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2018年3月8日

ICT教育の実質効果は?「ICT公開授業with Classi」でエビデンス検証

2月9日、滋賀県の立命館守山中学校・高等学校で、『ICT公開授業with Classi』が開催された。同校が導入しているClassi(クラッシー)は、教員の授業・校務や生徒の学習支援を行うクラウドサービスで、全国の高校の約4割が採用するなど、導入する教育機関が増えている。

同校でのClassiを中心としたICT公開授業は、昨年6月に続き今回が2回目。この日は全国から200名を超える教員など教育関係者が参加。前回を超える盛況ぶりとなり、注目度の高まりがうかがえた。

会場となった立命館守山中学校・高等学校

会場となった立命館守山中学校・高等学校

多くの参加者らで満席となったホール

多くの参加者らで満席となったホール

 

 

 

 

 

ICT教育には、本当に効果があるのか

午前中のICT公開授業に続き、特に参加者らのお目当てとなったのが午後からの分科会だ。ICT教育を実践する15組の教員らがプレゼンテーションを実施、参加者は会場を自由に行き来しながら、興味のある分科会に参加する。

ランチ会を兼ねた教科別分科会で親睦を深める参加者ら

ランチ会を兼ねた教科別分科会で親睦を深める参加者ら

また、分科会のテーマも強く興味を引く一因になったようだ。前回は、教育におけるICTの活用法がテーマだったが、今回のテーマは一歩進んで「エビデンス」。「ICTを使って教育を実践した結果、どんな成果が見られたか」だ。

学校が組織的にICT導入へ舵を切るのは、いまだ骨が折れる。そこに確たる「証拠」が示せれば、反対派や懐疑派の首を縦に振らせやすくもなるだろう。ICT教育への社会的認知も広まる。そもそもICT教育自体が前例のない試みなのだから、成果に対する証拠などあるはずもないのだが、証拠がないからこそ、それを作っていくために誰かが挑戦しなければならない。その先駆者たちが示すエビデンス(証拠)に高い関心が集まるのもうなずける。

膨大な学習データを吸い上げ個別対策、ポートフォリオ化も

立命館守山の國領正博教諭も、そんな先駆者のひとりだ。全体会に登壇した同教諭は、ICTを活用して生徒の学習理解度定着に取り組んだ。根底には、「生徒が上手な勉強のやり方を理解していない」という危機感があったそうで、「これまで、教員はとかく『“ちゃんと”復習しなさい』とか、『計画を“きちんと”立てなさい』なんて言いがちでした。しかし“ちゃんと”“きちんと”なんて抽象的な指示が、子どもたちに伝わるはずがありません」と語る。

立命館守山中学校・高等学校 國領教諭

立命館守山中学校・高等学校 國領教諭

そこで國領教諭は、Classiの生徒カルテ機能を利用した学習記録を入力させることを徹底、一人ひとりの家庭学習記録をデータ化・分析した。そこから浮かび上がってきたのは、特定の教科に勉強量が偏ったり、定期テスト前だけ集中的に勉強していたり、という傾向だった。本人は頑張っているつもりでも、力の入れどころや効率が悪かったのだ。それをもとに具体的な個別の演習を課したり、アドバイスを送ったりした結果、生徒は自らの学習習慣を客観的に可視化できるように。全体的な学力伸長や、家庭学習時間の大幅増加が見られたそうだ。

同じく立命館守山の曽根威志教諭は、これを発展させて生徒カルテをポートフォリオ化していきたいという。生徒の歩みがデータとして蓄積されるため、進路を考えるキャリア教育にも応用する考えだ。

学習記録入力と、学習時間増・学力向上に相関性

こうした成果は、数値でも実証されている。Classiへの学習記録入力と成績向上に明らかな相関性が見られたのだ。前回調査時は10%程度だった入力率が、今回はほぼ100%。それに比例して、どの学力層においても顕著な偏差値上昇を示した。

入学後半年間での学力伸長は、過去5年間で最高の結果に

入学後半年間での学力伸長は、過去5年間で最高の結果に

Classiのログデータで検証したところ、1日3時間以上の家庭学習をする生徒は、前回調査を大きく上回り約6割強→約9割へと上昇。特に中1では、Classiを利用したWebテスト・ドリルにおいて週5回・約25時間相当の演習をこなしたことも分かった。

