2021年8月13日
「すららドリル」と創る新しい学びと働き方改革/水戸市立新荘小学校
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明治36年(1903年)設立以来、長い歴史を誇る水戸市立新荘小学校。本格的なICT活用を始めてからわずか2カ月ほどと間もない同校が、市内小中学校の教育関係者向けに「すららドリル」を活用した公開授業を実施した。公開授業の様子や教師の方々の話から、同校の実行力とチャレンジする姿が見えてきた。
「すららドリル」が引き出す圧倒的な集中力
この日、公開された授業は全学級。記者は3年生と6年生の授業を見学した。3年生は、円の半径と直径の求め方を確かめる算数の授業。児童はそれぞれ、Chromebookの画面に指先やスタイラスペンを走らせ、数字や円の曲線など書き込み課題を進めていく。
一方、6年生は全教科を対象に、テストの振り返りをして苦手な分野の力を伸ばすという授業。社会や算数など、自分で選んで学習を進めるスタイル。教科書を確認し、Chromebookのキーボードを使ってタイピングしながら課題を進める児童が多い。つまずいていそうな児童には教師が声をかけ、反対に、自ら教師に声をかける児童もいた。
どちらの学年も驚くほど静か。ICT活用を始めてまだわずかな期間とは思えないほど、手慣れた様子で、黙々と集中して取り組む児童の姿が印象的だった。
GIGAスクール構想で一気に前進させた教育改革
水戸市立新荘小学校が1人1台端末を導入したのは2021年4月。現在、200台ほどのChromebookが稼働している。同時期に「すららドリル」も導入。段階的ではなく一気に整備を進めた。端末設定などの準備もあり、本格的に運用し始めたのは5⽉下旬だったという。
「すららドリル」導入の目的の一つには、教師たちが計算ドリルや漢字ドリルなどの対応に費やす膨大な時間の解消があった。「教員の働き⽅改⾰が叫ばれる中、せっかくGIGAスクール構想が打ち出されているので、端末と併せてAIを活用したドリルを導⼊して⼀気に事務関連も軽減できないかと考えました」と仲野校長は説明する。デジタル教材の選定では、仲野校長自ら情報収集を行ったという。その中で昨秋に情報を得て興味を持ったのが「すららドリル」だった。働き方改革と児童の基礎学力の定着などを両立するための武器にとの強い思いがあった。
「すららドリル」は、AIを活用したアダプティブなドリルと自動作問・採点機能を有するテストによって、学びの個別最適化を実現するクラウド型の教材。児童一人ひとりが自分の学力に応じた演習問題に取り組むことができる。
解ける楽しさを体感し始めた子どもたち
同校では、朝の活動、授業、家庭学習などに「すららドリル」を活用している。
研究主任の長谷川広明教諭は、「登校後、子どもたちはラックから⾃分の端末を取り出して『すららドリル』にログインします。課題が出ていたらそれを進めてもいいですし、出ていなくても自ら学習を進めることができます。『すららドリル』では、授業で習ったことを確認する使い方が本校では定着していきそうです」と説明する。冊子のドリルでは、意欲的に取り組めなかったり、やりきれなかったりした児童が、課題に取り組めるようになっているという。
教務主任の磯﨑康明教諭は、「はじめの頃、少し難しく考え過ぎていたところがあったかもしれませんが、やってみると周りの先生方もあまり難しくはないねとなりました。低学年の児童はRPG形式にワクワクしながら声が上がることもありました。5、6年生は、こんなこともできるのかと新しいものとの出会いを新鮮に感じている様子でした」と、教師や児童の反応を語る。
斎須久依教頭は、スキマ時間を学習に使えるようになったり、片付けも頑張ったり、子どもたちに意欲やメリハリが出てきていると語る。「『すららドリル』は解くたびに励ましの言葉を伝えてくれるので、1年生などは『先生見て!』と言ってくる児童もいます。でも喜んでいる暇はなく、すぐに次の設問が出て一息に時間の終わりまで行ける。そうした設計が上手いと感じます」。教師たちも「すららドリル」の活用で、自分の専門分野でなくても自信を持って子どもたちを導けるようになってきたという。
進むことも戻ることも自在、制限なく学べる個別最適化の強み
学びを制限せず、高い欲求のニーズにも応えてくれるのが「すららドリル」の良さだと磯﨑教諭は強調する。「英検や漢検などにチャレンジしたいと思ったり、小学生でも中学生の勉強を済ませてしまったりする児童も出てくるでしょう。先の予習や学習も見越して提供できるのが良いなと感じます」。
一方で、同校は特別支援教育の指導体制も充実している。「知的な障がいがある児童には、たとえば下の学年に戻った学びも提供できます。教科書を開くのと違いタブレットでは抵抗なくできる。視覚的に理解しやすい画面構成が取り組みやすいのだろうと思います」(仲野校長)。自分の力を発揮でき、保護者もそれを客観的に見て取れる。個別最適化された学びがベストマッチしているようだ。
授業スタイルの変容、チャレンジしながらさらなる前進へ
これからの教師は学びのサポートをする役割も担い、指導スタイルが変わっていくだろうと語る仲野校長。「個別最適化された学びで、児童一人ひとりの特性に応じて伸ばせるところは伸ばしてあげたい。教員とデジタルの支援も相まって、子どもたちはこれまでにない成長を見せてくれると思います。本校ははまだ駆け出しですが、流れが整えば、基礎学力は定着し、さらに発展的な知識が身についてくると思います」。
磯﨑教諭は、子どもたちがICTを使いこなすことは先々の付加価値になると捉えている。「ICT活用能力で職業選択など将来の局面が変わってくると思う。最終的に人生の大きな一つの武器として、力をつけさせてあげたいと考えています」。そして、教員にとってICT活用は業務改善につながり、働き方の形態が変わる魅力と可能性を感じているという。
斎須教頭は、子どもたちには未来を切り開いて欲しいと望む。「基礎学力をしっかり身につけてもらいたいのはもちろん、持っている力や個性を引き出すといった意味でもICTの導入が一助になっていれくれればいいですね。起業家精神の育成も視野に入れたいです。本校のICT活用は私自身も含めて、働き方改革をしながら教師もチャレンジして進んでいるところです。みんなが今一緒にスタートしていて、それがすごくいいなと。先生同士の雰囲気もいいし、子どもたちも活気があります」。
低学年の表情は特にわかりやすく、ガッツポーズをしながら次に進んでいく姿も見られ「身体中でワクワクしながら喜んでやっている」と笑みがこぼれる仲野校長。喜びを与え続ける教師がいて、喜びにあふれる⼦どもたちが閃いた瞬間の表情が⼤好きだという。市内小中学校の先陣を切って新しい学びに着手した同校。本格始動から間もないながら大きな前進を遂げている。途上の過程を大切に、同校の教育改革はさらなる発展に向かっている。
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