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2025年5月22日

渋谷区&事業者対談「探究学習を通じた学びの環境のアップデート」/COMPASS(キュビナ)

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昨年11月に開催されたオンラインイベント「個別最適な学びの環境の実現に向けて」(主催:COMPASS)において、「探究学習を通じた学びの環境のアップデート」をテーマに、自治体と事業者によるパネルディスカッションが行われた。本記事ではその様子をレポートする。

登壇者は、東京都渋谷区教育委員会事務局 教育指導課 統括指導主事 松村信之介氏、全国の学校に探究プログラムを提供しているInspire HighのMarketing Manager 溝口りりか氏。AI型教材「キュビナ」を提供するCOMPASS 取締役CLOの木川俊哉氏が進行役を務めた。

探究学習の取り組み

木川:探究学習の取り組みをどのようにされているか、探究「シブヤ未来科」を進める渋谷区さんからお願いいたします。


松村:「渋谷未来の学校」を掲げて渋谷区が取り組んでいる教育改革、それが探究「シブヤ未来科」です。「シブヤ未来科」は2024年度から区立全小中学校でスタートしました。原則、午後の時間を探究「シブヤ未来科」の時間というニックネームで呼んでいます。教科指導も含めて、子供たちの学びをより主体的、探究的に、そして対話的で協働的な学びに転換していくというのが、この「シブヤ未来科」の狙いです。


この図は教育課程です。1年間通して、この探究「シブヤ未来科」の時間を進めていきます。文部科学省の授業時数特例校制度を活用して、例えば小学校6年生であれば、総合的な学習の時間は70時間ですが、約2倍強の155時間設定を1年間で行っています。

企業体験は、地域の人々や地元企業、官民連携協定を結んだ企業などと連携し、各学校で行われています。こうした活動が単なる調べ学習に終わってしまわないように、探究のプロセスである、課題設定や情報の収集、整理分析などに関わるスキルを身につけ、さらに各教科の見方・考え方を十分に働かせることができるよう工夫しています。最後の「My探究」は、ただ子どもにやりたいことをやらせるだけではなく、子どもから出てきたものを、もう少し課題を深掘りしたり、高めたりする取り組みです。

また「シブヤ未来科」を通じて、情報収集や整理分析のところで、表計算ソフトなどICT活用もだいぶ進んできたということを付け加えさせていただきます。

木川:ありがとうございました。続いてInspire Highの溝口さん、お願いいたします。

溝口:「Inspire High」は、世界と繋がる探究的な学びを手軽に教室で実践できるEdTechプログラムで、渋谷区さんの「シブヤ未来科」でも活用いただいています。


「Inspire High」では、3つの学習体験を提供しています。1つ目が世界の大人から刺激を受ける「Session」。2つ目が生徒一人ひとりが自分だけの問いを探究していく「Project」。3つ目が全国の10代100人の問いを表彰する「Inspired100」です。


「Session」では、世界と繋がる体験を誰でも教室からということで、出会うことがない世界中で活躍するインスパイアリングな大人=ガイド(25年3月末時点で約60人)から多様な生き方や価値観、仕事と彼らが対峙する社会課題に触れる体験を届けています。

「Project」は、「Session」で湧き上がってきた問いを深めていく機能です。探究の流れ・サイクルをこの「Project」でも網羅する形で五つのステップ13の単元に分け、これらを一連の流れで一人ひとりの問いが深まって探究の成果物が出来上がる流れになっています。

「Inspired100」というのは弊社が100人の問いを年間でまとめて、各学校さんにお届けするという制度です。外部コンテストの役割も兼ねていて、探究の目標設定にしたり、ガイドや企業からフィードバックコメントも送られてきたりするので、モチベーションの1つにもなっています。

