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2021年3月22日

GIGAスクール構想とは(4)97.6%の自治体で環境整備完了 1人1台活用に向け文科省の通知

文部科学省が先日公表した、「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備の進捗状況について(速報値)」によれば、全自治体等のうち1769自治体等(97.6 %) が2020年度内に納品を完了する見込みだという。ここでいう「納品完了」とは、児童生徒の手元に端末が渡り、インターネットの整備を含めて学校での利用が可能となる状態を指す。ほぼすべての公立小中学校の普通教室で、1人1台情報端末が使える環境が整備されたのだから凄いことである。ここ数年、予算処置を行って整備を訴えてきた文科省だが、自治体の反応は悪かった。本来「2020年度1人1台」の目標を「3クラスに1クラス1人1台」に下方修正していたくらいだ。しかし、昨年来のコロナ禍で日本教育界のデジタル化、ICT利活用の遅れが多くの人々に実感され、3年計画だった「GIGAスクール構想」の前倒しで、いよいよ1人1台の実現が迫ってきた。予算とやる気があれば環境整備が可能なことを実証してしせた。さて、では4月からどうするのか。文部科学省では3月12日に「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について(通知)」を、各都道府県の教育委員会などに送付して、1人1台環境の有効活用の周知を呼びかけた。

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通知では、4月から全国のほとんどの義務教育段階の学校において、児童生徒の「1人1台端末」及び「高速大容量の通信環境」の下での新しい学びが本格的にスタートする見込みとなったことを受けて、各学校での1人1台端末の本格的な活用を積極的に進めるに当たり、留意する点を提示。併せて、学校設置者等が新しい ICT 環境を本格的に運用するに当たり確認しておくべき事項等について「GIGAスクール構想 本格運用時チェックリスト」、「ICT の活用に当たっての児童生徒の目の健康などに関する配慮事項」、「1人1台端末の利用に当たり、保護者等との間で事前に確認・共有しておくことが望ましい主なポイント」を作成、配付した。

1人1台端末の本格的な活用を積極的に進めるに当たり留意する点

1人1台端末の本格的な活用を積極的に進めるに当たり留意する点は下記の9項目。
1.端末の整備・活用について
2.個人情報保護とクラウド活用について
3.ICTの積極的な利活用について
4.デジタル教科書・教材・CBTステムの活用等について
5.教師のICT活用指導力の向上 6.情報モラル教育等の充実について 7.ICTの活用に当たっての児童生徒の健康への配慮等について
8.保護者や地域等に対する理解促進について
9.ICTの円滑な活用に向けた改善の継続について

それぞれの項目のポイントをまとめる。

1.端末の整備・活用について

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・整備された端末がクラウド活用を基本として積極的に利活用されるよう、フィルタリングなど各種サービスの設定、カメラ機能やネットワーク機能の設定等を適切に行うこと。
・1人1台端末環境の下で児童生徒がICTを活用して学習するためには教師分の端末の準備も不可欠であることなどを踏まえ、児童生徒用の端末、指導者用の端末の双方について必要台数を確保し、1人1台端末下での学習環境の整備に遺漏なく取り組むこと。
・非常時における児童生徒の学びの保障の観点からも、端末の持 ち帰りを安全・安心に行える環境づくりに取り組むこと。
・関係者と緊密に連携して、児童生徒への適切な利活用の指導やルール設定など準備を行うとともに、学校で整備されたものを含む家庭での端末の利用に関するルール作りを促進することや丁寧な説明により保護者や地域の十分な理解を得られるよう努めること。

2.個人情報保護とクラウド活用について
・学校現場でのクラウド活用が促進されるよう、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に沿って、クラウド・バイ・デフォルトの原則やクラウドサービスの利用におけるセキュリティ対策を実施する。
・クラウド活用を進めている地方自治体においては、当該地方自治体の個人情報保護条例等に基づき、個人情報保護審査会の許可を得ることや、保護者の事前了解を得ることなどを通じて、学校現場でのクラウド活用を可能としている地方自治体もあることから、事例も参考にしつつ適切な運用を行うこと。
○「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」

3.ICTの積極的な利活用について

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・「学習者用コンピュータ」及び「校内LAN」整備に関する「標準仕様書」で示した表計算ソフトやカメラなど各学校において活用することが有効と一般的に考えられる学習用ツールを活用する。
・GIGA スクール構想の趣旨を踏まえ、学習用ツールの制限は安易に行うものではなく、真に必要な場合にのみ行うべきであって、むしろ、多くの課題については、1人1台端末を積極的に利活用する中で解決を図ることこそが重要。
・課題等がある場合には、学校現場をはじめとする関係者との緊密な調整・協議を行ったり、保護者の理解等を得る努力を丁寧に行ったりした上で、児童生徒の発達段階や実情を踏まえながら、学校におけるICT 環境を最大限積極的に活用していくよう留意すること。