中学校に入ると、それまでとは学習の質も量も大幅に変わり、ここで躓く生徒も少なくない。しかし、学習記録入力が習慣化したことで、國領教諭の指摘する「上手な勉強のやり方」の理解に繋がったと思われる。

中1はClassi利用だけで週25時間以上の演習時間を確保

中1はClassi利用だけで週25時間以上の演習時間を確保

HRをClassi上で展開、時間の有効活用と能動的姿勢の育成に

千葉県の市川中学校・高等学校は、まさに「学力向上にICTが寄与するか」の実践研究も含めてICT運用を位置づけており、データ収集にも積極的だ。例えば同校では毎朝のHRでの伝達事項をClassiで配信し、時間を大幅短縮している。そのぶん自習など自らの意思で活用するほうが効率的と考えたからだが、生徒アンケートでも約7割が「HRの伝達事項はClassiで十分」と回答している。

市川中学校・高等学校 笹尾教諭

市川中学校・高等学校 笹尾教諭

もうひとつの大きな狙いが、生徒に「自ら情報を取りに行く」習慣づけを行うことだ。その理由を笹尾弘之教諭はこう語る。「学業は比較的優秀な生徒たちだが、安易に正解だけを与えてもらおうとする傾向が見られた。今後、主体的な学習姿勢や行動力が問われることを考えても、それを改善したかった」。

もちろん授業でもICTを利用した能動的で個性的な学習が展開されており、笹尾教諭が担当するセンター試験の地理平均点は約8%増加。それをICTの成果と直結するのは難しいが、一定の手応えは感じている。今後は、iPad貸与1期生となる現中3が大学受験でどんな成果が出るか、さらに検証を行う予定だ。

生徒だけでなく、教員にとっても成長の材料に

報徳学園中学校・高等学校 新庄教諭

報徳学園中学校・高等学校 新庄教諭

ICTの本格運用1年目ながら、積極的な挑戦が目立つのが兵庫県の報徳学園中学校・高等学校だ。新庄秀臣教諭は、協働型授業に便利なClassiNOTEを利用して、多読とビブリオバトル(推薦図書プレゼン競争)を組み合わせたり、生徒自身に授業を作らせたりと、ユニークなアイデアを次々と実践。

主たる目的は生徒の協働力やプレゼン力を磨くことだが、教員にとっても成長が見えるという。あえて「生徒を放っておく勇気」が芽生え、意識改革が進んでいるそうだ。

不要な雑務を減らして、教員の本分に集中

島根県立平田高等学校 船木教諭

島根県立平田高等学校 船木教諭

多忙を極める教員の負担軽減でも成果が見られる。島根県立平田高等学校・船木伸一教諭は「教師の本分は、生徒の学力向上とそのための授業研究。いま、あなたがやっている仕事で『あなたでなくてもできる仕事』があるはず」と問題提起、ICTを利用した校務効率化を訴えた。

同校ではClassiで、主に「学習記録」「アンケート」「校内グループ」の機能を活用している。学習記録では、データ化した家庭学習時間をクラス別に掲示して競争心を刺激。また、アンケートや校内グループは、授業評価や生徒・保護者への連絡に利用。保護者からの提出物等も抜け・遅れが減り、比例して教員の負担も減った。保護者調査でも、実に7割以上がClassiによる情報伝達の有用性を認めている。

ICT教育は次のステップへ。より成果が求められる時代に

「こうした機会を活かしICT教育の裾野を広げたい」と、立命館守山・寺田佳司校長

「こうした機会を活かしICT教育の裾野を広げたい」と、立命館守山・寺田佳司校長

ほかに、杜若高等学校(愛知県)による探究学習、日本大学三島高等学校・中学校(静岡県)によるClassi学習指導とコミュニケーション活用などの事例も紹介されたが、総じて、2020年の大学入試改革も見据えた学習記録のポートフォリオ化、アクティブラーニングへの応用、教員の負担軽減などにその成果が顕著だったようだ。

目新しさが注目されがちなICT教育だが、これからいよいよ成果を見られるステップへと移行しはじめる。積極的な実践とともに、着実な検証が求められそうだ。

イベント告知

ICT教育研究会 with Classi in Meisei [明星学苑 明星中学校・高等学校]

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