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2023年7月18日

学習デー夕の分析から見えてきた大阪府門真市のQubena効果/「Qubena-Action 2023」レポートPart1

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COMPASSは5月27日、「Qubena Action2023 新年度プロダクト・アップデート発表会」を開催、同社の学習eポータル+AI型教材「Qubena(キュビナ)」の最新動向を発表した。

レポートPart1の今回は、「Qubena導入効果発表」として、慶応義塾大学 中室研究室との連携の下、大阪府門真市で実施した効果検証の結果発表とトークセッションの模様を紹介する。

登壇したのは、門真市教育センター センター長・参事の植原宏仁氏と同センター 副参事の岡田和樹氏。進行はCOMPASS取締役CLOの木川俊哉氏が務めた。

導入経緯/現状を打破できる可能性を持ったデジタル教材

はじめに植原センター長からQubena導入の経緯が説明された。大阪府門真市でデジタル教材を導入した狙いは「子どもたちの基礎基本の定着」「授業改善」「働き方改革」と大きく3つ。


GIGAスクール構想スタート当初、学校現場へのヒアリングの中で見えてきたのは、教員が一所懸命子どもたちに向き合おうとするがゆえに自身の時間や労力を犠牲にし、その結果、本来重要な授業の魅力の低下を引き起こしてしまう、という悪循環だった。

基礎基本の定着のための教材として、門真市でも多くの教員が紙のプリントやワークシートを採用していた。だが、こうした教材は準備も回答後の採点も必要で、多様な学力レベルに網羅的に対応するためには、より多くのプリントや課題、授業づくりが必要となる。熱心に取り組むほど、教員自身の時間や労力が費やされ、丁寧に行っていたプリント作成の時間が減ったり、魅力的な授業について考える時間が減ってしまう。

学習や授業に魅力がなければ、子どもたちの基礎基本を育むことは難しい。自分で問題に取り組める子どもは自ら解き進めることができ、声かけの必要な子どもに対して教員が安心して寄り添うことのできるデジタル教材、教員の取り組みが子どもたちにとって魅力的なものであるための一助となるデジタル教材を探していた。そこで、AI機能を持つデジタル教材が必須との考えに至り、Qubena導入に行き着いたという。

効果発表/Qubena活用による子どもたちの学びの効果は?

AIを搭載し、子どもたち一人ひとりに個別最適な問題が出題されるQubena。門真市におけるQubena活用の検証内容と結果について、データ分析から見られた具体的な正答率や偏差値の傾向を示しながら木川氏が報告した。

効果検証は児童生徒の「学力の変化」と「Qubenaの学習ログ」を回帰分析する方法で行った。これはQubenaを利用するとどのくらい成績が良くなるかを推定するための方法。


今回は、小学3年生・4年生の「門真市学力調査」(算数・国語)、中学1年生の「大阪府チャレンジテスト」(数学、国語、理科、社会、英語)の結果を用い、小学生は「正答率」、中学生は「偏差値」の事前・事後テスト間の伸びをそれぞれ学力指標とした。

Qubenaの学習ログとしては利用頻度、取り組んだ問題数、使用した時間の量的側面と、取り組み方や取り組み結果の質的側面を表す20の指標を設定し、教科ごとにどの指標が学力の変化と関係があったか検証を行った。さらに今回は元々の学力から全体を低学力層と高学力層を中央値で2群に分け、元々の学力の違いによってQubenaの効果の現れ方に違いがあるのかについても考察を行っている。

検証結果の全体的なサマリーとして、学年・教科問わずQubenaを活用した児童生徒における学力の伸び、特にQubenaの利用頻度が高くなるほど学力が高くなるという傾向が、ほぼすべての教科で見られた。


具体的には、小学校では活用頻度が週に1日増えると正答率が7.9から11.6ポイント向上。中学校では週に1日増えるごとに偏差値が0.3から0.9向上する傾向が見られた。