4.デジタル教科書・教材・CBTステムの活用等について
・ICT を活用しつつ学びの充実を図るため、デジタル教科書・教材の活用についても検討を進めること。
・学校・家庭においてオンライン上で学習やアセスメントが可能な CBT(Computer Based Testing)システムである「学びの保障オンライン学習システム(MEXCBT:メクビット)」を活用する。(地方自治体等が作成した学力調査問題等のデジタル化を行い、希望する全国の学校で活用できるようにする予定)
・児童生徒の学習に資する教材等を随時掲載している文部科学省の「子供の学び応援サイト」を活用することも考えること。
・公立学校が「授業目的公衆送信補償金制度」を活用する場合には、各設置者が負担する補償金経費は、その負担を安易に保護者等に転嫁することなく、学校設置者において必要な措置が講じられるよう配慮すること。

○「学びの保障オンライン学習システム(MEXCBT:メクビット)」

○「子供の学び応援サイト」

*「授業目的公衆送信補償金制度」とは、学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて児童生徒・学生の端末に送信する行為等について、権利者に補償金の支払いをすれば、権利者の許諾を不要とするもの。
○公衆送信補償金等管理協会 SARTRAS

5.教師のICT活用指導力の向上
・ICT はあくまでもツールであり、教師の授業力と相まって、その特性・強みを生かされるものであることに留意し、各教育委員会及び学校において、新学習指導要領を踏まえた学習活動を想定しつつ、ICT を活用した指導方法についての研修を充実すること。
・教職員支援機構が公開している研修用動画「校内研修シリーズ」や文部科学省が作成・公表している ICT を利用した学習活動の例を示した「教育の情報化の手引き」、各教科等の指導における ICT の効果的な活用に関する参考資料・解説動画、「すぐにでも」「どの教科でも」「誰でも」活かせる1人1台台端末の活用方法に関する優良事例や本格始動に向けた取組事例(StuDXStyle)、ICT 活用に関する専門的な助言や研修支援等を行う「ICT 活用教育アドバイザー」の活用を検討すること。

○校内研修シリーズ(教職員支援機構)

○「教育の情報化に関する手引」

○各教科等の指導における ICT の効果的な活用に関する参考資料

○各教科等の指導における ICT の効果的な活用に関する解説動画

○StuDX Style

6.情報モラル教育等の充実について
・学校における1人1台端末の本格的な運用に当たり、各学校においては、情報社会で適正な活動を行うための基となる考え方や態度を育む情報モラル教育の一層の充実を図ること。
・「GIGA スクール構想 本格運用時チェックリスト」(別添1)も適宜参照しつつ、端末等の適正な取扱いについて十分留意すること。

○「GIGA スクール構想 本格運用時チェックリスト」

7.ICTの活用に当たっての児童生徒の健康への配慮等について
・学校における1人1台端末の本格的な運用が始まり、また同時にデジタル教科書・教材の活用など学校や家庭における ICT の使用機会が広がることを踏まえ、「ICT の活用に当たっての児童生徒の目の健康などに関する配慮事項」(別添2)を参照しつつ、視力や姿勢、睡眠への影響など、児童生徒の健康に配慮すること。

○「ICT の活用に当たっての児童生徒の目の健康などに関する配慮事項」

8.保護者や地域等に対する理解促進について

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・GIGAスクール構想は、保護者や地域等の協力を得ながら着実に推進すべきものであることから、各学校設置者等は、関係者と緊密に連携して、適切な機会をとらえて、保護者等に対し、当該構想の趣旨等の理解促進を継続的に図ること。 ・端末の持ち帰りを安心・安全に行う環境づくりに当たっては、「1人1台端末の利用に当たり、保護者等との間で事前に確認・共有しておくことが望ましい主なポイント」(別添3)も適宜参照しつつ、保護者等の協力が得られるよう丁寧な説明を行うこと。
・学校で整備されたものを含む家庭での端末の利用に関するルール作りを促進することや、学校運営協議会や地域学校協働本部等の協力を得ることなど学校だけではなく家庭や地域とともに取組を推進することが重要である。

9.ICTの円滑な活用に向けた改善の継続について
・「GIGA スクール構想 本格運用時チェックリスト」をはじめ本通知で示した留意事項を踏まえ、ICT 環境を積極的に利活用する中で一つ一つの課題の解決を図りながら、不断の改善に取り組むことが重要である。
・国においても、今後継続して各地域における実践の状況を把握し、必要に応じて「GIGA スクール構想 本格運用時チェックリスト」を更新するなど適切な支援を行う予定であり、そうした取組に十分留意すること。

**********

多くの教育委員会や学校にとってGIGAスクール構想で整備された1人1台端末など充実したICT環境を運用していくことは初めての取組になるだろう。分からないことも多く、体験したことの無い事態に出くわすことも多々あることだろう。しかし、「導入はしたけれど活用はされない」状況にだけはしてはならない。未来の日本を創り出す大切な基盤。それがGIGAスクール構想で整備されたICT環境を活用し、学校でも家庭でもどこでも学べる仕組みを作り出していくことだ。

教育現場の関係者には、改めて文部科学省の「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について(通知)」の内容をチェックし、提供される各種情報やGIGAスクール構想で整備したICT環境の適切な利活用から、「新しい学び」が生み出されることを願ってやまない。(編集長:山口時雄)

関連URL

「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について(通知)」

「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備の進捗状況について(速報値)」

文部科学省「GIGAスクール構想の実現について」

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