2021年6月14日
普段の授業にスムーズに導入。先生も生徒も考えの見える化の効果を実感/伊那市教委 スクールタクト 導入事例
伊那市教育委員会(長野県)スクールタクト 導入事例
普段の授業にスムーズに導入。先生も生徒も考えの見える化の効果を実感
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長野県伊那市では、総合的な学習の時間に力を入れています。生活の中に学びがあるという考えのもと、子供たち自身が考え、気づくことを通して生き抜く力を育むことを大切にしています。ICTにも力を入れており、森の中でのICTの活用など、最先端のツールと昔からの学びを両立させ、地方にいながら世界に通用する力を身に付けられる教育を目指しています。
伊那市教育委員会 学校教育課 ICT教育推進係長 竹松政志氏と伊那市ICT活用教育推進センター/高遠中学校 足助武彦教諭にスクールタクトの導入経緯や利活用を進める工夫について伺いました。
普段の授業の流れを変えることなく導入できた
―スクールタクト導入前の状況を教えてください。
竹松:伊那市はiPadを導入していますが、「使えるアプリはないか」とアプリ頼みになっていました。アプリの特性に応じて授業を構築する必要があり、場面ごとには使えても授業の一連の流れの中での活用は難しいという状況でした。そのためICTを活用して子供たちの意見を集約するところまで踏み込めていませんでした。
―スクールタクト導入の決め手は何でしたか。
竹松:スクールタクトならアプリに授業を合わせるのではなく、「課題配布、課題に取り組む、机間巡視」という普段の授業の流れを変えずにICTを活用できると感じたことです。
加えて、「わかった・わからないボタン」など児童生徒の状況がわかる機能がある点が決め手でした。スクールタクトによって、大人しい子供の反応などこれまで見えなかった部分も見えるようになりました。
プロセスを含め、考えを「見える化」できることが大きな魅力
―子供たちの状況がわからないという課題があったのでしょうか。
足助:机間巡視では、考えた過程の全てを見ることはできません。スクールタクトなら書き換える前の状態を含めて見ることができます。「子供たちが書いたものがリアルタイムで見える」のは、シンプルな機能ですが教員にとって非常に重要です。
また、教員は子供の状況や考えをベースに授業を構築します。例えばある課題の回答を回収し、縮小コピーして全員分を1枚にまとめ、次の授業で配布しその問いについて議論するというように、丁寧に授業を構築しようとするほど準備には手間がかかります。スクールタクトなら全員の考えを「見える化」することが一瞬でできるのも大きな魅力です。
自分の考えを表現し、共有することで考えが深まる
―現在のスクールタクトの利活用状況を教えてください。
竹松:市内には小中学校が21校あります。昨年までは各校3クラスに1セットしかiPadの用意がなかっため、利用率は3割程度で、毎回の授業で利用する先生もいれば、遠慮する先生もいるという状況でした。
昨年12月には一人一台の配布が完了しており、現在は利用率も上がっている状況です。
―どのように活用されていますか。
足助:授業では、課題を配布し、各自が書き込んだ意見を共有することで考えが深まっていくという使い方をしています。スクールタクトを使うと、紙だと提出しない子も喜んで提出するんです。今の子供たちのライフスタイルに合っているのかもしれません。
また、コロナ禍の休校期間にスクールタクトで日記を書く試みをしたのですが、授業以外でも使えることがわかり、利活用の幅が広がりました。
竹松:ブラウザで動くため、インターネット環境があれば場所を選ばないのもメリットです。これまでのソフトウェアは学校内でしか使えませんでしたが、スクールタクトなら児童生徒がどこにいても教室に近い環境を構築できます。教員もどこからでも課題を作成、配布できます。伊那市ではコロナ禍の学習はもちろん、遠隔授業にも活用しています。
―遠隔授業とはどんなものでしょうか。
竹松:ビデオ会議システムで複数の学校を繋いで授業を行っています。小規模校では、同じメンバーで長く過ごす中で意見が固まってきてしまうことがあるため、遠隔授業は様々な知識や意見に触れることができる非常に良い機会です。そのような課題解決のために始まった取り組みですが、今では小規模校に限らず実施しています。
―遠隔授業ではどのようにスクールタクトを活用されていますか。
竹松:ビデオ会議システムだけだとお互いの手元が見えないので、スクールタクトをで課題を出し合ったり、共同閲覧モードで意見を共有しています。
先生も子供たちも、考えを「見える化」できるメリットを実感
―授業や準備に変化はありましたか。
竹松:課題の配布・回収の時間短縮など、効率が良くなりました。また課題をスクールタクトで作成することで紙よりも見やすくなったという声をよく聞きます。
ただ、先生方は効率化よりも子供たちの考えの「見える化」や机間巡視では拾いきれなかった意見の集約という点にメリットを感じているようです。スクールタクトで見ていると、考えを表に出せない子や机間巡視中にノートを隠してしまう子も素晴らしい意見を持っていることに気づくことができます。
―子供たちの感想をはいかがですか。
竹松:9割以上の子供たちが授業が楽しくなったと言っています。意欲向上にもつながるので何よりです。他の人の考えが見られて良いという声も多いです。あまり話す機会のなかった友達の考えに触れ、その子のすごいところが見えるなど、子供たちもその良さを実感しているようです。
コロナ禍のスクールタクトでのオンライン授業を経て、学校に来られなかった子が登校できるようになったという話も聞きました。
利活用のカギは、「子供たちの学びにとってプラス」と実感してもらうこと
―多くの先生に使ってもらうためにどのような工夫をされていますか。
竹松:ICTに明るい先生ばかりではないので、2014年から足助先生に各校を回ってもらい研修を実施しています。簡単な機能から使い始めたり、先生が授業で困っていることがスクールタクトで解決できることを伝え、利活用につなげていきました。
―市内での利活用を進めるために、活用している学校の数を増やすという観点と、学校内で使っている先生の割合を増やすという観点があると思うのですが。
竹松:学校数を増やすのは、校長先生の理解が得られれば早いです。活用する先生を増やすには、抵抗感をぬぐう必要があります。特に「子供たちの学びにとってプラスになりそう」「授業で使える」と実感してもらうことが大切です。実は、使ってみて合わないという先生はあまりいないんです。故に、使うきっかけづくりと丁寧なサポートが大切だと思います。
優等生もなかなか答えを書けない子も、他者の考えに触れて学ぶことが可能
―スクールタクトで友達の考えに触れ、学んだ子供たちはどう成長していくと思われますか。
足助:クラスには優等生もいればなかなか答えを出せない子もいます。どちらのタイプの子も、スクールタクトで他の人の考えに触れ学ぶことができます。
優等生タイプの子は、仮に不正解であっても友達の考えを知ることはプラスだと言って喜んでいます。色々な考えがあることを認識しつつ努力できる人に成長できるでしょう。逆にすぐに答えの出せない子は、スクールタクトで友達の解き方を見ることで分からないまま過ごす時間が少なくなります。他者の考えを参考にして取り入れることを身につけたり、自分の考えに気づいたりすることができるんです。
家庭学習と連動した授業でこれからの社会で求められる力を育成したい
―今後スクールタクトをどう活用したいですか。
足助:家庭学習と授業をもっと連動させたいです。「子供たちの回答をコピーし、次の授業で配って共有する」という授業の流れの前半部分を、家庭学習でやってしまうんです。教員は家庭学習の状況をスクールタクトで確認し、それを元に授業を構築できます。子供たちは予習した状態で授業に臨みますから、知識を注入する授業ではなく、友達と議論しながら自分の考えをまとめていく授業を展開できます。これからの社会で求められる力を育成することができると考えています。
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