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2021年7月23日

ベネッセがAIによるスピーキング評価支援ソフトを開発/ 教育のデジタル化を牽引する戸田市で英語パフォーマンステスト実施

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2021年4月、(株)ベネッセコーポレーションは児童の話す英語の評価を「小学生の話す英語に特化したAI」で支援するツール、「Speaking Quest」をリリースした。昨年の11月26日、リリースに先駆け、戸田市立美女木小学校の5年生3クラス110名ほどの児童が「Speaking Quest」による英語のパフォーマンステストに取り組んだ。モニターとして参加した児童や教師らの授業を参観し率直な感想や期待を尋ねた。

「Speaking Quest」の構想段階から企画を進めてきた(株)ベネッセコーポレーション 小中学校事業部 福田 啓 課長には、製品開発の背景にある全国の教師らの声と、小学校英語を通じて子どもや学校現場をどのように支援していきたいのか、その想いを訊いた

「Speaking Quest」に取り組む美女木小学校の児童たち

児童が「Speaking Quest」でパフォーマンステストに取り組む

モニター授業で児童は、教師の説明に耳を傾け1人1台のChromebookを前に慣れた様子で「ミライシード」の「スピーキングクエスト」ボタンをタッチしてテスト画面を開く。ヘッドセットを装着すると、「ヘッドセット似合うね。」「野球中継のアナウンサーみたい。」と楽しげだ。「Speaking Quest」でマイクのチェックが開始されると、 “Hello.”という児童の声があちらこちらから聞こえてきて、ほどよい緊張感に包まれた。

ヘッドセットを装着し英語を話す児童

児童が取り組むテストは「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力(やりとりを主体とした会話)」、「思考力・判断力・表現力(発表)」という3つのセクションで構成される。それぞれのセクションは、主人公キャラクターによるアニメーションストーリーの展開、例題、全3パートからなる問題という構成だ。

「友達とパーティーに来たよ、はじめて会った子に挨拶をしよう。」など、あくまでも自然な状況設定と文脈、タスクベースの問題構成を通して、いつもの授業で習った英語の会話を実践する。

「Speaking Quest」の問題(練習モード)

キャラクターが問いかけると、児童は画面にマイクのアイコンが表示されている間に英語で答える。“Can you play tennis?(児童)”、“ I can play tennis. What sports do you like?(CPU)”、“I like~~.(児童)”
思い思いに英語で答える声が教室にあふれる。

各セクションでは問題はランダムに出され、隣の児童の解答をそのまま繰り返すというようなことにはならないよう工夫もされていた。しかしヘッドセットをしてキャラクターとの会話に没頭している児童は、隣の声をあまり気にしていない様子であった。

20分ほどでテストを終えた画面には、アンケートに続いてナビキャラクターからのねぎらいコメントとともに「きみのすごいところ(よくできるところ)」、「さらにパワーアップ!(来学期がんばるところ)」という児童一人ひとりへのレポートが表示される。アドバイスを読んで復習画面に挑戦する児童の姿も見られる。

英語の勉強なのにストーリーがあってゲームみたいで楽しい、AIの方が緊張しない

パフォーマンステストを終えて次もやりたいと口を揃える児童

テストを終えて児童は「英語の勉強だけどストーリーもしっかりあって楽しめた。」「いつもの授業で習った単語や会話を使えたのがよかった。」「テストという感じがしなくてゲームっぽかった。普通に楽しかった。」と笑顔を見せる。ゲームのようなインターフェイスとご褒美の宝物、セクションの途中で「いっしょにがんばろう!」「その調子!」と寄り添うキャラクターなど楽しい演出がやる気を高める一助になっている様子だ。

「テストだけどAIの方が緊張しない。」という児童の言葉が多く聞かれたのは非常に印象的だ。

「話す」評価の難しさ、AIと録音機能を利用し正当性を担保する

2020年、英語が教科化され、4技能5領域(「聞く」「読む」「話す:やりとり」「話す:発表」「書く」)は3つの観点(「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体性」)での評価が必要になった。「聞く」「読む」領域については、授業での活動の様子を加味しながら、ペーパーテストの結果や振り返りの自己評価を参考にした評価ができるだろう。

しかし、「話す:やりとり」「話す:発表」領域については、客観的に正当性を担保した評価をするためには準備から実施まで教諭に大きな負担とスキルが要求される。美女木小学校でも英語専科の教師らと児童が1対1の会話によってスピーキングテストを行ったことがあるという。多くの時間を費やした非常に誠実な対応で児童の英語力の高さも頷ける。それでも児童はテストを前提とした1対1の会話は緊張したようで、「AIの方が緊張しないで英会話の力を発揮できる」という感想につながっているのだろう。

