2020年6月10日
「すらら」の公立学校版「すららドリル」で始める学力向上大作戦/清水南高・中等部
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中高一貫校には様々メリットがある。「大学入試を目指して計画的な学習を6年間で出来る」、「大学受験で好結果を得られる」、「ゆとりのある学校生活が送れる」、「クラブ活動などに集中できる」、「年代差の交流で豊かな人間関係を得られる」、「学校独自の文化や校風が生まれる」などだ。デメリットもいろいろあるようだが、もっとも大きなものが「学力格差の拡大」だろう。中学入試で足切りをして、一定以上の学力の生徒が集めているものの、「高校入試がない」という最大のメリットが「中だるみ」というデメリットとなって、学力差は6年間で大きく開いていくというものだ。もちろん県立の中高一貫校にも同様の課題がのしかかってくる。そんな課題にICTを活用してチャレンジする学校を訪ね、担当の教員に話を訊いた。
「学力格差の拡大」という課題に県立校としては恵まれたICT環境を活かして
静岡県立清水南高等学校・中等部(静岡市清水区)は、静岡県内に2校ある県立中高一貫校のひとつ。1学年3クラス120名という小規模校だが、高校には普通科公立中高一貫校として全国で唯一という芸術科が併設されている。教育プログラムでは、人間形成プログラム・キャリアプログラム・学力サポートプログラム・学力充実プログラムという4本の柱を軸に、特色ある中高一貫教育を行っている。全国の公立高校でICT環境整備が遅れる中、国指定の「ICTを活用した学びの推進プロジェクト」、県の「学びを拡げるICT活用事業」の推進校に指定された同校は、県内で最もICT環境が整っている学校のひとつだという。全教室にWi-Fiと固定式のプロジェクターを設置、生徒用端末として120台のiPadがある。
中等部が新設されたのは2003年で県立の中高一貫校としての歴史は長い。同時に中高一貫校ならではのデメリット、「学力格差の拡大」も中高6年間で確実に広がっているという。すららネットが提供するクラウド型アダプティブラーニング教材「すららドリル」は、2019年秋に導入した。
導入した経緯について、中1の「すららドリル」担当で英語科の鈴木俊祐教諭は、「本校の教員が、研修で関西の公開授業を見に行ったんですよ。そこで“すらら”を体験して『凄いのがありましたよ』と管理職に報告したんです。そうしたら、トントン拍子に導入が決まりました」と語る。学力格差の課題については「高校入試のある学校にもいたんですが、中2の秋くらいから意識し始めて、ピリッとした感じになって、中3では必死になってきます。それが当校だと、そのままでも高校に行けるので、学習に集中できない生徒も出てきます。受検というハードルを越えずにそのまま高校に行ってしまって、高校でどこまでやれるのかという危機感は、どの教員も持っています。だから底上げが必要だと、強く認識しています」と、日常的に顕在していた課題の対策として「すららドリル」が導入されたのだという。
話に登場した「すらら」と同校が導入した「すららドリル」とは何が違うのか。無学年式 でAI×アダプティブラーニングのデジタル教材「すらら」は、「キャラクター動画による対話型のレクチャー機能」、「AIが自分に合ったレベルの問題を出題するドリル機能」、「教科書別の定期試験対策ができるテスト機能」、「教師が生徒の学習状況をリアルタイムで把握できる学習管理機能」の4機能で構成されている。「すららドリル」は「すらら」の4機能から「ドリル」「テスト」機能に特化した、「すらら」の姉妹版といった位置づけで、主に公立の小中学校で使われることを想定している。
手探りながら確実な活用で「学習習慣を身につける」
同校では、1学年3クラス分の120台あるiPadをフル活用するため、朝学習の時間を使って、月水金は1年生、火木が2年生と交互に利用している。1年生は月曜日が国語、水曜日は数学、金曜日が英語。2年生は火曜日が英語、金曜日は数学に取り組んでいる。
1年生では2週間に1回、2年生で毎週テスト課題を出題している。「朝の25分間という限られた時間の中で、当番は職員室からiPadを運んできて、立ち上げて、ログインしてと、準備に時間が掛かり実際には15分くらいしか“すららドリル”に取り組めないのですが、しっかりと続けてやっています。一番大変なのはiPadの返却で、職員室に戻して充電ケーブルを接続して、とやっていると1時間目の授業にギリギリになってしまうこともしばしばです」と、鈴木教諭は微笑む。
「中学1年では、学習習慣を身につけることが一番大切です。やらされるという学びではなく、自ら学ぶということです。“すららドリル”を継続的に取り組むことで、学校も家でも自分から学ぶという習慣を付けて欲しいと思っています」と、鈴木教諭。
2年生を担当する森下峻也教諭(当時)は、「テストは毎週出していますが、いまのところまだ機械的にこなしているだけといった感じの生徒が多いのが現状です。学習時間は概ね1カ月で2時間ほどですから、朝学習の時間は確実に取り組んでいるものと思います。中には4時間もやっている生徒もいますが、先取り学習まではいっているかどうかまではなかなか把握出来ないですね」と、“すららドリル”の有効活用まではまだまだといったところ。
すららネットの担当者がログを見ながら、「取り組んでいる単元がもう中3という生徒さんもいますよ」というと「3学期はもう中3やっていますから」と森下教諭。続けて、「中高一貫校のメリットでもある先取り学習は当校でも取り組んでいます。ただし、あまり極端に先取りできない事情があります。中学から高校に上がるときに全員普通科に上がるのではなく、数名が芸術科に行くんです。その分を外部入試で受け入れるんですが、クラスが内部進学の生徒と混合になるんです。高校入学段階であまり格差をつけられませんからね。“すららドリル”は自分のやる気さえあればどんどん先取りも出来るので、学力低位の生徒だけに有効というわけではないと思います」と語る。
もっともっとやる気に火を付ける使い方を
県の「学びを拡げるICT活用事業」の推進校に指定された時に、指導案の作成や成果のとりまとめを行った森下教諭は、「教員によってバラツキはありますが、ICTの活用は確実に浸透してきています。利用範囲も広がっています。来年度はさらに120台のタブレットが導入されますから、一層加速するでしょう。充電保管庫が各教室に置かれるということですから、これまで以上に使い易くなるとともに、“すららドリル”の実質的な学習時間も確保できるようになると思います」と語る。
「生徒の“すららドリル”の学習時間や学習内容を細かく把握できれば、その数字を使って“すららカップ”みたいなモチベーションを高めるイベントを考えて、やる気に火を付けたいです。“漢字コンクール”や“英単語コンクール”なんかも面白いと思います。また、教科の学びと連動して“すららドリル”を使えば、より学びの価値は高まるとおもいます」と、鈴木教諭。
“すららドリル”を始めてまだ半年。確かな成果が見える段階ではないが、“すららドリル”の可能性については両教諭とも感じているようだった。
※2020年2月取材当時の情報
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