2021年9月7日
GIGAスクール環境におけるタブレット端末とロイロノートを使った多読多聴教材(スカラスティック)の導入事例/京都教育大学附属京都小中学校
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「一般的に、国立大の附属校=進学校というイメージを持たれがちですが、そんなことはないですよ」と語るのは、京都教育大学附属京都小中学校の英語科主任・今西竜也教諭だ。同校もまさしく国立大附属だが「例えば本校の英語カリキュラムは、大学・高校の入試問題が解けるようになることを目的としていません。あくまで、英語で他者と意思疎通し、関係を築ける力を養うことがゴールなんです」と強調する。そんな同校における英語多読の取り組みと、そこに用いたスカラスティック(SCHOLASTIC)社のデジタル教材「BOOKFLIX」「Literacy Pro LIBRARY」の活用事例に迫る。
「なぜ学ぶのか」という原点からブレない、オーセンティックな学習
英語に限らず、入試を意識するあまり学習行為がテクニック化してしまい、学びの本質から遠ざかっているのではないかという批判は後を絶たない。その点で国立の学校は、全国の学校の範となる教育研究機関としての役割も担っているため、「何のために学ぶのか」という原点から決してブレない。進学力の向上は副産物であり結果論だ。つまり、学びの質や目的が非常にオーセンティック(「本物の」「真の」の意)であると言えよう。
いわゆる“受験英語”は英語能力におけるパーツの一部に過ぎず、英語そのものの力がつけば、必然的に受験英語も対応できるというのが同校と今西教諭の考えだ。
洋書多読に取り組むも、蔵書数に課題
そんな同校が英語教育で重視しているのが、洋書の多読だ。今西教諭は、こう理由を語る。「日常で目に入るものくらいは、自然に英語で表現できるようにしてあげたい。しかし、教科書の本文は基本的に短く、学べる単語数も限られています。例えば『ハリー・ポッター』1冊だけで約7万語の単語が出てきますが、これは小学校から高校までの教科書に出てくるすべての単語を合計しても、まったく届かない数字です。そこで、実用を意識した多様なシチュエーションを網羅しつつ英語に触れるため、たくさん本(洋書)を読んで欲しいと思いました」。
一方で、課題もあった。学校の洋書蔵書には限りがあることだ。誰かが借りていれば順番も待たなければいけないし、限られた予算の中では蔵書を増やすのも困難だ。かと言って、各家庭で購入してもらうのも負担が大きい。
そこで2021年度、GIGAスクール構想に伴う1人1台の端末配備を機に、アメリカの大手児童書および教育出版社・スカラスティック社のデジタル教材「BOOKFLIX」「Literacy Pro LIBRARY」の導入を決定した。
その選定理由を今西教諭は、「海外の通販サイトで送料を払って購入したり、日本の通販サイトで輸入したものを購入したりすることを考えれば、3~4冊読めば十分もとは取れます。4月から夏休みまでで、もう3~4冊以上読んでいる生徒はたくさんいますし、インターネット環境とタブレットかパソコンがあれば、学校だけでなく家庭でも好きなだけ読んだり聞いたりできるので、価格に関しては保護者の方にもご理解いただきやすいと思います。また本校ではタブレット端末の使用にあたりロイロノート・スクールを導入していますが、教科書以外の教材とも組み合わせて使う方法を考えていました。ロイロノート・スクールを使った課題の設定やクイズ機能を使って、生徒の力に合わせて難しすぎず魅力的な活動を取り入れることができると思いました」と語る。
海外の同世代と「同じもの」で学ばせたい
「BOOKFLIX」は、英語の絵本をもとにしたアニメーション動画と、それに関連する題材を取り上げたノンフィクション書籍・写真絵本をペアにした教材。例えば「おさるのジョージ」のアニメーション動画と、猿という生き物のことが学べるノンフィクション写真絵本がセットになっており、こうしたペアが約130パターン収録されていて、ペアは毎年追加される(料金は変わらない)。今西教諭の言う「実用的」なアプローチで学べることが特長だ。
「“人工的”と言えばいいでしょうか。教科書のように『英語という教科学習のため』に作られたものだけでなく、海外の同世代の子どもたちが日常的に触れているのと同じもので、英語を学ばせてあげたかったんです。絵や写真が多く、音声での読み上げ機能もついていますので、英語の初期学習における“読み聞かせ”としてもいいなと思いました」と、今西教諭はここでもオーセンティックな学びへの思いをのぞかせる。
同校ではこれを、5・6年生の英語学習に採用。授業や週3回行われるモジュール学習の時間を活用して動画の視聴や読書の時間を設定し、1年を通して洋書と触れ合っていけるようにしている。また、読書後はロイロノート・スクールのテスト機能を使い、クイズ形式で本の内容や本で登場した単語のミニクイズを行って定着を図っている。
ポイントは「あまり『テスト』という位置づけにしないこと」だと今西教諭。「本格的な英語学習の入り口であるここで、100点を取ることが大事なわけではないんです。自分の苦手な部分を発見してもらうことが目的であり、クイズ形式にしているのもそのためです。2択問題を増やすなど、できるだけ0点を出さない問題作成も意識しています」。
個別最適化で、一人ひとりに合った選書を
