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2020年11月9日

コロナに負けないICT活用と「すらら」で推進する「自学」の精神/関東学院六浦中高

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関東学院六浦中学校・高等学校(横浜市金沢区)は、『人になれ 奉仕せよ』を校訓に、キリスト教に基づく人間性を育む100年以上の歴史がある中高一貫校だ。近年、「グローバル化」のその先、近未来に備え、よき伝統を残しつつもICT環境の整備・活用をはじめとした「学び方改革」に取り組んでいる。歴史的変革の指揮を執る黒畑勝男校長と実践現場を担当する中村優子教務部長(数学科教諭)に話を訊いた。

中村優子教務部長(左)と黒畑勝男校長(右)

コロナに間に合ったICT環境整備、コロナで進化したICT活用授業

生徒のICT活用風景

2014年に就任した黒畑校長は、学び方改革の第一歩としてICT環境整備に取り組むことにした。2015年2月~3月には校内LANの整備を進め、電子黒板を各教室に配備。4月には全教員にiPadを支給し、全教科での利用を促した。

その後、2018年6月に中2~高1にChromebookを導入。2019年に中2、2020年は中2、中1に導入し、中1から高3まですべての学年で1人1台が整備された。

コロナで突然休校になったが、教員たちは慌てなかったという。試行錯誤をするも粛々と準備を行い、いくつかの段階を経ながら、オンライン授業を実行することができた。教師も生徒も保護者も、そして黒畑校長も六浦の先進性を確認したという。

「自学」促進のために「すらら」を導入

「すらら」導入を提案したのは黒畑校長だった。前任校での体験があったからだ。

黒畑勝男校長

「前の学校で通信制を開設しました。不登校などの理由で学んでいない生徒にどう学習させるか。学習到達度合に合わせ『個別化』できる教材が必要だったんです。そこで、いろいろな教材を検討した結果、『すらら』を導入することにしました。進んでいる生徒も進んでいない生徒も、家でもどこでも自分のペースで『すらら』に取り組める。全然勉強していなかった生徒が英語を『すらら』でやりはじめ、授業を受けていないのに、英検準2級をとったんです」と、黒畑校長。

黒畑校長が六浦に赴任した2014年当時、偏差値が上と下では40程も開きがある幅広い学力層の生徒がいたという。「教師たちは一生懸命補習をやっていたが、学力幅が広いので全員に個別対応することができない。先生の労力を削減し、生徒が『自学』で取り組める教材としては『すらら』が一番だと確信し、導入しました」と黒畑校長は語る。

中村優子教務部長

2018年6月、Chromebook導入に合わせて「すらら」を導入。中村部長は、円滑に学習をスタートするため、生徒も教員も『これならやれそうな感じがする』程度から始めた方がよいと考えた。「とにかく抵抗感を与えたくなかった」という。そこで、夏休みの課題から無理のない範囲で少しずつ進めることにした。

当時を振り返って黒畑校長は、「夏休みの宿題の一部として、『すらら』の課題を出しました。わからないところは『すらら』が教えてくれるので自学できる。戻って再学習することもできる。そうしたら、それまで7割ぐらいだった課題の提出率が95%~97%になりました。教員からも驚きの声が上がりました。夏休みの課題提出率に『革命』が起こったのです。」と最初の成果を語る。

「個別学習」の確立でGTZのランクアップ

「すらら」導入から2年。進化は続いている。「すらら」の機能を最初から順番通りにやらなければならないといった固定観念を捨て、自分の理解や学び方に応じて使えばよい、という理解が浸透。教員からの課題提示が工夫され、生徒一人ひとりが異なる学び方になってきたのだ。

生徒のすらら利用風景

「従来の“紙”の宿題では、誠実に取り組んでいる生徒もいましたが、一方で解答を写して“やったことにする”生徒が一定数おり、それを追いかけきれなかったのが正直なところ。『すらら』では、自ら考えなければならない状態に追い込まれることによって、理解することの真の意味に気づいた生徒もいると思う。」と中村部長。

