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2017年3月31日

原田博士直伝の「ビスケット塾」がある幼稚園、香川富士見丘幼稚園

東京から電車でおよそ2時間。東海道線の茅ヶ崎(神奈川県)から単線でスイッチ操作式開閉扉のどこか懐かしい電車の相模線に乗り換えて、辿り着いた香川駅。ビジュアルプログラミング言語「ビスケット」の開発者、原田康徳博士自ら指導する幼稚園と「ビスケット塾」があると聞いて香川富士見丘幼稚園を訪ねてみた。

発表会で挨拶する原田博士

発表会で挨拶する原田博士

3月24日、この日はちょうど「ビスケット塾」の年度末発表会の日。30人近い小学1年生たちが次々に、1年間の成果であるビスケットで創ったオリジナルの「デジタル絵本」を発表していく。

香川富士見丘幼稚園とビスケットの出会いは、鈴木由香里園長が母である先代園長から園を引き継いだ2015年のこと。新しい時代に相応しい新しい学びを模索していた鈴木園長は幼児でも楽しみながらプログラミングを学べる「ビスケット」のことを知り、自ら原田博士が主宰する「ビスケットファシリテータ講習」を受講する。

その後、原田博士から幼児向けのビスケットカリキュラム開発の相談を受け、協働して研究に取り組むことに合意、2015年11月から幼稚園の年長組で「ビスケット」の授業を開始した。

当初は、原田博士のデジタルポケット社からタブレットの貸与を受けて実施していたが、2016年には、iPad mini36台を園で導入。年長組と卒園して1年生になった児童向けに創設した「ビスケット塾」でそれぞれ90分間、月2回の授業をスタートした。

鈴木由香里園長

鈴木由香里園長

その間に鈴木園長は、教員の中から希望者を募って「ビスケットファシリテータ講習」を受講させた。いまでは8名の教員全員が講座受講者だという。

そこまで積極的にプログラミング教育に取り組む背景には、2020年小学校におけるプログラミング必修化の先取り教育としての役割があるのかと鈴木園長に尋ねると、「小学校の先取りをするのが幼稚園の教育ではありません。幼稚園には幼稚園としての学びがあります」との答え。

タブレットPCを使ってビスケットを学ぶ目的は、「これからの子どもたちにとって必要なパソコンやプログラミングを嫌いになったり苦手にしたりする前に、パソコンやプログラミングに楽しく触れて慣れ親しんで欲しいんです」とのこと。

最後の仕上げをすする児童

発表会の最後の仕上げをすする児童

だからiPad miniを導入したからといって、知育アプリや学習アプリを使ってどんどん活用、といった使い方をするわけではない。ビスケットの他には、調べものなどに検索を少しずつ使ってネットになれる程度だという。何でもかんでもデジタルにするのではなく、自然に触れたり手作りを大切にする学びのクリエイティブ活動の一部としてタブレットやビスケットを活用しているのだ。

そうした取り組みは保護者にも支持されているのか、卒園する子どもの7~8割は引き続き「ビスケット塾」での学習を希望しているという。

さて、子どもたちの発表会は、かなりの熱気と盛り上がりをみせていた。

元気よく評価カードを掲げる子どもたち

元気よく評価カードを掲げる子どもたち

「デジタル絵本」のテーマも絵も動きも一人ひとりが思いのまま。絵を描き、プログラミングで動きを付け、ナレーションを入れる。作品のタイトルや狙いをインタビューに応えてから作品を鑑賞する。

放映が終了すると本人が「作品作りで頑張ったところ、苦労したところ」を発表、参加者全員で作品の評価を行う。「えがよかった」「はなしがよかった」「うごきがよかった」「こえがよかった」を、4色の評価カードを掲げて投票する。大人が鑑賞して作品の技術評価をしたら1から10まで評価は分かれるだろうが、子どもたちは他の人の作品の良いところを見つけて全員が「よかったよ~」と言ってあげる。

原田博士のサイン付き記念写真

原田博士のサイン付き記念写真

この1年間では途中で挫折しそうになったり、投げ出してしまいそうになった子もいたというが、指導教員や原田博士とデジタルポケットのメンバー、保護者、そして子どもたちが一体となって「ビスケット塾」を楽しみ合い、学び合って続けてきたことが、この日の発表会から感じられた。

最後に子どもたちは、原田博士と記念撮影を行い、写真にサインをもらって帰って行った。参加してきた子どもの多くは、2年生になっても「ビスケット塾」に通ってくるという。

香川富士見丘幼稚園での“プログラミング”との出会いの経験や思い出は、彼等の未来にどんな足跡を残すのだろうか。次は現役園児の授業を参観させてもらおう。

□ビスケット塾児童の作品「はながさくまでもうすこし」
*苦労したのは水の表現とのこと。

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