2021年12月22日
続・iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第9回】苦手教科×ICT
【第9回】中野 優先生(桜丘中学・高等学校)
苦手教科×ICT!成功体験で生徒のやる気を引き出す
「わが校でも今年から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。iPadを活用した学びを実践している先生たちの活用事例をもとに、ICTが苦手な先生でも取り組める具体的な活用方法をご紹介します。
苦手教科でも生徒のモチベーションは引き出せるか?
「数学は得意」「英語が大好き」など、一人ひとり得意な教科はちがいます。その教科が好きになれば、自分から勉強するようになって成績も上がります。そして自信につながり「得意」になるという好循環が生まれます。「先生のおかげで◯◯が好きになった」という言葉はまさに教師冥利につきますよね。
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運動嫌いの生徒でもやる気になる体育の授業とは?
反対に苦手教科はどうでしょうか。「嫌い」だからどうしても後回しになって成績が下がる。苦手意識が生まれて、さらに嫌いになる。そんな負のサイクルに陥りがちです。教科を教える先生としては、なんとか生徒たちの「嫌い」を「好き」に変えようと、日々、悪戦苦闘しているのではないでしょうか。
そこで今回は、桜丘中学・高等学校で体育を担当されている中野優先生に話をうかがいました。中野先生によると同校は「運動が苦手な生徒が多い学校」とのこと。そんな生徒たちに体育への関心をもってもらうため、中野先生が体育科教師として行なっているICTを使った工夫について教えていただきました。
運動が苦手な生徒が多い学校の体育科教諭として
桜丘中学・高等学校は2024年に創立100年を迎える歴史ある私立の中高一貫校。2014年度の新入生より1人1台のiPadが導入され、現在は全学年全クラスの生徒が家庭負担のiPadを保有しています。また学校内のどこからでもiPadが使えるようWi-Fiが整備。各教室にはプロジェクターが常設されています。
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iPadを活用した固定概念に縛られない体育の授業
また、時代に合わせた教育を提供するため、2021年度より4コース制をスタート、教科としての「探究科」が設置されました。この探究科の教科長を務めるのが中野優先生。体育科教諭として、iPadを導入当初から積極的に体育の授業で活用、固定概念に縛られない授業を展開しています。
「本校には運動が苦手な生徒が多く、体育の授業へのモチベーションはあまり高くありません。そういった生徒たちは自分の体を思い通りに動かすことができず、運動嫌いになっているケースがよく見られます」と語る中野先生。体育の授業でどのようにICTを活用しているのか見ていきましょう。
運動嫌いな生徒でも挑戦したくなる仕掛けづくり
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マット運動では自分たちで演技構成を考える
中野先生の授業では「自分の動きを客観視することで改善し成功体験へとつなげていく」ことが1つの柱になっています。生徒たちは自分自身の動きをiPadで撮影し、そこに考察を加えて提出します。こうすることで実技試験では点数が取れない生徒でも、別の観点から点数を確保できる評価方法をとっているそうです。
通常のマット運動の授業では教師が演技構成を指定します。生徒たちは言われた通りに練習をし、テストが行われます。しかし、中野先生の授業では「ロイロノート・スクール」を使って生徒が自ら演技構成を考えます。自分で考えることで、生徒たちの想像力が駆り立てられ、やる気につながったと言います。
【ロイロノート・スクール】1人1台GIGAスクールに最適な授業支援クラウド
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iPadで撮影しながらバレーボールの練習
「(サッカーの)リフティング試験」の取り組みも特徴的です。それまでは本番一度きりだった試験を、およそ1ヶ月の提出期間内であれば好きなだけ撮り直してOKという形式に変更。これによって、生徒たちは何度でも挑戦できるようになり、練習に対するモチベーションが格段に向上したそうです。
また、保健の授業では「応急手当」を学習する際に、「iMovie」を使って映像制作をするという取り組みを実施。動画をつくるには、正しい知識がないとできないため、学習定着度は非常に高かったと言います。「受験に関係ない授業だからこそ、生徒の興味関心を引き出すのにICTは不可欠」と中野先生は語ります。
【本日のワーク】発表の順番決めも「Lucky Draw」でゲーム感覚に!