中学生に当たる7~9年生(同校は小中一貫の義務教育学校)では、「Literacy Pro LIBRARY」を活用。同教材は、幼稚園児が読む絵本レベルから大人が読む小説レベルまでさまざまな難易度の洋書作品が1500冊以上収録された、デジタル本棚。本文上の単語をクリック(タップ)すると意味が表示される辞書機能、音読してくれる読み上げ機能のほか、教材の基本機能で、先生が本を選択して生徒へ宿題を出したり、生徒から先生に質問をする事も簡単にできる。そして、読んだ本の数やそれを通して学んだ単語数などがログとして残る、管理機能も搭載している。
デジタルである強みは、図書室や英語室に出向いて本を選んだり返却したりせずとも、教室や自宅で完結できることや、やはり当初の課題であった本の在庫を気にしなくていい点だろう。例えば、ぜひ学んで欲しいイディオムやテーマが扱われている本は、できれば全員に読ませたいところだが、それも問題なく行えるようになったのは大きい。
だが、同校がより重視しているのが、学びの「個別最適化」だ。児童生徒それぞれの現有学力や興味関心に合わせ、学習内容を個々にカスタマイズする発想だが、同校では時期や単元、学習者の学習の段階に合わせて多読学習を取り入れ、「Literacy Pro LIBRARY」を用い、洋書多読における個別最適化を行っている。
さらにロイロノート・スクールを使って、語彙や内容をテスト機能を使ってクイズを行って定着を図ったり、画像をカードとして用意して、それに生徒それぞれが音声を吹き込んで本紹介の動画を作成し学級で共有する活動なども行っている。タブレットを使うと画像を見たり文章を読んだりすることに偏ってしまう傾向もあるだろうが、読んだものを発信し、またクラスメイトの紹介を聞くことも取り入れて、英語の4技能を意識しながら「英語を使う」という点にもこだわっている。
その代表的な運用アイデアは二つ。一つは、夏休みの宿題で洋書の読書を課すことだ。指定の課題図書を1冊、生徒が自由に選んだ2冊を読んでくるように指導している。そしてもう一つが、9年生(中3)が取り組む洋書のブックレビューだ。生徒が読んだ本を教員にレコメンド(おすすめ)する取り組みだが、このやりとりをGoogle classroomを介して行うことで、教員もコメントやメッセージをフィードバックしている。
英語が苦手なのに、洋書を借りに来る生徒たち
英語に苦手意識を持つ生徒にとって、「勉強としての英語」は苦痛だ。しかし個別最適化によって、自分が読める、あるいは読みたい本を自由に選んで触れられる意義は大きい。今西教諭もこう手応えを語る。「教科としての英語学習だと、どうしても『できない自分』を突き付けられて、ますます苦手意識を抱いてしまいます。しかし多読の場合、あくまで自由に『読書』しているだけなので、英語の勉強という感覚がしないようです。好きな本を読んでいるわけですから、『分からないから読むのをやめる』という子もいませんし、宿題としてのアリバイ作りのために読んだふりをするようなこともありません」。
まさしく学習指導要領にも謳われた、『学びに向かう力・人間性』を発揮している理想的な状態だ。実際、英語は苦手なのに、英語室に洋書を借りに来る生徒も見られるようになったという。
レクサイル指数をもとに、最適なレベル群の本を検索
同校では、実践的な運用能力のアセスメントに特化した世界規模の英語外部テストであるTOEFL Primaryの受検に力を入れている。検定によって合否を判定するよりも、スコア式で自分の英語力の現在地を知ることを重視するためだが、このことも個別最適化や「Literacy Pro LIBRARY」と相性が良かった。
まず、TOEFL Primaryを受検すると、受検者の英語読解力を表す「レクサイル指数」が示されるが、同指数は洋書の難易度にも紐づいており、選書の指標となっている。「自分のレクサイル指数はこれくらいだから、この本は読めそうだ」といった使い方だ。
実は「Literacy Pro LIBRARY」には、このレクサイル指数に基づいた本の検索機能が搭載されている。生徒が自分の力に合った本を簡単に探したり、教員が勧めたりできようになっているのだ。ポイントは「難しすぎる本を選ばない」ことだと言う。
また、「意外な嬉しい成果も見られた」と今西教諭。「“ジャケ買い”っていうんですかね? 英語が苦手な生徒なんですが、検索をかけて、表紙デザインの好みで選んでいる子がいたんです。英語というより読書そのものを楽しんでいるので、ブックレビューでも人に勧めるのが面白いようです。ここが入り口になって、結果として英語力そのものもアップしてきました」。
「楽しいから読む」――アクティブラーナーが生まれる瞬間
今後、「BOOKFLIX」「Literacy Pro LIBRARY」の導入を検討する学校に対しても、「英語が苦痛な生徒への接点づくりに最適だろう」と分析する今西教諭。
先述したように、国立の学校は教育研究機関としての側面も持つが、これをふまえて、同校における両教材や多読の意義をこう語った。「英語で読書することにどんな気持ちで取り組むか、本校の役割はその『価値付け』だと考えます。子どもたちは、入試や実用性を念頭に読んでいるのではなく、楽しいから読んでいるんです。つまり『アクティブラーナー(自立的学習者)』であり、すべてはこの育成に帰結すると思います」。やはり、オーセンティックな学びにどこまでも誠実だ。
なお価格は、スカラスティック社がデジタル教材を世の中の学習者に広げようという社会貢献の取り組みから、他社の多読商品と比べ圧倒的に安くて、導入しやすいという。
「BOOKFLIX」「Literacy Pro LIBRARY」に関する内容や価格の問い合わせは、ダンケゼア教材担当窓口まで(kim@danke-ja.com)。
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