2014年3月24日
慶應義塾大学/シンポジウム「電子学術書の現在と今後」を開催
慶應義塾大学は20日、大阪大学、神戸大学、東京大学、名古屋大学、奈良先端科学技術大学院大学、福井大学、立命館大学と合同で、公開シンポジウム「電子学術書の現在と今後」を、慶應義塾大学の三田キャンパスで開催した。
このシンポジウムは、慶應義塾大学などが進めてきた、電子書籍配信サービス「BookLooper」とタブレット端末などを使った「大学図書館電子学術書共同利用実験」の成果の報告と今後を展望するもの。
会場には教育関係者や出版社など150名以上が集まり、実験の成果報告に耳を傾けた。
「8大学共通モニター実験の報告」を行った名古屋大学付属図書館の加藤淳一氏は、電子書籍の利用は学生にとって概ね肯定的だとしながら、書き込みのしやすさでは紙媒体が良いと言う意見があり、結論としては「購入するなら紙媒体、借りるなら電子媒体」というのが学生の現状評価だと報告した。
また、実験に使用した電子書籍配信サービス「BookLooper」の評価については概ね好評だとした上で、「オフラインで使えない」「ダウンロードや表示が遅い」「コンテンツが少ない」など、改善のための要望を示した。
「電子書籍の授業・教育利用の事例報告~東京大学における授業利用実験『重ね書きの教室』」を行った東京大学付属図書館の石田英敬副館長は、全学自由ゼミとして図書館が主体となって行われた授業での「紙と電子の違いの検証」を報告した。
実験では理系文系、院生、学部生など多彩な学生が参加した授業で、電子教材への書き込みの共有実験を行った。学生それぞれの書き込みを「私有したり」「共有したり」「教師が使ったり」、電子書籍であることが有益であることが分かったという。
また石田副館長は今後について、授業で必要な書籍を一覧にまとめる「ゼミ本棚」的利用が期待されるが、関連書籍関の相互リンクや横断検索、電子書籍外部とのリンクなど課題は多いが、なんと言っても「コンテンツの充実」がなにより必要だと語った。
「共同実験の到達点」と題してまとめのスピーチを行った慶應義塾大学メディアセンターの田村俊作センター長は、今後の展開として「プラットフォームの機能向上」「参加大学の増加」「参加出版社数、コンテンツ量の増加」が必要とし、「出版社による新刊書のビジネスモデルの確立」や「著作権管理、処理の簡素化に関する政策提言」などを課題として提示した。
今回の実験は今年度で終了するが、「BookLooper」を提供するKCCS(京セラコミュニケーションシステム)では、電子書籍配信サービスの商用展開を進めていくという。
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