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手軽に抽選ができる「Lucky Draw」
「いつも出席番号順になっていませんか?」そう中野先生が指摘するのは授業での指名方法。iPadを使えば、授業をもっとエキサイティングに演出することができます。そこでおすすめしてもらったのが「Lucky Draw」というアプリ。設定した数字の中からランダムに1つの番号を選び出せる抽選ツールです。
使い方は至ってシンプル。アプリを起動したら、右上の「+」をタップして新規の抽選イベントを作成します。カテゴリ選択の表示が出ますので、まずは一番上の「数字」を選択してみてください。抽選箱の設定画面になりますので、テーマ(新しい抽選箱)の部分にお好みの名前を入力しましょう。
続いて、乱数を発生させたい数字の範囲を設定します。例えば、35人のクラスで5人の生徒を指名したいという場合には、「(から)1」「(まで)35」「(抽選回数)5」と入力します。同じ生徒が2度、3度と選ばれてもOKにしたいときには「重複抽選可能」をオンに設定してください。
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一度にすべての結果を表示する「一括抽選」も
また、欠席者がいる場合など、選びたくない番号(生徒)を除外することも可能です。「数字をフィルター」の枠の中に、抽選から除外する番号を入力します。複数の数字を入力する際には、1行に1つの番号になるよう改行して入力してください。「完了」ボタンを押せば、抽選画面が表示されます。
それでは、抽選してみましょう。「抽選」ボタンをタップすると、商店街の福引で目にする抽選器(ガラポン)のアニメーションが表示。効果音とともに1つの数字が表示されます。抽選結果は枠の中に履歴として残ります。また「一括抽選」を押せば、一度にすべての結果を表示することも可能です。
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あらかじめ入力した文字列の抽選もできる
なお、カテゴリ選択の際の「文字」を選ぶと、あらかじめ入力した複数の文字列(選択肢)から1つをランダムで抽選することもできます。また、「複数の商品(数字/文字)」を選択すれば、「一等賞」「二等賞」「三等賞」のように、ランクごとで抽選結果を出したいときにも利用できます。
抽選結果を書き出したいときには、抽選画面右上の歯車マークから「結果出力」を選択すればテキストファイルとして保存されます。抽選イベントは複数つくれるので、受け持ちのクラスごとに作成しておけば、授業での指名はもちろん、グループ分けや席替えなどさまざまなシーンで幅広く活用できます。
ICTで苦手意識のある生徒のためのひと工夫を
「教科のおもしろさをすべての生徒に伝えたい」その思いは大切です。一方で、すでに苦手意識のある生徒にそれを押し付けると逆効果になることもあります。「苦手でも挑戦しようと思えるようにするには?」そんな視点からICTでできるひと工夫を考えてみてはいかがでしょうか。もしかしたら、授業や試験に向かう生徒たちの表情がガラッと変わるかもしれませんよ。
【実践者プロフィール】
桜丘中学・高等学校
体育科教諭・探究科教科長
中野 優 先生
学校にiPadが導入されたタイミングから積極的に授業でICTを活用しながら、固定概念を取り払った体育の授業を進めている。また監督を務める野球部での活動でも活発にICTを活用。「新しい野球の創造」を目指し、日々の練習から限られた場所、限られた環境の中でも能力の向上に繋げるべくICT機器の使用を積極的に取り入れている。
教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて導入事例やノウハウを発信している。2013年3月にiPad×教育をテーマにした国内初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」を出版。2020年10月より、YouTubeチャンネル「TDXラジオ(https://www.youtube.com/c/TDXRadio)」を開設し、「Teacher’s [Shift]〜新しい学びと先生の働き方改革〜」のメインパーソナリティを務める。NPO法人 iTeachers Academy 理事・事務局長。
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