黒畑校長は、これこそ六浦が目指す「個別学習」だという。「最近、勉強のできる生徒も『すらら』がおもしろいと言います。わかるからスルーしていた論理のステップを丁寧に、そして飽きさせずに説明してくれることで、概念理解を深めることができる点がよいと言っています。個の学習ニーズに電子上で応えることができるのが『すらら』なんです」と黒畑校長。

かつては土曜日に教員が行っていた「補習・補講」も、平日の放課後、学校で「すらら」を使って自学する日と、外部のチューターを派遣してもらい学習の強化を行う日を設けるなど、教師の働き方改革も進めている。

こうして進化を続けてきた「すらら」の活用で、目に見える結果も現れてきた。

関東学院六浦中高GTZ推移

2018~2019の2年間で、中2、中3のベネッセ スタディサポート GTZ値のD、C層が底上げされてB、C層が主体となった。「教務部でデータを分析して教員研修会で発表しました。従来の方法ではなかなか上がらなかったものが『すらら』で上がったので衝撃を受けた先生もいましたが、やって良かったという先生が多かったです」と中村部長が語る。

「今の高1、高2も上がった。とにかく成果がすごかった」と黒畑校長。続けて、「4月5月のコロナ禍でのオンライン授業の振り返りアンケートで、全教科のオンライン授業とこれまでの平常授業の比較をしたんです。進捗度、深化度、積層度、生徒の理解度の4項目を5段階評価したら、進捗度と積層度はオンラインの方が上でした。素晴らしい成果です。オンラインでも学習を深めることが出来ることが証明されました」と黒畑校長。

教師も生徒も新しい学びに向かって壁を越えていく

「すらら」のようなICTツールの導入を進めていく上で一番の壁は、「教員たちの思い」だと中村部長は語る。自分を含め経験の長い教員たちには独自の教育論や教授法があって新しい物を受け入れるのは容易ではない。新しいツールは面倒でもある。しかし、効果が上がると分かればイメージが一気に変わるという。導入時の指導手順を細かく決めたことも、協力を得やすくした理由の一つだ。教員間のコミュニケーションにも変化が起こった。「すらら」の活用方法などを通して、ベテラン教員が若手に「どうやったらいいか」と聞ける関係があちこちに出てきた。「すらら」のエキスパート教員も生まれたという。

黒畑校長が生徒に望むのは、とにかく「自分で学ぶこと」だ。これからの社会で活躍するには、与えられた課題に取り組む「積極性」だけでなく、それを包含する「主体性」が求められる。生徒が一番育つのは、生徒自ら課題を発見し、自分の力で解決しようと取り組むとき。適したツールがあれば生徒は自力で前進できる。その態度を育てることが六浦の教育で、その六浦の考え方に「すらら」は少なからず貢献しているという。

自ら進んで学んでいく生徒をつくる。

「自分で考えて学ぶ起爆剤として『すらら』を使っています。同じ10分でも、聞いて学ぶよりも自分で考えて学ぶ方が深いんです。そういう学びを少しでも広げたいと考えています」と、黒畑校長は力を込めた。

関東学院六浦中学校・高等学校では、保護者を対象に、「子育て講演会 こどもにどう声をかけるか~こどもとの関わりで困っていること」というセミナーを9月に開催した。すららネット「子どもの発達支援室」臨床心理士 道地真喜氏が講師となって、認知行動療法の知見に基づき、子どもとのコミュニケーションに関する保護者の悩みに応えた。参加した保護者からは「とてもわかりやすく、なるほどと思うことが多かった」「思春期の子どもを持つ親御さんが同じような悩みを抱えていることがわかり非常に参考になった」「子どもができていることを褒め、アサーティブに接することが重要であることなど、学びになった」といった感想が寄せられた。「すらら」の学習のみにとどまらない、子どもと保護者に寄り添ったサポート体制にも注目が寄せられている。

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