真田尚也 教諭(左)磯部唯 教諭(右)

真田尚也教諭は、「通常の授業では英語に苦手意識のある児童はあまり積極的に取り組めないこともあるが、「Speaking Quest」では拒否反応を見せずに楽しんでいる様子が伺えた。みんながそれぞれに集中して取り組める雰囲気も良いのだろう。テスト後に表示される評価も、担任が行うより詳しく一人ひとりに対応でき、負荷軽減も期待できる」と手応えを語る。一方で「評価をAIに任せるのではなく担任や専科教員も音声を確認することができる」ともいう。その観点から磯邉唯教諭は「Speaking Quest」の録音機能を高く評価する。児童の発した解答は録音され、後から教師が評価を調整することも可能なのだ。AIによる評価と録音機能を利用した教師らの評価とを合わせて、負荷軽減を図りつつ正当性を保つことが児童のやる気にもつながるのだ。

子どもが自信をもって意欲的に英語を学べるようテクノロジーで支援したいという想いで

(株)ベネッセコーポレーション
 小中学校事業部 福田啓 課長

(株)ベネッセコーポレーション 福田課長は、これまでの「外国語活動」は、児童が話す楽しさを感じて自信をもって取り組めるという観点においては成功してきたと語る。教科化に伴い成績評価を行う過程において、ペーパーテストによる評価に偏り、児童がやる気を失うようなことがあってはならないと強い危機感を持つ。なぜなら、「聞く・話す」活動がうまくいけば、自信をもって意欲的に「読む・書く」にも進めるからだという。

全国100以上の学校や教育委員会の担当者に英語教科化の課題についてヒアリングを行い、学校で解決したい課題が、「指導方法の不安や児童の英語力の定着」と並び「評価方法」にあること、英語専科教員やALT等の外部人材の存在に「地域差が大きい」ことを把握した。こうして全国の学校現場からの声と、小学校で子どもが自信をもって意欲的に英語を学べるようテクノロジーで支援したいという開発チームの想いが「Speaking Quest」の開発へとつながったのだ。

教師を支援するための機能を、導入しやすい価格で実現

「Speaking Quest」は、小学5、6年生対象のクラウドサービスのスピーキング評価支援ツールだが、それだけではない。年3回のパフォーマンステスト(テストモード)に加えて何回でも利用できる単元ごとの練習コンテンツ(練習モード)を備えている。

「Speaking Quest」を使った授業風景

教師向けの画面には、即時採点された全児童のテスト結果とアンケートの回答、録音された児童の回答の再生ボタンが一覧されている。再生ボタンは、AIによる評価はあくまでもサポートで実際の児童の回答を聞いて評価したいという全国の教師からの声を反映し、使いやすく配置したものだ。アンケート結果からは、授業が理解できているか、英語が好きか、どんな風に英語を使っていきたいか、といった児童の意欲が読み取れるよう工夫され、教師へのフィードバックにもなっている。教師の評価を支援し負荷を下げ、普段の授業準備や指導方法の研究、児童の見取りに集中できるよう環境を整えることに注力している。

価格についても全国多くの学校を支援したいという思いから、導入しやすさを最大限に考慮して決めたという。

もっとも大切なのは児童の自信とやる気を下げず中学校へ接続すること

客観的で妥当性のある評価は重要であるが、児童の自信とやる気を下げないことが最も大切だと福田課長は強調する。そこで、練習モードで何回でも練習し慣れてからテストに臨めるようにしている。9問構成のテストだが、1問も答えられない場合や正解が無い場合には、補助(ヒント)付きの問題が出題される仕組みになっている。テスト後に表示される評価画面に得点を表示せず「できること」を表示するというのも児童のやる気への配慮だ。これらにも全国の教師からの要望が反映されているという。

英語上達には、アウトプットだけでなく、インプットとアウトプットのラーニングサイクルも重要だと福田課長。リスニング、語彙、アルファベット、フォニックスを個別学習でインプットできる機能を拡張して、児童の英語学習のサポート強化も計画している。

教師らの真摯な取り組みを子ども達の力や可能性につなげるために

小学校英語の成功は、日本全体の子ども達が国際社会で活躍するための土台となる。英語は楽しい、英語を使って多様な国際文化に触れたいという意欲を持つ児童が、正確性ばかりを問うような英語教育によって、その気持ちを途切れさせてしまうとすれば将来の可能性をせばめることになる。小学校の教諭らが課題に向き合いながら真摯に取り組んでいることも痛感している。その姿勢や努力を子ども達の力や可能性の拡大につなげられるよう、これからもテクノロジーの力で支援し続けたいと、最後に福田課長は力強く決意を語った。

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