2020年12月11日
iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第31回】部活動でICT活用
使わなきゃ、もったいない!? 部活動でのICT活用(運動部編)
教育ICTコンサルタント 小池 幸司
「わが校でも来年度から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。導入までの残された期間で、授業での使い方を考えておくようにとのこと。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。ICTが得意でない先生が、タブレット端末を用いた新しい学びを始める際に知っておいてほしいこと、具体的な活用方法をわかりやすくお伝えしていきます。
学校での自然なICT活用のカギは授業外にあり!?
学校にICTが導入されるとなると、ほとんどの先生が「授業でどうやって使うか」ということに頭を悩ませます。でも、ICTをうまく活用している学校に行ってみると、むしろ授業以外の時間でICTが活躍しているシーンをよく目にします。休み時間や放課後に生徒たちが自発的に使っているのです。
ICTはもともとコミュニケーションのためのツール。教材でも教具でもありません。「授業オンリーの道具」にしようとすれば無理が生じます。では学校生活の中でコミュニケーションが活発なのはどんな場面でしょうか。そう、学校行事や部活動でこそICTは真価を発揮します。
そこで今回は運動部でのICT活用に目を向けてみたいと思います。プロスポーツの世界で急速にICT活用が進んでいることからも、ある意味「テッパン」と言える分野です。iPad1台で部活動のあり方がガラッと変わるようなイノベーションが起こるかもしれませんよ。
カメラを使って自分のフォームを自分でチェック!
部活動におけるiPad活用でも、まず試して欲しいのはカメラ機能です。生徒同士がペアになって、各々のプレーやフォームを撮影。互いに見せ合うだけでもその効果は絶大です。自らを俯瞰して見ることで理想とするイメージとのギャップを埋めることに役立ちます。
また、「コソ練カメラ」というアプリを使えば、カメラに映し出された映像を遅らせて再生することができます。操作もシンプルで「遅延タイム」を設定したら「開始」のボタンを押すだけ。いちいち録画・停止ボタンを押す必要はありません。自主練など1人で練習するときにとても便利です。
例えば、野球の素振りをするときに遅延タイムを10秒に設定して遅延再生を開始。5回素振りをしたら、iPadの画面で10秒前の自分の姿(バッティングフォーム)をチェックという練習方法が可能です。球技に限らず、陸上競技やダンスなどでも使える非常に汎用性のある活用方法と言えます。
デジタル作戦盤で試合も練習も戦略的に
プロスポーツでのICT活用と言えば、試合中、iPadを片手に指示を出すバレーボールの監督を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。いまやスポーツも情報と戦略の時代。ICT活用が試合の勝敗を分けることも少なくありません。そこでまずは「作戦盤」をデジタル化してみてはいかがでしょうか。
「コーチのタクティカルボード」は種目ごとにシリーズ化されている作戦盤アプリ。サッカー、バスケ、ハンドボール、バレーボール、フットサル、ホッケーのアプリがそれぞれ無料版と有償版でリリースされています(執筆時点)。選手やボールはもちろん、三角コーンなどのアイコンも用意されているので、練習方法を共有するといった用途でも使えます。
・コーチのタクティカルボード-バスケットボール:App Store
またデジタル作戦盤のメリットは保存ができること。選手のポジションや動き、攻撃や守りのパターンをあらかじめ保存しておいて、試合中にぱっと表示するといった使い方が可能です。また、メールやDropboxで共有することもできるため、試合前や練習前に選手たちと作戦を共有するのにも役立ちます。
【本日のワーク】動画にブックマークをつけて分析しよう!
彼を知り己を知れば百戦殆からず。対戦相手を研究したり、自分たちの試合をリクレフクションしたりすることは明日の勝利へとつながります。でも、撮りっぱなしの動画を全部見るのは時間がかかりますよね。そこで今回は動画分析を効率化できるアプリ「AC Video」を紹介します。
「AC Video」は映像に「ブックマーク」という目印を付けられるのが特徴。注目させたいシーンをチェックしてあらかじめ「ブックマーク」を付けておきます。チームミーティングの際にはこれを「検索」して「再生」することで、短時間で効果的な分析やリフレクションが可能となります。
アプリを起動したら、右上の「+」ボタンをタップし「ライブラリから選択」を選ぶと、iPad内に保存された動画を取り込むことができます。「カメラを起動」から直接、動画撮影をしてもOK。フォルダ作成もできますので、撮りためた動画を分類して整理するのにも重宝します。
動画はコマ送り再生や巻き戻しも可能。右下にあるメーターのようなアイコンを押すと、再生速度を「×0.25」〜「×2.00」に調整することができます。気になるシーンが見つかったら、右上にある栞マークのアイコンをタップして「ブックマーク」登録しておきましょう。
またこのアプリを使えば、2つの動画を比較して再生することができます。使い方も簡単で、画面上部の「比較再生」をタップしてから比較したい2つの動画を選ぶだけ。
あらかじめ比較したい位置に「ブックマーク」を付けておけば、タイミングを合わせて再生することもできます。
1つの画面を一緒に覗き込めるのがiPadの強み
スマホとタブレットの一番の違いは画面の大きさです。試合の映像を見たり、屋外や体育館でフォームをチェックしたり。複数人で同じ画面を見るのにiPadはとても適しています。せっかく学校で部活動をするのであれば、生徒同士が互いに高め合う場にしたいもの。iPadを活用すれば、子供たちの部活動への取り組み方もだんだんと変わっていくかもしれません。
【筆者プロフィール】
小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)
2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。NPO法人 iTeachers Academy 事務局長。オンラインショップ「先生のためのICT活用塾」を運営。
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