また、主に「授業中」での活用で効果が表れやすいことも窺えた。教科によっては「朝学習」や「家庭学習」などを適切に組み合わせることでその効果がより大きくなると考えられる。

また「学力層別」の傾向として、高学力層では、児童生徒が目次から自由に問題を解く「問題一覧」で、取り組む問題数が多くなるごとに学力が向上する傾向が算数・国語・理科で見られた。自分自身で目次から選んで解くという主体的な学習が学習効果の高まりに影響するのでないかと考えられる。また、数学・社会では「習熟度」のスコアの高まりと学力向上への相関がみられ、「習熟度」を指標として児童生徒自身が確実な知識の定着に取り組むことが効果的であると考えられる。

低学力層では、「正答率」を高めると学力が向上する傾向が数学・英語で見られた。これらの教科が苦手な児童生徒は、わからない場合にはQubenaのヒントや解説をきちんと読んだうえで問題に取り組むなど、時間がかかってもよいので正確に解く「正答率」を意識して取り組むことが重要であると考えられる。また、AIが記憶の定着に最適なタイミングで問題を出題する機能の「5分間復習」で、取り組む問題が多いと学力が向上する傾向が算数・国語で見られ、Qubenaの個別最適な復習による学力効果を考えることができる結果となった。

以上の検証結果から、Qubenaを適切に活用することで、従来の学習方法よりも効果的な学習が可能であると考えることができるとまとめた。

《トークセッション》

検証結果の発表に続いて、Q&A形式でトークセッションが行われた。

-「検証結果を教育委員会としてどう受け止めているか?」

木川:
Qubenaの活用頻度が高まることで学力が伸びるという結果が今回の検証で確認できました。この結果を活用推進の立場である教育委員会としてどのように受け止めていらっしゃいますか?

植原 センター長:
まず本市には、先生の直接の関わりが必要な子どもが少なからずいます。先生が、そういった子どもたちを支援している間、自分で学習を進めていくことのできる子どもたちにも個別最適な学習を保障できると考え、Qubenaを導入しました。
導入・活用推進の立場から、今回こうして効果をデータで確認できたことに正直安心しています。専門家による分析であることや膨大なサンプル数での検証など、教育委員会だけでは難しい分析・検証が実現したことで、この具体的な数値は今後の取り組みに繋げていけると考えています。

門真市教育センター センター長・参事 植原宏仁氏(右)
副参事 岡田和樹氏(左)

各校の利用方法も可視化できました。例えば、どの校種で、どの教科で、どのような使い方がされているのか私たちもしっかり把握できたことが大きいです。

教員の方々が本当にいろいろな工夫で試行錯誤する中で、目の前の子どもたちのために“これが最適だ”という使い方をされている。そうしたことも今回わかりました。その工夫の上に、検証結果のデータに基づいたポジティブな使い方を参考に取り入れることができると、さらに授業改善が進んでいくのではないかと考えます。

木川:
COMPASSとしても今回の検証を通して、学校現場における活用のヒントや利用シーンの実態とその結果の関係性を可視化できたことはとても大きな収穫です。

-「学校現場ではどのようなQubenaの活用が行われていますか?」

岡田 副参事:
本市ではQubenaを導入して3年目になりますが、明らかに活用率の向上と活用法のバラエティーが年々増えてきているなと感じています。各校・各教科によって様々に活用例があると思いますが、教員が習熟させたいところを意図を持って問題を作成できる「ワークブック」、AI機能をフルに活用した個に合った問題に取り組める「5分間復習」、児童生徒それぞれが自分の好きな部分を主体的に学習に取り組むことができる「問題一覧」などが使われています。


これまでの紙ベースでは活用状況やその効果がわかりづらかったと思うのですが、こうして使い方の効果がすぐに数値で見えることで、さらなる活用促進に繋がると思います。

木川:
結果の中で特に注目しているポイントはありますか?

