習環境をWebブラウザだけで容易に構築できる。

もともとペアワークを紙のプリントでしていたが、すららネットの担当者の勧めもあり、上記の組み合わせを1回だけやってみようとはじめたのがきっかけだった。当初、紙をそのまま「schoolTakt」に移動させてパソコン上でやってみたが生徒には不評。しかし、他者の解答が見えるのは面白いという感想などから使い方を練り直した。ペアワークで日本語文を作り、英文にして、お互い添削しながら綺麗な文章に作り直す、その文章をクラスの全員で見せ合って添削する、といったプランにしたところ「これは面白い!」と生徒の反応が一転した。「教員の使い方次第。生徒の意見も聞きながら一緒に授業を作り上げている印象」だと鈴木教諭。面白い授業なら生徒の興味関心も自ずと増していく。ICT活用のメリットを生徒と協働で最大化している様子だ。

学校全体での広がりに期待

同校のICT環境を構築するまでの道のりは決して容易なものではなかったという。しかし、先見性と信念を持った推進が、現在の数々の取り組みを形づくっている。

鈴木教諭は、ICT活用の意義を見出した人、戸惑う人、どちらの教員の気持ちも理解できるとした上で、「ICTを活用できる先生はどんどんトライして、上手くいったこと失敗したことを学校全体で共有したい。お互いに切磋琢磨できるような関係性が築けたらいいですね。100%の支持は難しくても、可能性を出し合えるような事例を日々作っていきたいです。生徒とこれ面白いねと楽しめる授業を作っていけるように」と話す。清水校長も、「教員と生徒が協同したり、ナイスなアイディアを共有したり、それいいねと認め合えたら最高」と笑顔を見せる。「これから入学してくる生徒たちは明らかに新しい教育を受けてくるデジタルネイティブの世代。縦横に広がりのある学び、それこそがこの先の時代を生きる子どもたちが扱っていくもの。私たちもその準備をしていきたい」と、今後もICT活用の検証や好事例を重ねる意向だ。

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