木川:ありがとうございます。COMPASSの探究学習についても、簡単に紹介させていただきます。

AI型教材「キュビナ」を開発するCOMPASSが、なぜ探究教材をということですが、COMPASSは子どもたちが「未来を創る力」を身につけることを目標として創業しました。「未来を創る力」を身につけるために必要な時間を生み出すことを目指して開発されたのが、AIを活用したアダプティブラーニング教材の「キュビナ」です。


COMPASSでは「キュビナ」の開発を続けながら同時に、「未来を創る力」を身につけるための「探究」の教材開発も進めてきました。2023年からは、小学館集英社プロダクションと共同開発を行い、今回第1弾として、国語の学びを基盤にした絵本作りの探究学習プログラムの提供を開始しました。

このプログラムは、「教科単元との紐づけ」、「探究に必要な力(思考・判断・表現力)を養う」、「社会に開かれた学び」の3つをコンセプトにしています。

現在は第1弾の国語だけですが、様々なテーマに対応できるように用意していきたいと考えております。

ディスカッション

木川:それではでディスカッションの方に移らせていただきます。1つ目のトークテーマは、「学校で探究学習を実施するにあたり、大変だったことは何か」です。渋谷区さんにお伺いしたいと思います。

松村:まず、探究学習はまだテキストもなければモデルもあまり見当たらない、ゼロから一歩ずつ踏み出していくということで、非常に困難だったと思います。思いとして「子どもがわくわく夢中に取り組める学習を行っていきたい」そして「学びを自ら選択できるような学びを行っていきたい」というところで、探究的な学びのイメージを出していきました。

もう一つ大変だったところが、先生方や保護者の方々に理解をいただくというところです。先生方も始めて出会うものなので、負担がかかっているんですけれども、校長先生方を通して「シブヤ未来科」についてかなりお願いをして回りました。


また保護者にとっても、総合の時間が増えると国語や数学といった各教科が減りますので、大丈夫なのか、受験に影響はないかといった不安もあったと思います。保護者とはVUCAの時代に必要な子供たちの力というのは、教科学習で身につく基礎基本もあるけれども、探究で身につく想像力であったり、挑戦力であったりというころが大切なんだと、かなりの対話を重ねて理解をいただくようにしました。そこも大変だったなと思っています。

木川:Inspire Highさんも渋谷区さんの学校に入りながらいろいろと伴走されていると思うんですが、やはり混乱などもありましたか。

溝口:全国そうですが、0から1を生み出す難しさを渋谷区の先生方は試行錯誤しながら取り組まれていると感じています。先生が教えるのではなくて、生徒が主体に学ぶというところを「シブヤ未来科」で作っていこうとすると、先生の役割も変わっていかなければいけないと思うので、そこの切り替えというか、授業中の生徒の学び方をみて、これでいいんだっけ?とか、今までしたことがない学びの形になると不安になったりすると思います。しかし、今は一緒に信じて、少し中長期で効果を見守っていかなければいけないと思うんです。

不安は先生方一人ひとりが感じているだろうなと、間近で見ていて本当に思うので、私たちも先生と一緒に信じてやってみようというところです。

木川:探究学習をはじめて半年経ちまして、渋谷区の先生や児童生徒さんの変化などを感じられているポイントはありますか。

松村:授業スタイルが大きく変わってきています。先生が黒板の前に立って、子どもたちが黒板に向かって先生を見るような一斉授業を私たちは「単線型の授業」と呼んでいるのですが、子どもたち主体の授業、子供たちに学び方を選択させる複線型授業にしてくださいとお願いしています。

具体的な変革の3つとして、1つ目は、デジタル教科書や、紙の教科書、デジタル教材などから「どのツールで学んでいくのか」ということ。

2つ目は「どれくらいのペースで学んでいくのか」ということ。塾など通っていてすごく勉強が進んでいる子もいれば、じっくりと学んでいく子もいます。当然、一人ひとりによって学びの進度が違います。