岡田 副参事:
小学校の国語では漢字・語彙・文法などの基本問題が多いため、家庭学習や放課後学習のシーンも含めて「ドリルの置き換えとして活用しやすい」という声を聞いています。その成果が学力に反映されているという結果はとても良いことだと感じます。

木川:
確かに門真市の小学校 国語の活用率は非常に高いです。Qubenaは算数・数学のイメージが強いですが、お話しのとおり、漢字など紙ドリルの学習を進めていた部分を置き換えての活用があるのだと思います。実は活用のハードルはとても低いのではないかと、改めて我々も気づくことができました。もう一つ、学習ログを見て気になったのが門真市は全国的に見ても「ワークブック」の利用割合がとても多いです。

岡田 副参事:
おそらく教員の方々の文化としてワークシートやプリントは子どもたちの実態に即したものを自作したり、用意したりすることがあるのだと思います。その点で、無作為に問題をさせるより教員が問題を選んで作ることができる「ワークブック」は、Qubenaを活用していく上で取りかかりやすかったのではないかと見ています。


一方で、Qubena はAI機能がありますので活用が進むほど子どもたち一人ひとりに応じた問題が出題されます。どんどん現場で活用を進めていき、教員の方々にはより子どもに直接接する時間を作ってほしいという思いもあります。

-「検証結果外のQubena導入による学校現場の変化は?」

木川:
今回検証の対象となった学力効果の他に、Qubena導入による効果、学校現場の変化を感じていることはありますか?

岡田 副参事:
現場の先生方からの声として多く挙げられたのは、習熟度や取り組むスピードなど児童生徒の多様な学びに対応できることです。また、教材の準備時間や採点時間の削減、一度に全体を把握できることなど、授業の効率化や働き方に関してメリットがあったという声も多かったです。


また子どもたちの変化として、自主的な学習において積極的にQubenaに取り組む姿勢が年々見えてきています。

小中学校ともに子どもたちに聞いたところ、「紙とは違いすぐに答えが返ってくるのでわかりやすい」「家でも解説で教えてもらえる」「自分の頑張りが見える」と。そしてこれは意外でしたが、タブレットに慣れているのか「紙の課題よりはじめやすい」といった声もありました。

小学校の低学年から自主的に様々な問題に取り組むことができますし、COMPASS社のサポートもいただきながら、ICT機器に幼い頃から親しむ点でも効果的だったと感じています。

また授業改善の観点ですと、特に教科の特性上、中学校 数学などで多いのですが、Qubenaの高度なAI機能を生かした自由進度学習を取り入れるようになっている学校が増えてきていることも、効果の一つと感じています。

-「今後のQubena活用と教育施策」

木川:
最後にこれからの展望についていかがでしょうか?

植原 センター長:
現在、学校現場の教育活動は大きく変わろうとしています。GIGAスクール構想が始まり、「個に応じた指導」や「指導の個別化と学習の個性化」などが記されました。教育委員会としては、これからの授業作りについて考えることのできる「時間」を教員の方々に何とか捻出したい。その強力な助けとなるのがデジタル教材と考え、Qubenaを活用させていただいています。

今後の展望の1つは、今回の結果を受け、教科ごとに効果のある活用方法を全校に周知して、各学校における利用を推進してもら うこと。2つ目は、学力層別の検証結果を、より個に応じた指導や指導の個別化に繋げていくこと。最後は、現場の教員の方々にはデジタル教材を活用した授業改善をさらに推進していただくことです。

木川:
我々もQubenaを使って、子どもたちの個別最適な学びを促進していきたいと考えていますが、教員の方々のアシスタント的な形で使っていただくのがとても重要と思っています。

今回の効果検証でQubena活用による一定の効果を示すことができました。教員の方々の負担を極力減らして、先生にしかできない子どもたちの支援、成長を見守る時間を確保していただけたらと思います。植原さん、岡田さん、本日はありがとうございました。

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