2016年5月27日
松田校長 前原小でプログラミング授業を自らスタートさせる
先週都内で開催されたプログラミングイベント「Scratch Day 2016 in Tokyo」の鼎談に登壇して、「校内で誰もプログラミング授業をやらないんだったら、自分がやってみせてでもスタートさせる」と豪語していた、小金井市立前原小学校の松田 孝校長が26日、本当に自分で授業をやるというので見学してきた。
はじめてプログラミングを体験した子どもたちは大喜び、来週以降自分で授業をやらなければならない6年の担任教師たちは真剣に、校長の授業に参加していた。
松田校長は前任の多摩市立愛和小学校で2015年度に15時間のプログラミング授業を実施した実績がある。もちろん、実際の授業者は教師や校外の協力者ではあったが、どの学年にどのツールを使うかなど、細かなことまですべて自分で計画して行っていた。公立小学校の全学年の教科でプログラミング教育を行ったのは、おそらく全国初の試みだろう。
もちろん政府が小学校でのプログラミング教育の義務化を表明するより以前のこと。だから、前原小学校でもプログラミング教育を積極的に進めていきたいと考えていた。
しかし、来る前から分かっていたことだが、ICT教育環境が本当に厳しい。Wi-Fiは飛んでいない、タブレットは1クラス分がやっと、プログラミング教育の経験ある教師なんてもちろんいない。
本来であれば、いま一番ポピュラーなプログラミングツールである「Scratch」を使いたいところだが、ネット環境や端末の関係で使えない。そこで今回は、オフラインのiPadで使える「Tickle」を使うことにした。
有名なScratchの意味が(ひっかく)で、後発のTickleが(くすぐる)という名前の付け方も気が利いている。
良い授業の条件が周到な事前準備であることは、ICTを使っても使わなくても同じ事だが、ICT活用の場合は特に重要である。初めてであれば尚更のことである。前日準備も、当日準備も松田校長が自分でやるのは当たり前のこと。
準備もできたし、さあ、校長先生の授業のはじまり、はじまり。
ふつうならここで「みんな、プログラムって知ってるかな。どんなものに使われていると思う?」など始まりそうなのだが、松田校長は教室の後方にスペースを作って、おもむろに「BB-8」を床に置く。そして、「BB-8」が踊り出す。音楽に合わせて首を振ってリズムを取り、子どもたちに向かって走り出す。
「おお~」「わぁ~」「すげー!」「BBエイト~~~」 など、子どもたちから歓声が挙がる。まさに、「つかみはOK」という場面。
「さあ、ここで、BB-8さんに聞いてみよう。“何が大変でしたか”。なんと答えるでしょう」と松田校長。「練習かな。動きを覚えることかなあ」。「“なぁんにも大変なことなんかないよ。だって、プログラミング通り動いただけだもん”というのが答だよね。さあ、BB-8も動かせる、プログラミングをはじめよう」。
ここから「Tickle」の説明がはじまる。「前に進みます」「速度が変わります」「繰り返します」「大きさが変わります」「座標軸で場所を指定します」「こっちの端が240だから、こちらの端は-240だよね」「触ったら止まるとか、何々したら何々ってのはこれね」「さあみんな、自分でやってみよう」。ええ~、そんなんで始めちゃっていいんですか。思わず心配になる。
だが、子どもたちがiPadやTickleの操作に戸惑っていたのは、ほんの数分のこと。瞬く間に自分の表現しようとするものに向かって集中力を発揮していく。そのうちに、教わってもいないのにゲーム画面のようにぶつかって反射させたり、アニメーションを使ったり、iPadを振ることでスイッチにしたり、画面のタッチで操作したり、音楽や効果音を鳴らしたり。
次から次に新しいアイデアや表現が湧き出してきて、それをグループの仲間に教えたり、教わったり、共有していく。
写真で顔出しできないのが残念だが、子どもたちの表情は明るく、変化に富み、探究心に溢れている。
休み時間になると、廊下を通る他のクラスの子どもたちが立ち止まって羨ましそうに眺めている。「いいなあ」「やりたいなあ」と声に出す子もいる。
丹念にメモを取る6年の担任教師に話を聞くと「とにかく、子どもたちの表情が生き生きしていていいですね。そして、教え合い、学び合い、話し合い。まさにアクティブ・ラーニングですよね」と、感動しきり。
プログラミング教育の普及の第一歩は、授業をする教師の感動だろう。授業を観て不安を覚えるより、先に多くの感動を得ること。それが、教師の推進力になっていく。松田校長はそのことを実践者として知っているからこそ、「まずやってみよう。子どもたちが取り組む姿を見てみよう」と叫ぶ。
授業の最後の感想文。「むちゃくちゃ楽しかった」「他のひとのやっていたことがやってみたかった」「面白かった」という子や、「自分の考えていたとおりにできなかった」と悔しがる子もいたが、最後まで投げ出したり止めたりする子はいなかった。
授業後、校長室を訪ねると、会議テーブルの上にプログラミングの本やEV-3などが綺麗にレイアウトされて置かれていた。やる気満々だ。もちろん、子どもたちも大いに楽しみにしている。
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