3つ目は、上記の複線型授業のスライドで分かるように、「誰と学ぶか」ということです。これについても、子どもに任せていこうということで、赤い丸のところは、一人でじっくり学んでいる姿、黄色のところは2人のペアで学び、緑のところは何人かのグループでと。先生と一緒に学んでいきたい子もいますので、誰と学ぶかというところも子どもが選択できるように、子ども主体の授業に変わってきたのが一番の変化だと思います。

木川:確かに、私も渋谷区の学校に足をよく運んでいるのですが、子どもたち自身で決定するポイントがすごく多いなと感じています。Inspire Highさんにもお伺いしたいなと思うのですが、探究の取り組みを先進的にされている中で、子どもたちの変化についてはいかがでしょうか。

溝口:まさに松村さんがおっしゃっていた「授業の仕方が変わる」みたいなところは「Inspire High」でも起こっている部分です。


「Inspire High」のプログラムの学びの目的は、一人ひとりのウェルビーイングの実現というところに紐づいています。「ウェルビーイングな状態」の解釈はこの三つです。「自己とのつながり=Self-Connection 深い自己理解に基づいた、自分なりの価値観を持っている」、「他者とのつながり=Interpersonal Connection 異なる他者と競争するのではなく共感性でつながっている」、「社会とのつながり=Societal Connection 自分はこの社会とつながり、変化を生み出せると考えている」。

3つ目の項目の「社会とのつながり」は、まさに「自己効力感」みたいなところです。18歳意識調査の結果で、日本の国と自己の繋がりの低さが毎回話題になりますが、私達が探究学習を進めることで、外部教材を使ったり、渋谷区さんが取り組んでいる企業と連携をしていく中で、自分で何か少しずつでも国や社会を変えられるんじゃないかという思いが現れるのが結果として見えてきたりするので、引き続き効果を出していければと思います。

木川:次の質問ですが、「探究学習を推し進めた先にどのような学びの環境の実現を目指しているか」というものです。渋谷区さんいかがでしょうか。


松村:渋谷区では、渋谷区全体を探究空間としてどこでも学べるようにしたいという考えです。渋谷区の企業とか、大学とか、公園などの自然といった空間までもしっかりと生かして「シブヤ未来科」が持続可能なシステムになるように、先生方の負担を軽減するための措置を含めて考えていこうと考えています。

木川:まさにエコシステムという感じで、学校だけではなく、民間・大学など社会全体で仕組みを作っていくっていうところはとても重要だなと感じました。Inspire Highさんはいかがでしょうか。

溝口:探究学習が明確に出てきたことによって、今までのような、偏差値が高い学校に行って、年収が高い会社に入ってという画一的な評価指標を基にした優秀な人材をたくさん育てるという教育から、一人ひとりが自分自身の人生を充実させていく力を探究学習によって身に付けていくところを目指していけると思いました。

木川:最後になりますが、今回視聴している皆さんは探究に対してとても関心が高いと思いますので、メッセージを一言いただきたいと思います。


松村:おそらく迷いがある先生方や自治体さんもいると思いますが、ぜひ探究学習を始めていただきたいと。子どもの学びに向かう姿がガラッと変わってきて、非認知的なものが伸び、認知的な学力の部分も上がっていくと思います。まだモデルとしては見えない部分もあり少し恐怖感はあるかと思いますが、明らかに子どもも先生も変わっていきますので、まず一歩踏み出してください。


溝口:先生方は忙しくて、探究でさらに個別最適な部分で一人ひとりを見ていかなければいけなくて、どうしようって思われていると思うんですけれど、やはりこれからの教育は、学校の先生と私たちのような企業、自治体、地域社会のみんなで作り上げていくのかなと思いますので、一緒に考えさせていただければ有り難いと思います。

木川:ありがとうございます。探究学習は単なる学びにとどまらない、生き方に直結するのがとても本質的な活動だと考えています。これからも皆さんと協力し合って、探究学習の可能性を広げ、よりよい教育を前進させていていきたいと考えています。
皆様、本日はありがとうございました。

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